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馬田草織の塾前じゃないごはん
塾前じゃないごはん=お夕飯のこと。ポルトガル料理研究家で文筆家の母・馬田草織さんとJKこと女子高校生の娘さん。女2人で囲む気ままな食卓の風景をお届けします。さて今晩の「塾前じゃないごはん」は?

気をつけろ、寄せ鍋とカオス鍋は紙一重。発酵3姉妹がそろううまみだらけの『納豆みそキムチ鍋』レシピ

2024.01.23

「納豆みそキムチ鍋」のレシピ

[第21回]気をつけろ、寄せ鍋とカオス鍋は紙一重。

[第20回]けんかしないで正月を過ごしたい。切実だけどささやかな願い

寒いときは鍋。いや、寒くなくても鍋。だって好きだから、だってらくだから、だって体が温まるから、だって自由だから。なんなら年じゅう鍋でもいいぐらい鍋が好き。大きな鍋で家族鍋や、何人かが集まって仲間鍋もいいし、小鍋でひっそりひとり鍋もいい。それぞれにいい。鍋にはにぎわいにも孤独にも寄り添ってくれる柔軟さがある。

ひとり鍋なら、あっさりした湯豆腐やおかゆもいいいし、鍋焼きうどんもいい。キムチがあれば韓国風チゲもいいし、ドミグラスソース缶を使って速攻ビーフシチューも楽しい。鍋があると、それだけで食事がエンタメ化する。鍋のふたを開ける瞬間、ふわっと広がるおいしい湯気は、ひとりのときにこそ欲しい確かな喜びだ。ちなみにわたしが愛用しているひとり土鍋は、萬古焼の銀峯の墨貫入。ふたにひびのように広がった貫入の模様がかっこいい。昭和のころからうどん屋などいろんな料理店でよく見る鍋だ。大量生産の陶器だけど、いつ見てもクールだと思う(ちなみにいつもひとり鍋は6号を使うが、おかゆと湯豆腐のときは5.5号という極小サイズがフィットする)。

毎日鍋、といきたいところだが……

JC 娘が許してくれるなら毎日鍋にしたいところだが、それはできない。なぜなら数年前、12 月の終わりあたりから週2回ペースで鍋を出していたら、1ヵ月ほどたったある日突然「お母さん、もう鍋はいや」と言われてしまったのだ。

たしかに、調子に乗って鍋を作りすぎた。それは反省する。でも、一年でいちばん寒い1 月末から2 月に鍋が食べられないなんて。つらすぎる。結局3週間ほど鍋を我慢して久しぶりにおそるおそる出したら、やっぱり鍋いいねと喜んでくれた。つくづく、頻度が大事だと学んだ。

名もなき鍋こそ、作る人の食へのこだわりが出る

家鍋は深い。から揚げやカレーと同じぐらい、地域色や家庭ならではのレシピがある。月刊誌の編集者だったときもフリーになってからも、これまで何度も鍋レシピのページを取材してきたが、そもそも鍋には正解なんてない。それを好きな人がいるかぎり、そのレシピが正解。そして、作る人の嗜好がもろに表れるのも鍋だ。いつも同じがいい人、常に変えたい人、カレー味やトマト味など新作に挑戦したい人、定番を好む人、薬味重視派など。ちょっと大げさに言えば、その人の食へのこだわりのが、ふたを開けたときの景色によく表れる。日常のファッションみたいなもので、とくにこだわっていないことそれ自体も鍋の個性。だから家鍋の取材はおもしろい。

ちなみにうちのスタメン鍋と言えば

この数年、わが家でとくによく作っているのは、すでにこの連載でもご紹介した常夜鍋をツイストした「ほうれん草のとろみ鍋」や「飾りじゃないのよ、レモン鍋」、自家製辛みそをつけて食べる「豚しゃぶ」、同じ辛みそを溶かし込んで煮る「みそ煮込みうどん」、納豆とみそ、キムチという発酵3姉妹を使ったうま味だらけの「納豆みそキムチ鍋」、妹尾河童さんが紹介して以来、すっかり定番化した感のある「ピェンロー」など。取り寄せの冷凍餃子とレタス、豆腐を昆布だしと日本酒で煮る、ぜいたく水餃子みたいな餃子鍋も、わが家で人気。

そういえばわが家の鍋に共通するのは〈ポン酢を使わずに食べる〉ということ。わが家の鍋はどれも具材を煮込んだ汁にもしっかり味がついているので、汁をごくごくとスープのように飲みながら具材を食べる。だからポン酢の出番がないのだ。ポン酢はむしろ、料理の調味料に使うことが多い。

ポン酢で思い出す話がある。もう何年も前のこと、女性誌の料理企画で鍋ページをいっしょに担当していた編集者が、打ち合わせ中にポツリと言った。

「鍋、苦手で。だって実家の鍋は具が肉でも魚でも野菜でも全部同じポン酢で食べてたから」。しかも「器のポン酢が薄まっていくとますます味がぼやけて、余計に食べる気がしなくなった」という。ああ、それわかる。

振りかえってみればわたしの実家も、寄せ鍋はポン酢一択だった。というか、寄せ鍋にポン酢は昭和から令和のいまに続く、日本の家庭鍋のデフォルトなのだ(わたし調べ)。でも、ポン酢以外の鍋もたくさんあるということを知ると、冬の鍋はずいぶんと楽しくなる。

ついでにわたしの鍋モットーは〈鍋の具はなるべくシンプルに〉。肉や魚類などの主役たんぱく質以外に、野菜はせいぜい3種類まで。具がシンプルだと鍋に個性が出る。冷蔵庫の在庫一斉処分化したカオス鍋を、なんとなくいつものポン酢で食べていると、さっきの編集者のような鍋嫌い人間が爆誕する、気がする。鍋のカオス化に注意(自戒を込めて)。

今回の塾前じゃないごはん

「納豆みそキムチ鍋」

この鍋のアイディアベースは山形の納豆汁。親友のお母さんの味に感動して作り方を教わり、何度も作るうちに辛みが欲しくなって豆板醤やキムチを加え、肉やにらなどの具も増やし、いつの間にか鍋に育ちました。しめにはご飯より麺推奨。わたしは太めのうどんが好み。納豆はぜひひき割りを。汁になじんで食べやすいのです。そしてみそは、白以外の甘くないみそなら何でもいい。納豆とみそとキムチでうまみたっぷり、腸内の善玉菌も増えて免疫力アップ。風邪ひきそうな予感がする夜など、とくに回復が早い気がします(わたし調べ)。

豚バラ薄切り肉100g は一口大に、にら1束は幅5 ㎝、ねぎ1本は小口切りにする。鍋にごま油を入れて温め、つぶしにんにく1かけと豚肉を弱めの中火で炒める。肉の色が変わったら豆板醤小さじ1と白菜キムチ100g を加え、香ばしい香りが立つまでじっくり炒める。ねぎを加えてさらに炒め、しんなりしたらひたひたの水(いりこだしだと最高)と酒1/2カップを加え、ふたをして強火でひと煮立ちさせアクを取る。

煮立ったらうどんを加えてふたをし、うどんに味をしみ込ませながら煮る。うどんがいい感じに煮えたらみそを溶き入れる。みそは塩分が個々に違うので味をみて加える量を加減する。続けてにらと納豆2パックを加え、ふたをして弱めの中火で数分やさしく煮る。豆腐もよく合うし、にらの代わりに春菊もいい。みその香りがとんでしまうので、ぼこぼこ沸騰させないように。にらがしんなりしたら食べごろ。たっぷりのうどんに納豆や肉やにらなど、具をすべてからめながら食べるイメージ。ビールもワインもいける、けしからん真冬の鍋が完成です。

馬田草織
馬田草織
文筆家・編集者・ポルトガル料理研究家。思春期真っ盛りの女子中学生と2人暮らし。最新刊「ムイトボン! ポルトガルを食べる旅」(産業編集センター)。料理とワインを気軽に楽しむ会「ポルトガル食堂」を主宰。開催日などはインスタグラムからどうぞ。
インスタグラム @badasaori

『馬田草織の塾前じゃないごはん』 毎月第2・第4火曜更新・過去の連載はこちら>>>

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