close

レシピ検索

食材からレシピを探す

年をとるってこんなこと?

暮らしの中でふと感じる「これってトシかも?」。困りごとや心配ごとだけでなく、大人ならではの楽しみも。おねえさん世代の岸本さんが送るリアルな「体験レポート」です。

4月9日 スナップ写真の撮られ方

 その場のノリで写真を撮って、後で送られショックを受ける。 そういうことはありませんか。
 私は先日メールで届き愕然とした。
 「これがありのままの私……」
 ひとことでいって老けた印象。

無意識のときの老け感
 カメラを向いて笑っているが、しわがどうの以前に姿勢が悪い。顎が落ちて胸は引っ込み、肩が上からかぶさってきそう。服装こそ若づくりでも、これを着物にして座布団の上に載せたら、背中を丸めたおばあさん。
 無意識のときの私ってこうなのか。写真の中へ踏み込んで、後ろから両肩をぐいとつかんで反らせたい。でもって言いたい。 「腹筋に力を入れて、肩胛骨を寄せて、胸を前へ突き出しなさい!」
 この年になったらもう、漫然と写真を撮られてはいけないのだ。
逃げ回るのもかっこ悪い
 かといって逃げ回るのも痛々しい。よく並んで待っているのにひとりだけ離れ、手招きして呼んでも頑として近づこうとしない人がいるが、あれはあれでかっこ悪いもの。せっかくの盛り上がりがしらけるし、恥ずかしがりを通り越し自意識過剰なようで、待つ側からの視線も刺を帯びてくる。いいから早く写れよ、みたいな。
 日頃よりポーズを研究し、撮るとなったら即座に、かつさりげなくそのポーズをとれるようでないと。
無意識のときの老け感
 あるお祝いの会で、同世代の女性と同席した。催し物の司会の仕事をしていたことがあるという。
 彼女といっしょのスナップ写真を後で見て、職業柄か、やはり撮られ慣れていると感じた。私と同じ平たい日本人顔で、どちらかというと太めの丸っこい体型の人だが、なんと言うか、もっさりしていない。
 どのショットでも背筋を伸ばし、よく見ると必ずどちらかの肩を前に出している。体を斜めに振ることでめりはりがつくのだ。
 瞬間的に姿勢を正す。真っ正面からレンズを向かない。この二つを心に刻みました。
次へ→

1961年神奈川県生まれ。エッセイスト。保険会社に勤務後、中国・北京に留学。自らの闘病体験を綴った、『がんから始まる』(文春文庫)が大きな反響を呼ぶ。著書は、『ちょっと早めの老い支度』(小社)、『俳句、はじめました』(角川ソフィア文庫)、『買おうかどうか』(双葉文庫)など多数。共著に、『ひとりの老後は大丈夫?』(清流出版)がある。

岸本さんの本

ちょと早めの老い支度
『ちょっと早めの
老い支度』
50代が近づいたとき、老後の準備を考え始めたという著者が、どんなときに老いを意識し、どんな支度を始めたかを率直に綴ったエッセイ。
  • amazon>>
  • 楽天ブックス>>
  • セブンネットショッピング>>

イラスト/松尾ミユキ 人物写真/安部まゆみ