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猫沢エミさん「心が疲れたら、手を動かす。料理は誰かのためだけでなく、自分自身を愛してあげるためのもの」

2023.03.05

人気の#猫沢飯「泣ける 目玉焼きのっけ焼きそば」猫沢さん撮影



本やエッセイから受け取る印象どおり、オープンでやさしい猫沢さん。言葉の一つ一つから、温かいものがにじみ出るようなインタビューでした

――だれかのためだけでなく、自分自身を愛してあげるために料理を作る。たしかに、大切な視点かもしれません。

たとえば夜中に突然天ぷらが食べたくなったとするじゃないですか。

普通ならめんどうだしやりたくないけど、「よしよし、食べたいなら食べさせてあげようじゃないか!」って作ってみると、自家発電装置が作動して、疲れているけど楽しくなってきて。
「やっぱ、食べたいとき食べると違うな~」っていう充足感を得られたりするんですよね。

それに日々コンスタントに料理をしていると、おのずと台所も機能的になるし、無駄な食材を買うことも減っていくし、いろいろなことが効率よくできるようになって。

「作らなきゃ」という義務ではなく、自分に感謝しながら食べることを楽しむ。そういう〈癖〉を日常的につけるだけで、いろいろなことが整うと思うんですよ。

だから私は心がモシャモシャしたときは、とにかく料理をするようにしています。

――なるほど。「めんどくさい」から一歩踏み出してみたら、いいことばかりですね。

だいたい、疲れたな、コンビニ行こうかな、でも家にあるラーメンでいいかななんて迷って冷蔵庫のぞいてるうちに、すぐ30分くらい過ぎるんですから(笑)。
「疲れたな」の時点で作りはじめていたら、1~2品できてる!

――み、耳が痛いです……。

めんどくさいを切り抜けるための料理レパートリーなんて、毎日そればっかり食べるわけじゃないから、たくさん持つ必要はないはず。

私がよく作るのは、解凍した豚バラ肉を、ごま油とにんにくと塩と昆布だしを混ぜたたれに突っ込んで、ねぎといっしょにフライパンで炒めただけの塩豚丼です。

汁ものは、疲れているならインスタントのわかめスープ。それくらいの気楽さでいいんですよ。何でも最初に「ちゃんとやらなきゃ」って大げさに考えるとおっくうになっちゃう。日本人はみんなまじめに考えすぎるのかもって思います。

生身の猫ちゃん2匹と、お骨となった猫ちゃん2匹を連れてパリへ引っ越した猫沢さん。現在はフランス人パートナーとアパルトマンで暮らしています/撮影 関めぐみ

――では最後に、3月12日(イオちゃんの命日)から始まる連載「マダム・サルディンヌのおいしい処方箋」への意気込みを伺いたいです! 
みなさんからのお悩みに猫沢さんが答える、という内容ですが。


どんな相談が来るのかとても楽しみで。逆に全然意気込んでいないんですよ(笑)。

悩んでいるときって、つい思い詰めてしまうけど、もっとラクに考えていいと思うんです。
私自身も、全身まひになりかけるような大病を患ったり、けっこういろいろな体験をしてきましたけど、乗り越えてしまえばどれもひとつの思い出でしかありません。

悪いことばかり続くことはなくて、必ずそのあとにいいことがある。そしてもちろん、いいこともずっとは続かない。

だから幸せなとき、「こうなったらどうしよう」「ああなったらどうしよう」と先の不幸なことを考えなくてもいいんです。
日本人って、今を見つめるのがとても苦手で、先の心配をする人が多いですよね。すごくもったいない。今、この一瞬を生きなくてどうするのって。

――パリの人々は、今を生きるのが上手という印象です。

そういうところは、めちゃくちゃパリと馬が合いますね。
昨年久しぶりにパリに戻って暮らすことになったとき、もうちょっと違和感があるかなと思っていたんですけど、全然で。「最高! やっぱりここだ」って感覚がありました。

残念ながら、日本にいるときのほうが違和感を覚えるんですよ。メトロに乗っていても、みんなスマホを見て他人に無関心に思えます。

――フランス人はよく個人主義といわれますが、〈個人〉のあり方を考えさせられますね。

「自分のことだけ考えて、他の人のことは知らない」というのは個人主義ではないんです。一人一人が自分の考えをちゃんと持っているのが個人主義。私はフランスのそういうところがすごく好き。

こういうご時世だからこそ、人の顔色をうかがうんじゃなくて、自分の考えで行動できる人を増やしていきたいと思って。

今回の連載でも、決して偉そうなことを書くつもりはなくて、あくまで同じ目線で「人間ってそうだよね、わかるわかる」って笑いながら、「じゃあ何ができるかな?」ってうなずき、いっしょに考えたい。

それで最後、「ああ、ラクになったな」って思ってもらえたらうれしいですね。


〈PROFILE〉

猫沢エミさん

1970年、福島県生まれ。9歳からクラシック音楽に親しみ、音大在学中からプロのパーカッショニストとして活躍。96年シンガーソングライターとしてメジャーデビュー。2002年に渡仏し、07年より10年間、フランス文化に特化したフリーペーパー『BONZOUR JAPON』の編集長を務める。帰国後、フランス語教室「にゃんフラ」を主宰。22年2月より、二度目のパリ移住。著作に『ねこしき 哀しくてもおなかは空くし、明日はちゃんとやってくる。』『イオビエ ~イオがくれた幸せへの切符』(TAC出版)、『猫と生きる。』『パリ季記』(ともに復刻版・扶桑社)など。


イオビエ ~イオがくれた幸せへの切符』1980円(TAC出版)

撮影(人物)/馬場わかな 文/唐澤理恵

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