実在の商品の登場、人気声優の名演……とにかく見どころ満載!
アニメを多数制作している〈MAPPA〉ですが、初の料理アニメである今作では思わぬ苦労もあったとか。
ムコーダたちが夜の屋外で料理を食べるシーンの作画で、リアルな夜景どおりの色をつけたところ、あまりおいしそうに見えなかったのだそう。
理由は夜のシーンゆえ、全体の色みを寒色系に寄せていたこと。
通常のアニメの制作現場では普通の演出ですが、料理も主役のひとつであるこの作品にあっては、おいしそうに見えることが何より大切です。
そこで急遽演出プランを変更。
「本当は夜の設定だけど、料理が始まったら周囲を明るくするなどの演出を加えました。もちろん見ていて違和感がないようには計算してやっていますが、注意して見てみると、意外とそういうシーンがあるんですよ(笑)」と小川さん。
ほかにも、実写よりも暖色系を強調するなど色みの修正を加えているそう。
松田さんいわく、「毎回登場する料理が違うので、それぞれおいしそうに見えるよう色をつけていくのは、もうわりとセンスの世界」なのだとか。
技術のほかにもセンスが必要とは……奥が深いです!
料理の照りなどを表現する〈特殊効果〉の作業は、業界内でも有名な〈チーム・タニグチ〉に依頼し、共働で作り上げます。ちなみに左の画像が特殊効果入り。おいしそう!ちなみに今作品、実在の企業名が次々登場することがネットで大いに話題となりました。
ネットスーパーなら〈イオン〉、「生姜焼のたれ」なら〈エバラ食品〉……おなじみの社名と商品名のオンパレードは、まるで物語の中の異世界と現実世界がつながっているような感覚に。
原作にはないこのアイディアは、MAPPAの木村プロデューサーの発案。
「正直、ここまでの反響に驚いております。
使用許諾を取るために駆け回ってくれた関係者の皆様にはとても感謝してます」と小川さん。
食いしんぼうとしては、知っている商品が出てくると親近感がわいて、つい食べたくなってしまうもの。
しかも気軽に買える商品ばかりだから、ムコーダが作る料理もばっちり再現できちゃう。
おいしいものが食べたくなると同時に、作りたくなってしまう〈飯テロアニメ〉でもあるのです。
異世界ものではおなじみのオークや怪鳥・ロックバードなどの肉を、豚肉や鶏肉として調理する主人公・ムコーダ。料理センス抜群……?
大量の原画の下書きに指示を入れている松田さん。「作りながら、めちゃくちゃおなかがすきます!」とのこと。わかります……おいしそうな料理に加え、魅力的なキャラクターの数々も今作の魅力。人気声優のみなさんの見事な演技が話題を呼んでいます。
(主要キャストの内田雄馬さん、日野聡さん、木野日菜さん、内田真礼さんのインタビューは
こちらからご覧ください!)
ちなみに声優の選考は、原作者やプロデューサーから「この人はどうですか?」と名前が挙がった候補のなかから、オーディションを実施したそうです。
松田さんに今作における声優陣の採用の決め手や、声の演出について伺いました。
松田さん:僕はリアルなお芝居をするかたが好みなんです。だからまず、主要キャラの4人は、お芝居の上手さを重視しました。
特にフェルはむずかしいキャラクターで、めちゃくちゃ強くてかっこいいけど、チャーミングさもないといけない。お芝居にも幅が求められるので、いろんなアプローチの役者さんに来ていただきました。
最終的にフェルは日野聡さんに決まりましたが、結果すごくいい人選だったなと。
――ムコーダ役の内田雄馬さんには、何かリクエストされたことはありましたか?松田さん:ムコーダは主役でありながら、力も強くないし勇気もない一般人。作画でも、いわゆるイケメンキャラにならないように気をつけているのですが、内田さんにもそこを意識してもらいたいとお伝えして。彼は素の声がイケボなんで(笑)。
ちょっと気が抜けているというか、力の入っていないお芝居をしていただきました。
小川さん:ファンにも好評のようです。内田さんは、ほかのアニメではめちゃくちゃかっこいい役をたくさん演じてらっしゃるので、ムコーダのような役は新鮮でした。
松田さん:スライムのスイ役の木野さんや女神・ニンリル役の内田真礼さんのお芝居も絶妙にハマっているので、それぞれのキャラの個性を楽しんでいただきたいですね。
キャラクターの色彩設計を担当するスタッフのPCをのぞき見。各キャラクターに使用する色も細かく指定されています
声優の声を収録後、絵と音がぴったりとハマるよう、さらにキャラクターの動きを調整。たった数秒のシーンでも、かける手間は膨大!