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オレンジページ☆デイリー

2019.7.5

【編集マツコの 週末には、映画を。Vol.14】「Girl/ガール」

こんにちは。ふだんは雑誌『オレンジページ』で料理ページを担当している編集マツコです。
これだけ映画を見ていると、毎回1,800円を払っていたら破産してしまうわけで……。映画館の会員になって割引を受けたり、ファーストデーを狙ったりとあれこれ算段しているのですが、いつも妬ましく思っているのが「レディースデー」。毎週割引の日があるなんて~キィ~! なぜか男性もレディースランチを食べられる飲食店がたまにありますが、「男性もレディースデー割引使えますよー」という映画館はありません。
「ジェンダーレス」が叫ばれる昨今、こういった制度にも変化が起こるのでしょうか?

今回紹介する『Girl/ガール』は、バレリーナを目指すトランスジェンダーの「少女」の物語。
「自分らしく生きる」を貫く強さ、そしてバレエという厳しい世界でトップを目指すという信念、その両方に心打たれる素敵な作品でした。


トランスジェンダーという言葉はずいぶん世の中に広まったと感じています。
今さらですが、「生物学的な性別が自分の認識と合致しない」人のこと。
主人公のララも、男性の体に生まれたけれど自分は女性だと確信している少女です。
ここ数年、性的マイノリティを扱った映画がずいぶん増えたと思いませんか?
日本だと、今年のテレビドラマが申し合わせたようにこういったテーマをピックアップ。

今まで世にあまり知られていなかった人たちを取り上げる試みには賛同しつつ、
いつまでも「世の中にはこういう人たちがいる」というメッセージ止まりの作品も多いなと感じます。
その点で、一歩進んでいるのがこの作品。


【マイノリティが普通に存在するということ】

ララ(ビクトール・ポルスター)はバレリーナを目指す15歳の少女。国内有数のバレエ学校への編入試験を受けるべく、父親のマティアス(アリエ・ワルトアルテ)と弟のミロ(オリバー・ボダル)とともに新しい土地へと引っ越してきます。通常この手の作品は、トランスジェンダーの子どもと、その事実を受け入れられない親の葛藤、という視点で描かれることが多いと思うんです。
でもこの映画では、父親は既に子どものジェンダーに対する志向を受け入れている。幼い6歳(かな?)の弟も、姉が男ではなく女という性を選んだことを認識しているようです。
そのうえで、バレエという厳しい世界に立ち向かう困難を描いている、そこが一歩進んでいると思うのです。
マイノリティをマイノリティとして紹介することだけで終わっていないというか……。

そういえば、彼女が編入する学校のクラスメイトの反応にもけっこう驚きました。
ララがかるく自己紹介するのですが、その後先生が彼女に少し目をつむっているように指示します。
彼女が女子更衣室を使うことに対し、他の生徒に抵抗がないかどうかを挙手で確かめる、と。
このやり取りの最中、少しニヤニヤしているような子もいるにはいるのですが、総じてララという存在を受け入れている印象です。
この映画の舞台はベルギー。実話ベースなので、このシーン自体も現実と大きく食い違っていることはないのでしょう。
ヨーロッパではこれが普通なのか分かりませんが、日本とはずいぶん違うなと感じます。


とはいえ、もちろんトランスジェンダーであるがゆえの困難が。
ララは男性としての二次性徴を抑える薬を飲んでいて、より女性らしい体になるためのホルモン療法を待ちわびながら、日々バレエのレッスンに励みます。
他の生徒に比べてレッスン歴の浅い彼女は、とにかく練習あるのみ。つま先で立つ動きの訓練で、足はボロボロです。肉体的には男性の股間を抑えるためのテーピングが、ますます体に負担をかける。
念願だったホルモン療法もなかなか効果を実感できず、だんだんと焦りを感じてゆくのです。

ララはあまりしゃべりません。必要なことだけを手短に相手に伝えます。
この寡黙さと15歳にしては大人びた表情に、同じ年頃の少女たちが知るよしもない、彼女が今までの人生で経験してきたものの重みを感じるのです。
ララを演じるビクトール・ポルスターはシスジェンダーの少年。シスジェンダーというのは、トランスジェンダーに対し「身体的性別と性同一性が一致しいてる人」のことだそう。
このビクトール君、踊りはもちろん圧巻なのですが、葛藤を抱える少女の表情を見事に演じきっていて、恐ろしいほどの演技力!


学校の生徒たちはララのことを理解していると書きましたが、やっぱり意地悪な人ってどんな組織にも存在するんですよね。猛練習を重ねて上達するララへの嫉妬?なのか、嫌がらせをする子がいて……。
写真の真ん中の子なんですが、見てこの意地悪顔!(笑) キャスティングが素晴らしすぎます。

心が痛む場面はいくつもあるのですが、マツコはこの映画に出てくる大人たちの存在に救われた気分になりました。
まずお父さん。ホルモン療法の効果が現れないことに不安を覚える娘に「急ぐ必要はない。お父さんも時間をかけて男になった」と優しく諭すなど、ララにとってはもちろん一番の理解者です。
それでいて、「お前は辛くても大丈夫としか言わない。辛いと言ってくれれば話し合えるのに」と激高する場面も。
苦しみを一緒に味わい、そして乗り越えたいと心から思っているんだろうなあ……。親だからといって、誰もがそうなれるわけではないと思うんです。

それとカウンセラー?の先生。あくまで心身ともに女性になってからが人生の始まりと考えるララに対し、ホルモン療法を受けながら性別適合手術を待つ、この期間も楽しんでほしいと彼は告げます。
しかも「バスが来るまで寒い待合所で待つのはもったいない」なんて例えとともに! 素敵すぎ!(笑) カウンセラーという職業を超えた、パーソナルな部分での思いやりを感じるのです。
大人たちの発言はともすれば綺麗事に聞こえるかもしれませんが、綺麗事を言ってくれる大人がいなくなったら終わりじゃないですか?


もちろん「トランスジェンダーの少女」という要素がこの映画には不可欠なのですが、足の指をボロボロにしながら練習するララを見ていると、夢に向かって努力する人の姿にただただ素直に胸を打たれたい、そんな気持ちになります。

大人だけでなく、お子さんがいる方はぜひ親子で見てほしいな~。
辛い場面も多いですが、ハッピーエンドなのでご安心を!

「Girl/ガール」7月5日より、新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamura ル・シネマほか全国ロードショー
ⓒMenuet 2018
配給:クロックスワークス、STAR CHANNEL MOVIES

【編集マツコの 週末には、映画を。】
年間150本以上を観賞する映画好きの料理編集者が、おすすめの映画を毎週1本紹介します。
文/編集部・小松正和

次回7/12(金)は「サマーフィーリング」です。お楽しみに!

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