close

レシピ検索

食材からレシピを探す

  1. HOME
  2. 岸本葉子の 年をとるって、こんなこと?
暮らしの中でふと感じる「これってトシかも?」。困りごとや心配ごとだけでなく、大人ならではの楽しみも。おねえさん世代の岸本さんが送るリアルな「体験レポート」です。
10月28日 健康診断、受けていますか
気にしない方が長生き?
 元気なお年寄りのインタビューを読むと、健康診断については二つのタイプに分かれるようだ。人間ドックに定期的に入るなどしてまめに検査を受けている人と、まったく調べていない人と。
 八十九歳の知人女性は後者のタイプで、「この年まで生きたんだもの。病気になったらそのときはそのとき。それが私の寿命なんでしょ」と日頃から言い、でんと構えている。ごりっぱ。
 そういう自然体の人の方がかえって長生きできるのかもなと思いつつ、賭けでもあると感じてしまう。その人はたまたま何ごともなく来たけれど、誰でも同じようにうまく行くとは限らない。「この年まで生き」ていない老いの途上の人間としては、やっぱり検査はしている方がいいのでは。
悪い数値が出てしまった!
 彼女のように肝の据わっていない私は、人間ドックを受けたり、ちょっとした不調でクリニックにかかったついでに血液検査したりしている。
 問題は受け止め方だ。
 同世代の知り合いは、私同様まめに調べるタイプだが、血液検査で腫瘍マーカーの数値が高かったという。腫瘍マーカーというのもやっかいで、がんでないのに上がることもある。当人もそうと知りつつ、いざ自分に高い数値が出るとやはり不安で、マンモグラフィやエコーなど、そのマーカーに関連するといわれるいくつかのがんの検査を受けた。
 結果、異常なしで「一年後くらいにまた検査しましょう」で終わったという。
振り回されすぎないで
「そう言われても、割り切るのがたいへんじゃない?」と私。気の小さい私なら、がんはあるのにその病院でみつけられなかっただけなのではと、疑心暗鬼になってしまいそうだ。
 彼女もはじめはそう考えていたけれど、
「でも、やめたの。キリがないから。ないと言われたら、ないと思うことにした。専門家がそう言っているのに、あるはずと言い張るのも変じゃない」
 たしかに。
 検査をまったく受けないのもリスキーだけど、数値だけに振り回されないようにしようと思ったのだった。


岸本さんの本 『ちょっと早めの老い支度』
『ちょっと早めの老い支度』
50代が近づいたとき、老後の準備を考え始めたという著者が、どんなときに老いを意識し、どんな支度を始めたかを率直に綴ったエッセイ。
1961年神奈川県生まれ。エッセイスト。保険会社に勤務後、中国・北京に留学。自らの闘病体験を綴った、『がんから始まる』(文春文庫)が大きな反響を呼ぶ。著書は、『ちょっと早めの老い支度』(小社)、『ためない心の整理術 』(佼成出版社)、『「和」のある暮らししています』(角川文庫)など多数。共著に、『ひとりの老後は大丈夫?』(清流出版)がある。 岸本葉子公式サイト>>
バックナンバー
イラスト/松尾ミユキ 人物写真/安部まゆみ