人気料理家・飛田和緒さん。この連載は飛田さんの飾らないお昼ごはんをのぞき見させてもらいます。使うのは20年近く住む神奈川県・三浦半島の旬の食材! さて今日はどんな「さもない」お昼が見られるのでしょうか……?
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3月に入ったとたん、寒い日が続いておりますが、みなさん体調いかがかな。海辺も冷たい風が吹いておりますが、お茶やしょうが料理、鍋もので体の中から温かくするよう心がけて過ごしております。
寒さを感じさせない春野菜がお目見え

今朝出かけた市場では春キャベツと新玉ねぎがもう山積み。トマトも種類が多く、棚を占領していました。
わが家はキャベツが大好き。春キャベツは巻きが柔らかだからと、今日は欲張って2個も買ってしまいました。

トマトも大玉から中、そのひとまわり小さなミディトマト、ミニトマトと大きさもいろいろあります。トマトは夏野菜のイメージがありますが、この辺りはハウス栽培がさかんで、年末くらいから春の終わりまでが旬のものが多い。露地ものとは違う甘みの強いトマトです。
せん切り油揚げを包んだ『ロールキャベツ』
春キャベツは外葉も柔らかいので、1枚ずつはがしてロールキャベツを仕込みました。巻きもふんわり柔らかく、葉をはがすのに手間はかかりません。
がっちりと葉が重なっている冬キャベツは、まるごとゆでたり、葉と葉の間に水を流しながらはがしたり、ひと工夫しますが、春キャベツはなんなくはがせて気持ちがいい。
葉はさっと湯通しして、しんの部分を薄く削るようにして切り、そのしんとせん切りにした油揚げを具にして包みます。肉だねやベーコン、ソーセージを具材にするよりも軽やかに仕上がります。ぜひお試しくださいませ。

包み終わりを鍋底に当てて、動かないようギュウギュウに詰めると煮くずれすることがありません。もしすきまがあいたら、他の野菜、たとえば玉ねぎやにんじん、じゃがいもを入れたり、キャベツのしんの部分をギュッ押し込みます。
キャベツと油揚げからいいだしが出るので、スープの素は使わずに。水または薄ーい昆布だしを入れて40~50分煮ると、とろっとろの柔らかなロールキャベツのでき上がり。
味つけは煮上がりに塩を少々。最初に味つけすると煮込むうちに味が濃くなってしまうので、うまみがたっぷりと出た煮汁の味見をしてから味つけするようにしています。
バゲットによく合う『具だくさんのオイル煮』
もうひとつ、キャベツの外葉でオイル煮も作りました。
ザクザクと切って厚手の鍋に入れ、ふきのとうも少し加えて。つぶしたにんにく、オリーブオイルをたっぷりと回しかけたら、塩をふたつまみほど合わせ、ふたをして火にかけます。
一瞬にしてキャベツのかさが減り、ときどき混ぜながらオイルがキャベツに浸透してとろんとろんになるまで蒸し煮に。これをおかずにご飯も食べられますし、カリカリに焼いたバゲットにのせると、オイルがしみておいしい!

写真はトマトを直接パンにこすりつけて果汁をバゲットにしみ込ませた「パン・コン・トマテ風」をいっしょに盛りつけて。この組み合わせ、ハマってます。
大好物の『焼きトマトのせご飯』

お昼は焼きトマトのせご飯。キャベツのオイル煮と目玉焼き、冷蔵庫にあったソーセージもいっしょに焼いて、プレートランチにし、混ぜながら食べました。
焼きトマトをのせたご飯はわたしの大好物。塩とこしょうで食べてもよし、しょうゆを回しかけても合う。

さっぱりしているんだけど、焼いたトマトのうまみでご飯がすすみます。ほんのりほろ苦いキャベツのオイル煮がこれまたアクセントになって、ご飯が止まらず、結局おかわり。
キャベツのオイル煮はまだ残っているから、また明日も同じプレートランチ……いや、朝から食べてしまいそうなくらい、おいしい取り合わせ。
ごちそうさまでした。お部屋もようやく暖まってきて、眠くなってきましたー。
キャベツの使い方はいろいろ

外葉をはいだキャベツは、さらに柔らかな部分が残っています。こちらは、ちぎりキャベツにしてみそをつけて食べたり、せん切りキャベツにして、サラダやおみそ汁の具にしていただきます。
2個あったキャベツもこれくらいまで小さくなれば、冷蔵庫にも納まりますね。買ってきたら、新鮮なうちに一気に料理を仕込むと、あとが楽だから、そうしています。
春野菜はほかにも
新玉ねぎはこれから薄切りにして甘酢に漬けたり、みじん切りにしてドレッシングを作ったりする予定。スライスして生で食べるのもいいですね。
焼いたり、炒めたりするといっそう甘みが増すので、グリルした肉や魚の料理のつけ合わせにもこれからよく登場することでしょう。

葉にんにくと、『具だくさんのオイル煮』で使ったふきのとう
長くて薄平たい葉の野菜は「
葉にんにく」。春になるとときどき見かける野菜で、高知の読者のかたからのお便りにはすき焼きの具材にすると書かれていました。地元では欠かせないのだそうですよ。たしかに牛肉に合いそう。
また市場で見かけたら、甘辛い味つけで食べてみたいと思います。
のびるのように白い鱗茎がついたわけぎは、サッとゆでて、酢みそあえに。まぐろなんかと合わせたらいいなー。収穫が始まった地元のわかめと合わせてもおいしいでしょうね。
今日はなんだかお酒がすすむものばかりを買ってしまったし、浮かんでくる料理もお酒のアテばかり……。寒いからね、熱燗が頭に浮かんでいたかもしれません。
来月は新しいスタートを切る4月。わたしも何か始めないとね。
大好きな桜ももう咲いているかしら。
しらすも解禁、野菜は豆類が出はじめていることを祈る。
飛田和緒
飛田和緒(ひだかずを)
料理家。神奈川県・三浦半島に夫・娘と住みはじめてから18年になる。海辺暮らしならではの魚料理や、地元の食材を使ったシンプルな野菜レシピが人気。繰り返し作りたくなる常備菜は、幅広い層から支持されている。お弁当や朝ごはんの記録をつづったインスタグラム(@hida_kazuo)も話題。著書に『いちばんおいしい野菜の食べ方』(小社)など。
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