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年をとるってこんなこと?

暮らしの中でふと感じる「これってトシかも?」。困りごとや心配ごとだけでなく、大人ならではの楽しみも。おねえさん世代の岸本さんが送るリアルな「体験レポート」です。

10月8日 粗大ごみを出す

食洗機が壊れた
  粗大ごみを出しました。ああ、この一行ですむことに、なんと時間がかかったか。
  食洗機が壊れた。メーカーに問い合わせると、部品がなくて修理不能とのこと。
  「まあ、いいか。なくても」
  節電のため、なるべく使わないようにしていたくらいだし。
  それにしても処分はどうしよう。取り付けは業者にしてもらった。取り外しは?
  ネットで調べると、自分でできたという体験談が寄せられている。しかしその先、粗大ごみに出さないといけないのだ。取説によると、食洗機の重さは十九キロ。調理台から抱え下ろし、収集所まで運ぶことを思うと……。
  ひと月くらいそのままにし、水切りかご代わりにしていた。が、通気性が悪く、食器がなかなか乾かない。
買い替えで処分も解決?
  手洗いをしているが、疲れていたり風邪を引いていたりで、機械に任せたいときもある。年をとっていくこれからこそ、むしろますます必要になる。購入を決意。
  買い替えで取り外し、撤去までいっきに片が付くという期待も、そこにはありました。地デジ化でテレビを買い替えたときのように、入れ代わりに持っていってくれるだろうと。むろん有料ではあろうけど。
  その考えは甘かった。販売店で聞くと、回収するのはテレビ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機などの家電四品目のみで、食洗機は対象外。新しいのを取り付ける際、古い方の取り外しまではするが、処分については有料でも応じていない。自分で粗大ごみの申し込みをするようにと。
  配送の日。段ボール箱をつぶして床に敷いておき、取り外した食洗機をその上に置いてもらった。収集所までは、段ボールの端を持って、自分で引きずっていくつもり。
  下ろしてみると思ったより場所ふさぎで、通るたびにじゃまになる。先延ばししていられない。気合いを入れて受話器を取り上げる。
申し込むのがおっくうで
  ブラインドの収集も併せて依頼。壊れて取り外したのを、部屋のすみの壁にたてかけ、三ヶ月以上もそのままにしてあったのです。軽いので、運ぶのに問題はないけど、電話して申し込むのが面倒で、つい。
  体力を要する作業だけでなく、それくらいの事を起こすのもおっくうになっている自分。今からこんなことでいいのか。
  できればもう粗大ごみを出さずに暮らしたい。買うときはよく考え、ていねいに使おう。それでもいつか耐用年数の来るのは避けられず、そのときは今よりさらに腰が重くなっているかもしれず……。悩み深いところです。
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1961年神奈川県生まれ。エッセイスト。保険会社に勤務後、中国・北京に留学。自らの闘病体験を綴った、『がんから始まる』(文春文庫)が大きな反響を呼ぶ。著書は、『ちょっと早めの老い支度』(小社)、『俳句、はじめました』(角川ソフィア文庫)、『買おうかどうか』(双葉文庫)など多数。共著に、『ひとりの老後は大丈夫?』(清流出版)がある。

岸本さんの本

ちょと早めの老い支度
『ちょっと早めの
老い支度』
50代が近づいたとき、老後の準備を考え始めたという著者が、どんなときに老いを意識し、どんな支度を始めたかを率直に綴ったエッセイ。
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イラスト/松尾ミユキ 人物写真/安部まゆみ