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「調理室池田」の夏休み2024。オリンピックイヤーのフランス・パリでの買い付け【よもやま話拡大版】

2024.09.20

なんと「撮影よもやま話」拡大版第2弾の機会をいただきまして、調子に乗って先日出かけた旅の話をいくつかしてみたいと思います。まだ、記憶が新鮮なうちに。
行き先はパリ、目的は買い付けだ。(買い付けには)いつも一人で行くのだけれど今回は2人、宏実もいっしょなので楽しみも多かった。旅程の3割くらいは余暇にあてた。パリでは多くが電子決済になっているけれど、のみの市は現金が主流なので行きの空港で両替をすませる。高額紙幣はのみの市の業者からいやがられることが多く、両替時はなるべく小さな紙幣をリクエストする。おかげで両替商はいつもけげんな表情だ。財布は札束でふくれ上がり一瞬大金持ちになったように錯覚するが、それもつかの間、この先はこのお金を減らさなければならないというプレッシャーがついてまわる、やれやれ。
いつもの宿に泊まる。部屋にはテレビはなく、壁には絵の一つも飾られていない。
硬めのベッドとデスク、お湯が出るバスタブがあるのでそれで充分だ。その宿は左岸で狭くにぎやかな通りにあるので外は夜中まで騒がしい。夏は窓を開けたままで過ごさないと暑くてしかたがないが(もちろんエアコンなんてない)、そのぶん街の喧騒が部屋の中と外の境界をあいまいにし、私にはそれがとても居心地がいい。そう、ここには代えがたい自由が存在するのだ。
ジャン=ポール・サルトルやシモーネ・ド・ボーヴォワールが手にしたように!
滞在初日には美術館やギャラリーに足を運ぶことが多い。力強くも美しいものを見て目を洗い、自分が心からひかれるものを確かめる作業だ。見てまわるものは中世のものもあれば現代のものもある。だいたい足を止める作品は決まっている。これは買い付けのウォーミングアップなのだ。併設されたカフェで休むことも忘れない。こういった場所ならではの肩の力の抜けた「へぇ」と感心するメニューを頼んでみる。
市のゴミ収集車の作業を横目で見ながらのみの市には朝早くに出向く。まだほとんどの骨董商は準備中だけれど、売るほうも買うほうもプロだから遠慮なしに手にとっていく。スピードが大切だ。ライバルとなるアンティーク商も多い。のみの市では出来るだけ欲しいもののイメージを持たないようにして見てまわる。これはとても大事なことで、何か目当てを探そうとするとそれ以外のものが目に入らなくなるからだ。ガラクタも含めてくまなく見て(とにかく見る)、その中から心を動かされるものを買う。とても骨が折れるが私はこれが楽しい。一人なら夢中になれるが今回は宏実の表情が少し気になる。

経験が足らず自分の中で相場感があいまいなモノに出会ってしまったときはやっかいだ。そのようなものは、たいていほんの一瞬迷っているすきに他の人(これがまた目の肥えたアンティーク商)に買われてしまう。手が出せなかった気の小さな自分にやるせない気持ちになりながらも、触手が伸びたこと自体を自分でほめることにして、見る目がひとつ増えたことを励みに先に進んで行く。そうでもしないとやっていけない特異な世界がここにはある。
のみの市には市民もたくさん訪れる。部屋に飾るのであろう、古い絵や置物などを熱心に品定めをしている老夫婦などを見ると気持ちが休まる。もう少ししたら私もああなろう(明日でもいいかな)。

撮影・文/池田講平 編集/小林

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