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  2. 岸本葉子の 年をとるって、こんなこと?
暮らしの中でふと感じる「これってトシかも?」。困りごとや心配ごとだけでなく、大人ならではの楽しみも。おねえさん世代の岸本さんが送るリアルな「体験レポート」です。
111月12日 ヘアカラー、いつまで
染めないわけにいかない
  二十代から白髪のあった私だが、カラーにはなかなか踏み出せなかった。
「一度染めると染めないわけにいかなくなる。その後に生えてきたところとの境がくっきりだから」と経験者から聞き、ならばできるだけ遅くはじめようと。
 四十代で白髪が増えてからも、しばらくはヘアマニキュアで対応してきた。あれだと少しずつ色落ちするので、その後に生えてきたところとの境が曖昧。それならいつでも撤退できる。
 五十を過ぎてヘアマニキュアでは物足りなくなり、ついにカラーへ。やっぱり色がしっかりついて頼もしい。 美容院でしています。
出費をなるべく抑えるには
  いろいろ試してたどり着いた結論は「ある程度の年からは、カットはたしかなところで。カラーは安さ優先で」。
 前はカットもカラーも同じサロンでしていた。それぞれ六千三百円。
 カラーは高いから長持ちするわけではない。二週間で目につきはじめ、四週間すれば根元から一センチはまっ白。ブローするとき前髪に下からブラシをあてて、ぎょっとする。
 人前で不用意に髪をかき上げられない。がまんしてもう二週先延ばし、六週間にいっぺん。なるべく間をあけることで、一週間あたりの「単価」をなるべく抑えようと。
 今はカットとカラーのサロンを分けました。カラーは千八百円のところへ、四週間にいっぺん。カットほどは技術の差が出ないだろうし、多少出るとしても、「がまんの二週間」の髪の状況よりはましなはず。お金をかけないためには、家で自分でするという選択もあるだろうけど、市販のカラー剤の商品代、さらに壁や床に飛び散って色移りしないようごみ用のポリ袋など張る労力を考えると、どうか? その店は雨の日割引というサービスがあるので、それを使えばさらに安くすむし。
六十を機に止める
  しかし低負担とはいえ、「四週間にいっぺん、一生これを続けていくのか」と思うと、果てしない気持ちになる。はじめるまではあれほど慎重だったのに、すでにして後戻りできない道に入り込んでいる。
 「私は六十を機に、思いきって止めた」。知り合いの女性は言った。今はありのままの白髪で「すっごく楽よ」。
 しかし、白髪を放置し、投げているとか諦めているとかに見えないためには、染めないという決断がライフスタイルの一環であることを、服装などと合わせてトータルに表現されていることが必要で、それはそれで楽でなさそう。
 勇気と潔さのない私は、当面は千八百円サロンに通いそうです。


岸本さんの本 『ちょっと早めの老い支度』
『ちょっと早めの老い支度』
50代が近づいたとき、老後の準備を考え始めたという著者が、どんなときに老いを意識し、どんな支度を始めたかを率直に綴ったエッセイ。
1961年神奈川県生まれ。エッセイスト。保険会社に勤務後、中国・北京に留学。自らの闘病体験を綴った、『がんから始まる』(文春文庫)が大きな反響を呼ぶ。著書は、『ちょっと早めの老い支度』(小社)、『ためない心の整理術 』(佼成出版社)、『「和」のある暮らししています』(角川文庫)など多数。共著に、『ひとりの老後は大丈夫?』(清流出版)がある。 岸本葉子公式サイト>>
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イラスト/松尾ミユキ 人物写真/安部まゆみ
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