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「3年経つけれど、和田さんがいないとつまんないなって思うの」平野レミさんに聞く、料理と夫の記憶

2023.04.27

料理愛好家・平野レミさん

「器はグラナダ(スペイン)のもの。バックは夫のポスター」
「夫が絵つけした皿にスウェーデンのガラス皿をのせた。下の布は私のブラウス」

平野レミさんのエッセイ『エプロン手帖』にある写真には、そんな言葉が添えられています。短い言葉から伝わってくるのは、レミさんが大切にしている思い出や、当時の撮影がいかに楽しい時間だったかということ。作った料理を自身でスタイリングし、撮影まで手がけたからこそです。

『エプロン手帖』は、1995年に出版した『平野レミのエプロン手帖』を加筆、修正した一冊。

51の食材にまつわるエッセイとレシピがまとめられているだけでなく、レミさん自身がスタイリングや撮影を手がけたという料理の写真も楽しめます。この本にこめた思いや当時の様子、今あらためて感じることなど、お話をおききしました。

レミさんが30年近く作りづづけるおいしいレシピと合わせ、前後編2本のインタビューをお届けします!


料理にも、器にも、写真にも。和田さんとの思い出や、子どものころの記憶、旅の記録が残っています


―――とても楽しく読ませていただきました。お料理の写真もすごく見ごたえがあって。レミさんがご自身で撮られたとのことですが……??


そうなんですよ。和田さん(レミさんの夫で、デザイナーの故和田誠さん)にカメラを借りて撮ったんです。ハッセルブラッドっていうものだったんですけど、ぜんぜん使い方がわからないから、扱い方から撮り方までぜーんぶ、教えてもらってね。

夫・和田さんのカメラで撮った「桜ご飯と桜の吸いもの」。撮影もスタイリングも、すべてレミさんの手で。

――そもそも、どうしてレミさんが撮影することになったのですか?

『平野レミのエプロン手帖』は、もともと読売新聞に連載していたエッセイで、そのときは文章だけだったんです。でね、それを一冊にまとめようという話になったときに、料理の写真がほしいということになって「じゃあ、私が写真撮りましょう」って言っちゃったんです。なんで言っちゃったんだろう(笑)。

――スタイリングもご自身でされていますよね? 器もすごく素敵ですし、バックに和田さんのポスターを使われていて、なんてぜいたくなんだと思いました。

わぁ、ホント? うれしい! スタイリングも撮影も自分でやるのは初めてだったから、あーでもないこーでもないって言いながらやってね。

和田さんが助手だったんだけど、和田さんは10時には会社に行くから、その前に撮影したんです。ここ見てみて、ここ持っててね、もう少しこっちかなって相談して、こうしたほうがいいね、ってやりながら。自分でスタイリングと撮影をしたのは、これが最初で最後よ。

当時の思い出話のあれこれを、優しい表情で語るレミさん。

――今、あらためて当時の写真をご覧になって、どんなことを思い出されますか? なんだかすごく楽しそうだな、と感じるんです。

好きな写真、たくさんありますよ。(ページをめくりながら)これこれ! 下に敷いてるのは「春」って文字が描いてあるポスターで、箸置きは桜の枝を使って、工夫したのよね。
あと、このレース編みは、私が独身時代に作ったの。何かいいクロスないかなって探して、ピアノの上にかけてたものをさっと敷いて。
器の下にさらりと敷いてあるのはレミさんが自ら編んだレース。

自分で上手だな~って思っちゃう!

うーん、残念だったこともありましたねぇ。
この「にんじんシャーベット」の写真は、和田さんが背景の窓にホースで水をかけてくれてね。窓に水滴がついて、流れて落ちてくる滴がなんとも言えなくきれいだったのに、写真には写らなくって。あれば残念だった……。
じつは後ろの窓には水滴が。どの写真にも、和田さんとの思い出があふれます。


――しずくは見えませんが、光の感じがすごくきれいです。器も、すごくバリエーションが豊かですね。旅先で買われたものも多いのでしょうか?

うちにはね、本当に器がいーーーっぱいあるんです。私、洋服とか宝石とかより、器が好きで、旅行では器ばっかり買っちゃうから。いいな、と思うと買っちゃう。

たまに失敗もしましたよ。香港で、泥つきのすごくいい感じの渋い器を見つけて、骨董品だっていうからまあまあのお金を出して買ったんです。でも帰ってきて洗ってみたらピッカピカになっちゃって(笑)。だまされちゃった。そういう失敗もあるけれど、それでも器は好きだし、楽しい! 

今見ても、これは写真家の立木義浩さんがわらでくくった状態でかっこよく持ってきてくれたなぁ、これは台湾で見つけたアンティークだなぁ、和田さんのお土産の紙皿もあるなぁって、いろいろ思い出します。

3年たつけれど和田さんがいないと、つまんないなって思うの

――エッセイには、そういうお話も盛り込まれているので、読んでいてとても楽しい気持ちになれました。また書きたいというお考えはありますか?

この本は、子育てが落ち着いたころにいろいろ振り返って書いたもの。この前に出ている2冊(『家族の味』『おいしい子育て』)は、子育ての時代に書いてるから、思い出になってよかったなって思います。ただ、今はね、どうしても和田さんに会いたいな、寂しいなって思ってしまう。あーあっていう気持ちが先走っちゃうから、そういう気持ちがなくならないと、文章は書けないですね。

あらためて、人が死ぬっていうのは恐ろしいことだと感じるわね。3年たつけれど、和田さんがいないとつまんないなって思っちゃって。でも、みんな経験していることなんですよね。ずっと昔から、世の中の人がみんなね。

料理を作ったら、和田さんのところに。毎日欠かさず一杯のお茶を出してます


――この本を読んでいても、レミさんが和田さんとの時間をとても大切にされていることが伝わってきます。そういうお気持ちのなかで、お料理する時間は気分転換になりますか?

お料理してて、これ、和田さん好きだったなって思うと、和田さんのところに持っていくんです。以前にね、おいしいお茶をいれて「和田さん、はいお茶」って出したら「うん」って言ったの。聞こえたの。気のせいじゃないと思うの。
「和田さん、うんって言った」って思って。それから1日も欠かさずお茶を出しています。留守にするときは息子たちにお願いして。ずっと続けてるの。「うん」って言ったから。

この本に出ている料理は、全部和田さんも食べているんですよ。酸っぱいのと辛いのは苦手だったけど、まずいって絶対に言わなかったんです。まずかったときもあったと思うんだけどね……。そう考えると、この本は料理も器も、スタイリングに使ったものも、全部に思い出があります。


レミさんのおすすめレシピ『エプロン手帖』より

クリームチーズといちごソース


【材料】

クリームチーズ……400g
サワークリーム……200g 
レモン汁……少々 
いったくるみ……ひとつかみ  
いちご……½パック  
いちごジャム……½カップ  
キルシュ……大さじ2 
ミントの葉……少々

(1)クリームチーズ、サワークリーム、レモン汁、刻んだくるみを混ぜ合わせて、器にのせる。
(2)いちご、いちごジャム、キルシュをボウルに入れ、フォークでいちごをつぶしながらよく混ぜて(1)にかけ、ミントの葉を飾る。

〈PROFILE〉平野レミ(ひらの・れみ)

料理愛好家、シャンソン歌手。主婦として料理を作りつづけた経験を生かし、NHK「平野レミの早わざレシピ」などテレビ、雑誌を通じて数々のアイディア料理を発信。著書に『家族の味』『おいしい子育て』(ポプラ社)、『平野レミのオールスターレシピ』(主婦の友社)など多数。

エプロン手帖

(著/平野レミ、絵/和田 誠 絵/舟橋全二)1650円  ポプラ社
子ども時代の味覚の記憶から、両親や夫・和田誠さんとの料理にまつわるおいしい思い出まで。食材への思いがあふれるエッセイ集。

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