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  2. 岸本葉子の 年をとるって、こんなこと?
暮らしの中でふと感じる「これってトシかも?」。困りごとや心配ごとだけでなく、大人ならではの楽しみも。おねえさん世代の岸本さんが送るリアルな「体験レポート」です。
12月10日 加圧トレーニング、その後
目的は介護予防
 世間話をする中でいちばん興味を持たれるのが、加圧トレーニング(以下、加圧と略)。「加圧をしています」と言うと「で、どうですか?」。必ずといっていいほど聞かれる。
 腕や足のつけ根にベルトを巻き、血流を抑制することにより、短時間のトレーニングでも効果を上げるもの。私は老後のためにはじめた。
 将来の要介護リスクをなるべく下げたい、それには転倒を防止したい、それには筋肉をつけておきたいという遠大な計画で。週一回、一回につき三十分。通って一年半余り経った今の感想をひとことで述べれば、とてもいいです。
力こぶができた!
 ムキムキになった……わけではない。腹筋は割れていないし、食べた後相変わらずおなかがぽっこり。でも例えばお風呂に入るとき、髪をまとめようと両手を上げた瞬間など、鏡の中の自分に思う。「おっ、ギリシャ彫刻」と。二の腕から肩にかけて、たくましく隆起。服の袖が短い夏には、力こぶを作ってみせ反応を楽しんでいた。
 加圧をはじめる前も運動はしていました。ジムで週二、三回、自己流のマシントレーニングを数年間。でも効果はあまり上がらなかった。週にたった三十分でこうなるとは!
 体重は減らない。腿なんてむしろ太くなった。筋肉がついたせい?
 体脂肪も……減っていない。ジムへも風呂に入りにいっていて、ついでに体脂肪計に載るのだが、「あの体脂肪計は性能が悪い」と思うことにしている。あるいは、「本来ならエイジングにつれ体脂肪が増えるはず。それをくい止めているだけでも、たいしたものだわ」と。
日常の動作が楽に
 数字の問題以上に、日常の動作全般が前より少しずつ楽なのがうれしい。重い掃除機を運ぶとか、布団を持ち上げ物干し竿にひっかけるとか。いちばん感じるのが、同じ姿勢で腰かけていないといけないとき。前は乗り物や店の椅子に二時間座り続けるのもつらかったけど、気がつけばそうでもなくなっている。体幹の筋肉がついて支えられるようになったのか。循環がよくなり、腰痛の原因のひとつとされるうっ血が改善されたのか。
 計画が将来的に達成されるかどうかはわからないが、今現在のQOL(生活の質)は上げてくれているような。
 泣きどころは料金。一回六千円(私の通っているところの価格。施設により三千円台からあるらしい)。国民年金の受給額から捻出するのはたいへんそうだけど、できる限り続けるつもりです。


岸本さんの本 『ちょっと早めの老い支度』
『ちょっと早めの老い支度』
50代が近づいたとき、老後の準備を考え始めたという著者が、どんなときに老いを意識し、どんな支度を始めたかを率直に綴ったエッセイ。
1961年神奈川県生まれ。エッセイスト。保険会社に勤務後、中国・北京に留学。自らの闘病体験を綴った、『がんから始まる』(文春文庫)が大きな反響を呼ぶ。著書は、『ちょっと早めの老い支度』(小社)、『ためない心の整理術 』(佼成出版社)、『「和」のある暮らししています』(角川文庫)など多数。共著に、『ひとりの老後は大丈夫?』(清流出版)がある。 岸本葉子公式サイト>>
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イラスト/松尾ミユキ 人物写真/安部まゆみ
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