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  2. 岸本葉子の 年をとるって、こんなこと?
暮らしの中でふと感じる「これってトシかも?」。困りごとや心配ごとだけでなく、大人ならではの楽しみも。おねえさん世代の岸本さんが送るリアルな「体験レポート」です。
12月22日 シニア向けの家計簿
通帳とカード明細ですませてきたが
 年末が近づくと、書店で家計簿が目につくようになる。三十代でいちどトライし挫折して以来、気になりながら近づかずにきた売り場である。
 つけなくていい理由は、いくらでも思いつくのだ。
「だってそもそも月々の収入が、私の場合決まっていないのだし」
「保険料とかの固定支出といわれるものだって、年に一回まとめ払いしているから、月々なんてわかんないし」
 何にいくら引き落とされたかは、銀行の通帳でわかる。日々の支払いに使うカードは一枚に絞っていて、そちらもWEB明細で確認できる。このふたつが私にとっての家計簿代わり。
 月に一回メールで知らせが来るカードの利用総額をチェックして、びっくりするほど増えてなければ、まあよしとし、月に一回通帳記入して、残高がびっくりするほど減ってなければ、家計管理はまずまずできているつもりでいた。
決まって使うものだけでこんなに
 しかし老後の備えも必要な今、そこまでおおざっぱなのはどんなものか。
 いちばんの問題は、すべてが事後の把握である点だ。「あー、今月はこれくらい払ったんだ」と、使った後ではじめてわかる。
「月々これくらいは使うんだ」と事前に知っておいた方がいいのでは。でないと蓄えなんてできやしない。
 早い話「四の五の言ってないでつけなさい」と自分を叱咤したのである。  売り場にある中で、いちばんつける気が起きそうな『シニア世代のシンプル家計ノート』を買ってきた。文字が濃くてはっきりしているのと(これはだいじ! 老眼になると薄い字がとにかく読みづらい)、記入欄が広く、日付、費目ともにフリーで万事にゆったりしているのがいい。むろん価格も。税がついても五百円でおつりが来る。
 一月からはじまるが、予行演習することにした。通帳を開いて、一月の最初のページにある「固定支出や引き落としのお金の内訳」欄に従い、該当するものを紙に抜き書きする。電気やガスなど季節による差の大きいものは、今年一年の実績からだいたいの平均値を出す。固定資産税や年金、保険料といったまとめ払いしているものは月割りにした。自分も結構こまかいことができるではないかと、気をよくする。
つけるのがはじまり
 額が変わらぬマンションの管理費、月々必ず引き落とされるジムや加圧トレーニングの費用も入れた結果、「えーっ、こんなに」。月々十八万円! 自宅のローンはすでに完済したが、それでもこの額。六十五? になったら払い終わるだろう(この?にもおおざっぱさが表れている。恥ずかしい)保険料などを除いても、なお九万円越え。決まって使うものだけで、国民年金の受給額を上回る。
 ひとつひとつの額は千数百円から。服やバッグに比べて小さなものがほとんどだが、合計するとインパクト大。通帳に個別に並んでいたときはつかめなかった家計規模だ。
 どこまで減らせるか自信はないが、書くだけダイエットと同じで「つける」のがはじまり。来年は記入できるところから記録していこう。


岸本さんの本 『ちょっと早めの老い支度』
『ちょっと早めの老い支度』
50代が近づいたとき、老後の準備を考え始めたという著者が、どんなときに老いを意識し、どんな支度を始めたかを率直に綴ったエッセイ。
1961年神奈川県生まれ。エッセイスト。保険会社に勤務後、中国・北京に留学。自らの闘病体験を綴った、『がんから始まる』(文春文庫)が大きな反響を呼ぶ。著書は、『ちょっと早めの老い支度』(小社)、『ためない心の整理術 』(佼成出版社)、『「和」のある暮らししています』(角川文庫)など多数。共著に、『ひとりの老後は大丈夫?』(清流出版)がある。 岸本葉子公式サイト>>
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イラスト/松尾ミユキ 人物写真/安部まゆみ
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