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馬田草織の塾前じゃないごはん
塾前じゃないごはん=お夕飯のこと。ポルトガル料理研究家で文筆家の母・馬田草織さんとJKこと女子高校生の娘さん。女2人で囲む気ままな食卓の風景をお届けします。さて今晩の「塾前じゃないごはん」は?

トゥバとセブチの違い。家族間〈ジェネギャ〉について考える『飾りじゃないのよレモン鍋』のレシピ

2023.12.26

「飾りじゃないのよレモン鍋」

[第19回]家族間〈ジェネギャ〉について考える。

[第18回]「勉強はなぜするの?」 という問い。

朝、ラジオからクイーンの『Don’t Stop Me Now』が流れていた。いっしょに口ずさみながら懐かしく聴いていると、ダイニングでトーストをもぐもぐしていたJC娘がふと「クイーンとビートルズの違いって、よくわかんない」とつぶやいた。

な、なんですと。ちょっと待て、なぜわからない。だってビジュアルも、ファッションも、曲のテイストも、何もかもが全然違うじゃん。共通点は世界的に有名なこととイギリスのバンドってことぐらいか。あと4人組とか。てか、いやもう全然違うじゃん。ナポリタンとミートソースぐらい違うよ。いやこのたとえも違う。あまりに驚いてやや大きめにリアクションし、できるだけ短めのつもりが結果的にかなり暑苦しめの説明をすると、強めのトークといらない情報を一方的に繰り出してくる母の話をJC娘の脳の扁桃体が〈攻撃〉ととらえ、即座に反撃に出てきた。

「じゃお母さんさ、トゥバとセブチの違いわかる?」。

トゥバとセブチ。軽やかにして意味不明。新しいスニーカーの名前か。否。そうだ、トゥバとはこれTXT(TOMORROW X TOGETHERトゥモロー.バイ.トゥギャザー)、セブチとはこれSEVENTEEN、いずれもK-POPのグループのことですな。グループ名だけなら、ふだんから娘のほぼひとり言的音楽トークを聞いているのでわかった。しかし、あくまでグループ名ってことしかわからない。曲とか、メンバーの顔とか、そのあたりはもう何が何だかさっぱりお手上げですよ。わたしが唯一メンバーそれぞれまでわかるのはBTSのみ。だからきっと、わたしが娘からトゥバとセブチについて熱く詳しく説明を受けたところで、その知識は何も頭に入らない。だってね、試しに検索してみてほしい。トゥバは5人、セブチは13人もいるんですよ、あなた。イケメンも、たくさん並ぶとまぶしすぎて個々がわからぬ。

そして気がついたのだ。あ、なるほど、そういうことなのね。娘にとってのクイーンとビートルズは、私にとってのトゥバとセブチなわけだ。わからないのわからなさがよくわかり、ジェネレーションギャップ(以下ジェネギャ)というもののなんたるかを実感できた。

考えてみたら、社会はジェネギャでできている。その昔社会科で習った人口ピラミッド、あれがまさにジェネギャのマップでもあるわけで。0歳から100歳超が暮らすこの社会。さらに家は社会の最小単位とはよく言ったもので、わが家を見ても私と娘は38歳の差がある。趣味も興味も違って当然、同じで問題ないのはハンドソープぐらいか。だからお互いにジェネギャ上等の前提で、あくまでやさしく接していけたらいい。間違ってもさっきの私みたいに知識や好きの押し売りをするのではなく、いったん「そっか、違いわからないかー」と受け止めて、それでもなお興味がありそうなら、「ちなみにクイーンとかビートルズの曲って、カバーしてる人いっぱいいるよ」ぐらいでとりあえず我慢しよう。きかれてもいないのに勝手に語りだすのは、年寄りの悪い癖だ(自戒をこめて)。

でも一方で、自分が知らない世界のことを知るのはこれまたおもしろい。それが最新トピックでも昔話でも、自分の中に新しい風が吹き抜けるような感覚を得ることがある。だからジェネギャを克服する必要はないけれど、違いがあることを重々承知のうえで大人のほうが少し興味を寄せるだけで、お互いに世界が広がったり、居心地がよくなったりするのでは、とも思う。仮に目の前のテーマにまったく興味がなかったとしても、そんなのどうでもいいとばっさり切り捨てたり、知らないのに知ったような意見を言うのはこれまたジェネギャが深まり寂しいばかり。お互いの尊いものは、尊いままにしておこうではないか(再度自戒をこめて)。

JC娘がC学校に出かけたあと、これもなにかの縁かなと、スマホでトゥバとセブチとやらを検索してみた。素敵なイケメンたちがいろんなポーズで次々と現れる。総勢5人+13人。朝からまぶしいがすぎるので、静かにスマホを閉じたのだった。私はBTSで充分満足です。そういえば、BTSの存在を教わったのも娘から。これからもいろんなことを教えておくれ。そして万が一クイーンとビートルズに興味を持ったなら、いつでも語ってしんぜよう。アスクミーエニタイム!

今回の塾前じゃないごはん

「飾りじゃないのよレモン鍋」

鍋の主役はレモン。でも、具として食べるわけじゃなく、汁に果汁を溶け込ませます。寄せ鍋などで取り分けた具にレモンやかぼすなどかんきつ類を絞ることがありますが、今回はそれを最初から入れちゃうのです。だからこれ、飾りじゃないのよ。飾りじゃないのよレモンは! 果汁の酸味や皮から出る香りがスープに溶け込むと、ポン酢なしでごくごく飲めるいい汁ものになります。

注意点が2つ。1つ目。レモンを入れっぱなしにすると皮の苦みが出ちゃうので、加熱したらせいぜい数分で取り出します。2つ目。鶏だんごだねには、黒こしょうをきかせて辛めに仕上げるとバランスよし。今回は刻んだ青じそもたっぷり練り込んで、さわやかだけど辛みのあるだんごにしました。
ボールに鶏ももひき肉200g、酒大さじ1、しょうがのすりおろし1かけ分、しょうゆ小さじ1、塩適宜、粗びき黒こしょう多め、ねぎのみじん切り1本分、青じその葉のせん切り6枚分を加え、よく混ぜてだんごにする。キャベツと豆腐は食べやすく切る。レモン(国産のもの)1個は薄い輪切りにする。鍋に水と昆布、酒、鶏ガラスープの素(顆粒)を入れて沸くまで強火にかけ、沸いたらだんごを入れて中火で煮る。アクを取り、鶏だんごに火が通ったら、キャベツと豆腐、レモンを加えてひと煮立ちさせる。仕上げに黒こしょうをひいてもいいし、ゆずこしょうをスープに溶かしても。汁ごと具をいただけば、ビールもワインもいけるけしからん冬のお鍋の完成です。

馬田草織
馬田草織
文筆家・編集者・ポルトガル料理研究家。思春期真っ盛りの女子中学生と2人暮らし。最新刊「ムイトボン! ポルトガルを食べる旅」(産業編集センター)。料理とワインを気軽に楽しむ会「ポルトガル食堂」を主宰。開催日などはインスタグラムからどうぞ。
インスタグラム @badasaori

『馬田草織の塾前じゃないごはん』 毎月第2・第4火曜更新・過去の連載はこちら>>>
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