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調理室池田 店のテーブル 家のテーブル

「調理室池田」の『いちごジャム』のレシピと失敗知らずの脱気方法

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店で人気のヴィクトリアスポンジケーキやスコーンサンド。じつはこれらはジャムを食べてほしくて作った菓子です。かねてからジャム作りが好きでジャム屋になろうと思ったほどですが、実際たくさん作るのは大変なこと。そして作るうちに気づいたのは一度にたくさん作るより、少量を短時間で作るほうが断然おいしいということです。 

今回のレシピのヒント

ジャムは短時間で作り上げる

ことこと煮るのではなく、果実の香りをできるだけ逃がさぬよう強火で一気に煮つめ、短時間でおいしさを凝縮させることです。このポイントは、他の果実でも応用できるのでぜひ作ってみてくださいね。

いちごの種類・鍋の大きさ・火加減

11月下旬から5月上旬まで、ジャム作りに適している果実のなかで最も長く出回るのがいちごです。前回のヴィクトリアスポンジケーキでも使ったあまおうのジャムの作り方を紹介します。

私がいちごジャムを作るときは必ずあまおうを使います。
なぜならあまおうはいちごのなかでも加熱したときに最も鮮やかで美しく、酸味や甘みのバランスもいいからです。
粒感を残したいので小さいものはそのままで、大きいものは半分に切って使います。

短時間でジャムを仕上げるにはご家庭の火力に合った量を作るということが大事。まず鍋は大きすぎず火がもれなく当たる大きさのものを選び、手早く煮つめてフレッシュな風味を残すためにも鍋にいちごを入れすぎないことです。

鍋の中にぎっしりいちごが入っているとなかなか温度が上がらず、じんわりとした火の通りになってしまいますので欲張りは禁物です。店で作るときも口径約30cmの銅鍋で果実は1kg程度です。
鍋は銅鍋のように厚手のものを選びます。強火で炊くと相当沸き上がりますので、ある程度深さがある方がいいでしょう。ジャム用の鍋はよくできていて、鍋の側面が外側に広がった形状をしています。垂直に立ち上がったものより、蒸気が逃げやすく早く煮つまるようになっています。

砂糖をまぶしてから水分が出るまで置いておく方法なども見かけますが、私は分量の砂糖の一部をまぶしたらすぐに火にかけます。作業性もいいですし、素材の風味がより感じやすいように思います。
水分が出てくるまでは焦げつきやすいので注意。弱火から中火で混ぜながら加熱します。

数回に分けて砂糖を加え、溶けて水分が出てきたらここからは強火。
フレッシュな果実感、香り、鮮やかな色を残すため、鍋底から出ない程度の強火にして短時間で凝縮させます。 焦げないようにときどき混ぜますが、温度が下がりやすくなるので混ぜるのは最低限に。

かさが減り、ふんわりとした泡がボコボコと大きくなって少し粘度が出てきたら火を消す合図。
ここではゴムべらですくうとジャムがゆっくりと落ち、とろりとへらにまとわりつくくらいでOKです。10分ほどやすませ、味をなじませます。またやすませることで煮つまりぐあいも確認しやすくなります。

アクをていねいにひき、レモン汁を加えて再び加熱します。レモン汁の量は好みですが、多すぎないのがおすすめ。せっかくのいちごの風味がレモン味になってしまいます。


脱気するときはジャムもびんもどちらも温かい状態であることがマスト。
びんはジャムを作っている間に煮沸して。びんが熱いうちに熱いジャムをびんの口から 5 ㎜くらい下までたっぷり詰めたら、ふたをきつく閉めます。熱いのでやけどに注意してくださいね。
ジャムを入れるときにはできれば広口のじょうごを使って、びんの口が汚れないよう注意しましょう。

失敗知らずの脱気方法

煮沸に使った鍋は湯を捨てずに、ジャムを詰めている間も温度を保ってください。鍋の中の湯はふたをしたびんがすっぽりとかぶる水位が必要です。ジャムを詰め終わったら鍋に戻します。びんが当たっても破損しないようにふきんを底に敷くといいでしょう。

 鍋の中でびん詰にしたジャムを煮ること数分。箸などで押すとふたがカッチカチにふくらんでいる状態になったら、鍋から出 して 1 分ほどおき、ひっくり返して 3 時間ほど置けばできあがり。すぐにひっくり返すと あふれ出すことがあるので、必ず 1 分ほどおいてからひっくり返してくださいね。

びんが完全に冷めたとき、ふたの中央が少しへこんで内側に吸いつくように反っていれば脱気は成功です。しっかり脱気ができていれば4 カ月ほど保存可能。ただし、砂糖の量も日持ちにかかわる大事な要素です。分量を守るようにしてくださいね。

次のページでは詳しい作り方を紹介します。

–{あまおうのジャムのレシピ}–

『あまおうのジャム』のレシピ

材料(容量約160mlの耐熱性のびん6個分)

いちご……4パック(約1㎏)
グラニュー糖……500g(いちごの重量の50%)
レモン汁……1/2個分

下準備

鍋にびんを縦に置き、びんがしっかりかぶるほどの水を入れて中火にかける(煮沸)。沸騰したら弱めの中火にする。

作り方

(1)いちごにグラニュー糖をからめる
いちごは洗ってへたを取り、水けを拭く。大きなものは半分に切る。口径約30㎝の鍋にいちごを入れ、グラニュー糖の1/4量を加えてからめる。
(2)強火にかけて水分をとばす
弱火~中火にかけ、いちごから水分が出てグラニュー糖が溶けたらグラニュー糖の残りの1/2量を加える。沸騰したら残りのグラニュー糖を加えてさっと混ぜる。再び沸騰したら強火にし、沸いた状態を保ちながら焦げつかないよう、ときどき混ぜながら煮つめる(あまり何度も混ぜると温度が下がるので、触りすぎないこと)。
(3)火を止めて10分ほどおく
水位が下がり、泡が大きくなってゴムべらですくうとジャムがゆっくりと落ち、とろりとへらにまとわりつくくらいになったら火を止める。アルミホイルをかぶせて10分ほどおく。
(4)アクを取り、レモン汁を加える
アクをしっかり取り除く。レモン汁を加え、再び中火にかけてさっと火を通す。
(5)びんに詰める
煮沸したびんをトングなどを使って鍋から出し(湯は捨てず、弱火にする)、やけどに注意して水けを拭く。びんのふたもさっと湯に入れて水けを拭く。じょうごを使い、熱いジャムをびんの口5㎜下まで入れる。すべり止めがついた厚手の手袋などをしてふたをきつくしめる。
(6)びんの空気を抜く
鍋にふきんを敷き、びんを入れて中火にかける。沸騰して6~7分たち、箸などでふたをさわると、真ん中がふくらんで堅くなっていたら火を止める。びんを取り出して(やけどに注意)1分ほどおき、上下を返して3時間ほどおく。高温多湿を避け、常温で4カ月保存可能。
ジャムはご家庭でこそ作ってほしいレシピ。ぜひチャレンジしてみてください!

次回は1/19(金)更新。店で人気の『ブイヤベース』を家で作るなら……というお話です。

撮影よもやま話

ジャムにちなんで今回のお話はかつてパリ近郊に存在した(1844年創業)食料品店FELIX POTIN PARISのコンフィチュールポット(ジャムびん)です。こちらはリュネヴィル窯で作られたもので、フランスではコレクターも多くアンティークショップでは高値で売られています。当時のジャムは量り売り。きっといろんなジャムが詰められてお店と家を何度も行ったり来たりしたのでしょう。

私がまだ子どものころ、父がパリのお土産に白い陶器のびんに詰められたいちごジャムを買ってきたことがありました。びんがガラスではなかったことに加え、子どもながらにジャムがあまりにおいしくて驚いたことを今でも覚えています。FELIX POTIN PARIS は1995年まで存在していたようですから、もしかしたらもしやだったのかもしれません。そんな思い出もあって、個人的に思い入れのあるコンフィチュールポット。ツールを入れたり、フレッシュハーブを飾ったり、キッチンを飾るのもいいですね。(池田講平)

調理室池田

調理室池田
2018年12月に川崎市にある中央卸売市場北部市場内に開店。アンティークショップ・アートギャラリーを兼ねた、市場には珍しいスタイルのカフェ。早朝から働く人がコーヒーを片手に手軽に食べられるようにと作った焼き菓子や、ツナサンド、フリットといった市場で仕入れる新鮮な魚介類を使ったランチが人気。
公式HP 公式インスタグラム 

神奈川県川崎市宮前区水沢1-1-1 川崎市中央卸売市場北部市場 関連棟 45 
営業日/月・火・木・金・土曜
営業時間/7:00~13:30
(ラストオーダーは13:00、土曜日のみ14:00)
ランチタイムは 11:45~ 休みは市場に準ずる(原則、水・日曜と祝日) 
※一般のかたの市場への入場は8時から。来店の際は必ず上記HPかインスタグラムを確認してください。

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料理・文/池田宏実 撮影・スタイリング/池田講平 編集/小林