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元気なお年寄りのインタビューを読むと、健康診断については二つのタイプに分かれるようだ。人間ドックに定期的に入るなどしてまめに検査を受けている人と、まったく調べていない人と。
八十九歳の知人女性は後者のタイプで、「この年まで生きたんだもの。病気になったらそのときはそのとき。それが私の寿命なんでしょ」と日頃から言い、でんと構えている。ごりっぱ。
そういう自然体の人の方がかえって長生きできるのかもなと思いつつ、賭けでもあると感じてしまう。その人はたまたま何ごともなく来たけれど、誰でも同じようにうまく行くとは限らない。「この年まで生き」ていない老いの途上の人間としては、やっぱり検査はしている方がいいのでは。
彼女のように肝の据わっていない私は、人間ドックを受けたり、ちょっとした不調でクリニックにかかったついでに血液検査したりしている。
問題は受け止め方だ。
同世代の知り合いは、私同様まめに調べるタイプだが、血液検査で腫瘍マーカーの数値が高かったという。腫瘍マーカーというのもやっかいで、がんでないのに上がることもある。当人もそうと知りつつ、いざ自分に高い数値が出るとやはり不安で、マンモグラフィやエコーなど、そのマーカーに関連するといわれるいくつかのがんの検査を受けた。
結果、異常なしで「一年後くらいにまた検査しましょう」で終わったという。
「そう言われても、割り切るのがたいへんじゃない?」と私。気の小さい私なら、がんはあるのにその病院でみつけられなかっただけなのではと、疑心暗鬼になってしまいそうだ。
彼女もはじめはそう考えていたけれど、
「でも、やめたの。キリがないから。ないと言われたら、ないと思うことにした。専門家がそう言っているのに、あるはずと言い張るのも変じゃない」
たしかに。
検査をまったく受けないのもリスキーだけど、数値だけに振り回されないようにしようと思ったのだった。
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