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  2. 岸本葉子の 年をとるって、こんなこと?
暮らしの中でふと感じる「これってトシかも?」。困りごとや心配ごとだけでなく、大人ならではの楽しみも。おねえさん世代の岸本さんが送るリアルな「体験レポート」です。
8月12日 夜の自宅にひそむもの
熱中症の九割は屋内
 蒸し暑い毎日。寝るときの環境にはかなり注意している。昨シーズンは「今思うとあれは熱中症のなりかけだったのかも」という不調を経験した。朝起きたらとてつもなく気持ちが悪く、めまいまでして……。
 その話を同世代の女性にしたところ、
「熱中症って昼間、外で運動してなるものじゃないの? 部活の生徒がとかって、ニュースでよく言っているじゃない」
 ち、ち、違う。人差し指を立てて振る。それは危険な認識違い。先日も新聞に載っていた。昨シーズン都内で熱中症により死亡した例の九割が屋内、三割が夜だったという。温暖化が進んでいるとは前々から言われていたけれど、まさか寝るのが命がけになろうとは!
扇風機は必需品
 高齢者は暑さを感じにくいため、気づかぬうち熱中症が進んでしまうケースが多いと聞く。寝るときの環境調整には、ますます真剣にならざるを得ない。
 扇風機は必需品。今シーズンはエアコンを使う前から回している。風が直接当たると、それはそれで体によくなさそうなので、寝室の外から風を循環させる。
 寝室の外は中廊下だ。寝室のドアを開け放ち、廊下に出たすぐのところに置いておく。
 暑さが厳しくなってからは、エアコンを併用している。リビングのエアコンを二十八度に設定し、扇風機で風を送って間接冷房する。
別の危険が
 この方式のおかげか、今のところ不調なしにすんでいるが、こわいのは夜中にトイレに起きるとき。シーズン早々は扇風機を何度も蹴飛ばした。半分眠ったままなので、つい習慣的なルートで歩いてしまう。
 さすがに扇風機本体は、寝ぼけながらもよけるようになったが、コードはいまだおっかない。洗面所のコンセントにさし、廊下を這わせてあるのだが、暗がりに黒いコードは見えにくく、足をひっかけてしまいそう。
「歩くところにものを置いてはだめね」
 九十六歳でひとり暮らしの吉沢久子先生はおっしゃっていた。自分では「気をつけなきゃ」とわかっているつもりでも、夜中に危うくつまずきそうになったと。
 熱中症防止には欠かせない。転倒防止にはない方がいい。自宅の安全を確保するのも、なかなかにたいへんなのだ。


岸本さんの本 『ちょっと早めの老い支度』
『ちょっと早めの老い支度』
50代が近づいたとき、老後の準備を考え始めたという著者が、どんなときに老いを意識し、どんな支度を始めたかを率直に綴ったエッセイ。
1961年神奈川県生まれ。エッセイスト。保険会社に勤務後、中国・北京に留学。自らの闘病体験を綴った、『がんから始まる』(文春文庫)が大きな反響を呼ぶ。著書は、『ちょっと早めの老い支度』(小社)、『ためない心の整理術 』(佼成出版社)、『「和」のある暮らししています』(角川文庫)など多数。共著に、『ひとりの老後は大丈夫?』(清流出版)がある。 岸本葉子公式サイト>>
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イラスト/松尾ミユキ 人物写真/安部まゆみ