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  2. 岸本葉子の 年をとるって、こんなこと?
暮らしの中でふと感じる「これってトシかも?」。困りごとや心配ごとだけでなく、大人ならではの楽しみも。おねえさん世代の岸本さんが送るリアルな「体験レポート」です。
5月27日 危ない低栄養
とりすぎに注意しているが
 私たちが食事で気にしているのは、栄養のとりすぎになることだろう。ちょっと油断すると、一キロや二キロすぐに増える。
 運動を何もしなくても、いわばごろ寝をしていても消費するエネルギーを基礎代謝というが、その量は年とともにどんどん下がる。昔と同じように食べていては、自然と太ってしまうわけで。
 生活習慣病のことを考えても、肉や油っぽいものは控えて、魚や野菜を中心にする。たまにはベジタリアンふうの食事で、おしゃれにヘルシーに。おかずは栄養の基本だからしっかり食べて、糖分であるご飯を減らして調節。そんなあたりが、女性がふつう心がけているところでは。
チェック項目にどっきり
 ある新聞の記事を読んで、どきっとした。高齢者で低栄養だと、死亡リスクが上がるという。
 問題は自分が低栄養と思っている人は少ないこと。記事には要注意の人のチェック項目が挙げられていた。肉は体によくないのでもっぱら魚、牛乳や乳製品は二日に一回以下、主食をとらずおかずだけですませることが多い、年をとったらあんまり食べなくてもいいと思っている、などなど。私、結構あてはまる……。
 自己判断は禁物、ということか。
 栄養管理に関しては、父の介護でも仰天したことがある。風邪ぎみで、お医者さんに往診に来てもらったら、
「栄養状態が悪い」
 と言われてしまった。栄養状態が悪いと、風邪をひきやすかったり、ひくと治りにくかったりと、健康上いろいろ支障が出ると。大ショック。
体によかれのつもりでも
 ものが噛めず、誤嚥もしやすい父は、流動食だ。流動食で手っ取り早く栄養をとれるのはポタージュスープやシチューだろう。市販のそれらは肉やバター、クリームなどの乳製品を使い、エネルギーたっぷりだ。ところが父は脂肪を控えよとも言われている。胆嚢炎で何回も入院し、そのときに指示されたこと。ゆえに家族は、ご飯はお粥にし、おかずは白身魚や野菜を蒸して裏ごししたり豆腐をすりつぶしたりと、涙ぐましいまでの工夫をしてきた。体によかれと思う努力が、かえって危険を招いていた?
 中年では、とりすぎに注意と言われ、高齢者はとらなさすぎに注意と言われ、ではどの時点で切り替えればいいの、という感じ。
 自己判断が難しいなら、定期的に血液検査を受けるとか、何らかの「第三者の目」が必要そう。


岸本さんの本 『ちょっと早めの老い支度』
『ちょっと早めの老い支度』
50代が近づいたとき、老後の準備を考え始めたという著者が、どんなときに老いを意識し、どんな支度を始めたかを率直に綴ったエッセイ。
1961年神奈川県生まれ。エッセイスト。保険会社に勤務後、中国・北京に留学。自らの闘病体験を綴った、『がんから始まる』(文春文庫)が大きな反響を呼ぶ。著書は、『ちょっと早めの老い支度』(小社)、『ためない心の整理術 』(佼成出版社)、『「和」のある暮らししています』(角川文庫)など多数。共著に、『ひとりの老後は大丈夫?』(清流出版)がある。 岸本葉子公式サイト>>
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イラスト/松尾ミユキ 人物写真/安部まゆみ