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  2. 岸本葉子の 年をとるって、こんなこと?
暮らしの中でふと感じる「これってトシかも?」。困りごとや心配ごとだけでなく、大人ならではの楽しみも。おねえさん世代の岸本さんが送るリアルな「体験レポート」です。
1月14日 ごろ寝もほどほどに
立てなくなった!
 知人の介護しているお母さんが、なんと立てなくなってしまったそうです。ベッドから床へ足を下ろし、尻を持ち上げてもらおうとしたところ、動かない! 下から押しても、引っ張っても。
 思い当たる原因はある。風邪で十日ほど寝ついていた。その間知人は、痰を喉に詰まらせないのに必死。治った後のことまで考える余裕がなかった。
 食事もトイレもベッドの上で。ようやく治り「さあ、今日から椅子の生活に戻りましょう」となったら、この事態。風邪を引く前は、補助具につかまりリビングまで歩けていた。たかだか十日でこうも衰えてしまうとは。
年とってからの風邪は
「風邪がきっかけで寝たきりになるって、話には聞いていたけど、こういうことだったかって。年とってからの風邪はこわいね」と言う。
 完全に立てなくても、お尻をちょっと自分で浮かせられれば、知人ひとりの手助けでベッドから室内用車椅子に移れるが、それができない。私たちがなにげなくしているそんな動作も、腿の筋肉を使っているのだ。二人がかりで抱えて車椅子に乗せても、その先でまた筋肉は要る。背中の筋肉や首の筋肉で、胴と頭を支えられないと、座位を保てず、ずり落ちてくる。
「筋肉ってだいじなんだと思ったよ」と知人。
二日間で落ちる筋肉
 高齢者に限った話ではありません。人は横になったままだと、二日間で一パーセントの筋肉が落ちていくとか。運動をせずふつうに過ごしているだけだと、加齢により年に一パーセントの筋肉が落ちていくというけれど、わずか二日で一年ぶん!? インフルエンザでダウンでもしたらたちまち……。
 風邪とインフルエンザには気をつけないと。うっかり事故で骨折なんかもしないよう、階段や自転車は要注意。疲れた日もごろごろするのはほどほどに。正月といえば親の家でふだん以上に体と神経とをつかう私は、年明けになじみの店で聞かれる「お正月はゆっくり過ごされましたか」との質問に、うっすらしたいら立ちをおぼえるとともに、「いつか寝正月というのをしてみたい」と老後の楽しみにしていたが、その願望をきれいさっぱり断ち切った。
 知人はお母さんに椅子での暮らしを取り戻すべく、訪問リハビリを申し込み、早々に訓練をはじめたそうです。


岸本さんの本 『ちょっと早めの老い支度』
『ちょっと早めの老い支度』
50代が近づいたとき、老後の準備を考え始めたという著者が、どんなときに老いを意識し、どんな支度を始めたかを率直に綴ったエッセイ。
1961年神奈川県生まれ。エッセイスト。保険会社に勤務後、中国・北京に留学。自らの闘病体験を綴った、『がんから始まる』(文春文庫)が大きな反響を呼ぶ。著書は、『ちょっと早めの老い支度』(小社)、『ためない心の整理術 』(佼成出版社)、『「和」のある暮らししています』(角川文庫)など多数。共著に、『ひとりの老後は大丈夫?』(清流出版)がある。 岸本葉子公式サイト>>
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イラスト/松尾ミユキ 人物写真/安部まゆみ
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