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【編集マツコの 週末には、映画を。Vol.52】「ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方」

2020.03.19


こんにちは。ふだんは雑誌『オレンジページ』で料理ページを担当している編集マツコです。
日々、料理研究家と呼ばれる人たちと仕事をしています。雑誌やテレビなどで活躍する方たちのほとんどは首都圏が拠点。というのも、出版社やテレビ局が東京に一極集中しているからなのです。
そんな中、知り合いの一人が数年前に地方に移り住んで、現地で料理研究家としての活動を続けています。その土地の自然の美しさ、食材の豊かさに惹かれたのだそう。
『ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方』も、都会から郊外に移住した1組の夫婦の物語。夫は映画やテレビ番組の監督・カメラマンとして活躍、妻は料理研究家としてキャリアを重ねていました。

移住の理由は、2人の長年の夢であった「自然と共生する農場」を作ること。特に妻のモリー・チェスターさんは伝統的な調理法で作る健康料理を得意としていて、自らの手で野菜や果物を育てかったと言います。
昨今の大規模な山火事など、地球規模の気候変動の影響を強く受けているアメリカ・カリフォルニアを舞台に、夫婦の夢が少しずつ実現するまでを追ったさわやかなドキュメンタリー。
見た後にとってもすがすがしい気持ちになること、お約束します。
 


僕はかなり都会に住んでいます。ペットはおろか植物1つ育てておらず(すぐ枯らす)、虫は触れず、自然の中に身をおく機会といえば、たまに公園に行くときくらい。
こんな自分でも、野菜や果物を育てたり、動物と触れ合ったりしてみたいなーなんて一瞬思うのです、こういう映画を見ると。
ところで、そもそも「自然と共生する農場」ってなんでしょう? なんとなくエコでなんとなく地球に優しい印象ですが……農薬を使わないということ?

ジョン・チェスターとモリー・チェスター夫妻が目指していたのは、生態系を再現させる農業。それは、色々な農作物や家畜を育てることで、そこに虫や野生の動物までもが集まってきて、生物の多様性が最大限に高まる状態を指します。聞いただけでも大変そうですが、この壮大なプロジェクトに至ったのは意外なきっかけからでした。

ロサンゼルスのアパート時代に、殺処分寸前だった愛犬・トッドを引き取った2人。「必ず一生飼い続ける」と彼(彼女?)に約束したものの、トッドの鳴き声で隣人から苦情が入り、ついにはアパートから追い出されてしまうことに……。それならば!と一念発起し、ロス郊外の土地を購入し、夢の実現へと踏み出すのです。


とはいえ、農業に関して素人の2人が自分たちだけで理想の農場を作るのは不可能。しかも、80万平方メートル(東京ドーム約17個分)に広がる土地は、かなりの荒れ地で土はカラッカラ。
2人は伝統農法のスペシャリストに教えを仰ぎます。
そこに農場で働きたい若者がネットの募集で集まり、豚、鶏、牛といろいろな動物を集め、いきなり順調な滑り出し?と思いましたが、やはりそう簡単にはいきません。

アブラムシやカタツムリが植物の葉を食べて枯らしてしまったり、野生のコヨーテがやって来てカモや鶏を殺してしまったり、加えて干ばつなどの自然災害も。
殺虫剤や農薬を使うという選択肢は2人にはありません。ではどうしたかというと、例えばアブラムシの天敵・テントウムシが暮らしやすい環境を作ったり、カタツムリを好物とするカモに食べさせたり、科学に頼るのではなく、自然な形で問題を解決していくのです。いわゆる雑草と呼ばれる植物でさえ、養分を生み出して土壌の再生に一役買っているなど、見ていて「そうなんだ」と驚く発見がたくさん。

印象的だったのが、「問題が発生したときはよく観察する」というジョンの言葉。人間の想像を超えた自然に立ち向かうためにはもちろん、これって日常で起こるいろいろな問題でも同じじゃないかなあと思います。冷静に分析すれば、必ず答えは見つかるはず……。
 


伝統農法、動物との共生、エコな暮らし……。こういうキーワードだけ聞くと少し敬遠してしまう方もいるのでは? 分かっちゃいるけど、今の自分の生活とかけ離れ過ぎていて、見ると少し罪悪感、みたいな。確かに地球環境への配慮がこの映画の大きなテーマの1つではあるのですが、この夫婦のような活動をいきなり始めるのは難しい。でも「自分も何かしなくちゃ!」と思ったら、それだけでこの映画を見た意味があるのだと思います。

そして、ジョンとモリーも「地球を救わねば!」と高い志だけでこの農場を作ったのではないはず。度重なる失敗や困難にめげずに立ち向かわせたのは、「あなたを一生飼う」というトッドとの約束があったのですから。
生まれてくる自分の子どもに良い環境を残したいとか、最後はそういうパーソナルな気持ちが人を突き動かすんだなあと思いました。


ジョンは野生生物番組の制作者として活躍していたこともあって、とにかく動植物の撮り方が美しくて……(カタツムリ増殖のところは少し怖かった)。
普段、犬とか猫とかにまったくときめかない僕ですが、豚ってこんなにかわいいのかとキュンキュンしてしまいました。
難しいことは抜きに、見ると元気になれる1本ですよ。
職業病なのか、モリーが冒頭で作っていたズッキーニのスープ煮のような料理が気になる……。


「ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方」  シネスイッチ銀座、新宿ピカデリー、YEBISU GARDEN CINEMA 他、全国公開中
©2018 FarmLore Films, LLC


【編集マツコの 週末には、映画を。】
年間150本以上を観賞する映画好きの料理編集者が、おすすめの映画を毎週1本紹介します。
文/編集部・小松正和 

次回3/27(金)は「最高の花婿 アンコール」です。お楽しみに!

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