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年をとるってこんなこと?

暮らしの中でふと感じる「これってトシかも?」。困りごとや心配ごとだけでなく、大人ならではの楽しみも。おねえさん世代の岸本さんが送るリアルな「体験レポート」です。

9月24日 カットは土台

パーマなしでも欠点カバー
  三ヶ月ぶりに髪を切った。われながら若返った感じ。伸ばしてみてそれはそれで気に入っていたけれど、サロンの人がすすめる短めのスタイルの方がやはり似合いそう。
  もうひとつの発見は、ふくらみを出すのに必ずしもパーマは要らないのだなと。前の私はこう思っていた。皮膚がたるみ重心の落ちてくる顔の欠点をカバーするには、頭頂部の髪にボリュームを持たせることが必要、それにはパーマが必要と。でもカットの仕方によってはパーマなしでもふくらみを実現することができる。たぶん毛量の調節とかレイヤーの入れ方とか、微妙な技があるのでしょう。最近通いはじめたサロンです。
コストパフォーマンスの考え方
  そのサロンには婦人雑誌の取材で行く機会を得た。切ってもらっている途中からすでに「うん、なんかいい」と感じて、「次回から自分のお財布でも来られるかしら」と周囲に人がいない間に価格表をすかさずチェック。婦人雑誌に載るだけあり、価格はややセレブめで、その先生のカットが一万円ちょっと。私がふだん行っている美容院のカット料金より高い。
  しかしキレイが長持ちする。三ヶ月も間があいてしまうと当然伸びるが、その間ずっといい感じの形を維持していた。前の美容院ではひと月半が限界で、前髪はそれすら待てなくて発作的に鋏を入れては「あっ、自分で切ったでしょう」と痛い指摘をされていた。ややセレブめ価格でも月割りすれば、むしろ安いと考えていいのでは。パーマをかけなくてすむのも、コストパフォーマンスを上げている。前はひと月半に一回必ずかけていた。
  洗髪後も楽。パーマのうねりをブローで力いっぱい伸ばしたり、ふくらみを持たせるのは巻いたり盛ったりもしなくてすむ。腕を肩より上げ続けヘアスタイルを整える作業をする根性が、年々なくなってくる身にはありがたい。
「往時」のスタイルにこだわらない
  「年をとったらカットの上手いところを探しなさい。パーマよりも何よりもカットは土台よ」
  年長の女性が言っていた意味が、はじめてわかった。
  切ってもらうとき、自分のしたい髪型にあまりこだわらないこともだいじ。女性政治家にまま、いませんか。ヘアスタイルだけ時が止まっている、というかヘアスタイルだけ時を止めてしまっている人。たぶん「あの髪型はけっこうイケてた」と思うスタイルが誰にでもあるだろうけど、顔そのものが少しずつ変わるし、その時々で「現役感」があるとされるスタイルも変わるもの。したい髪型が、今の自分にベストな髪型とは限らないのだ。
  でもロングヘアへの憧憬はいまだ捨てがたい私。どうしてもしたいと思ったら、先生に相談しよう。
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1961年神奈川県生まれ。エッセイスト。保険会社に勤務後、中国・北京に留学。自らの闘病体験を綴った、『がんから始まる』(文春文庫)が大きな反響を呼ぶ。著書は、『ちょっと早めの老い支度』(小社)、『俳句、はじめました』(角川ソフィア文庫)、『買おうかどうか』(双葉文庫)など多数。共著に、『ひとりの老後は大丈夫?』(清流出版)がある。

岸本さんの本

ちょと早めの老い支度
『ちょっと早めの
老い支度』
50代が近づいたとき、老後の準備を考え始めたという著者が、どんなときに老いを意識し、どんな支度を始めたかを率直に綴ったエッセイ。
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イラスト/松尾ミユキ 人物写真/安部まゆみ