人気料理家・飛田和緒さん。この連載は飛田さんの飾らないお昼ごはんをのぞき見させてもらいます。使うのは20年近く住む神奈川県・三浦半島の旬の食材! さて今日はどんな「さもない」お昼が見られるのでしょうか……?
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地元の直売所に冬野菜がそろってきました
大きな白菜はあともう少しとのことですが、代わりにミニ白菜がお目見え。最近流行りの野菜らしくスーパーでも見かけます。大きなサイズは食べきれないというのでサイズを小さくする品種改良が進んだようですね。あまりにかわいらしいので買いました。
大根は葉も立派で、1本2kg近くある大きいものを3本!!! 先月長野の実家の家庭菜園から持ち帰った大根を干して甘酢しょうゆで漬けましたら、おいしくできて、家族がもっと食べたいというので、気をよくして大根をまとめ買い。

お天気がいい日が続き、乾燥もしているので干し大根にはよい気候。昨年までなら、そろそろ大根干しは終わりに近く、みなさんたくあん作りに入るのですが、大根が大きくなるのが遅く、加えて干したくてもなかなか寒くならなかったせいで、スタートがやや遅めになっております。ですが、一気に乾燥してきましたから、あっという間に大根はUの字に曲がるくらいになることでしょう。干し上がりは早そうです。
地元のブロッコリーは出はじめたばかり。ゆでてあつあつをほお張ります。シンプルだけどごちそう。ゆでたてを食べられるって幸せです。
あるものでささっと、ひとり鍋

さて今日のお昼ごはんはひとり鍋。具材を切って鍋に入れて、おだしを注いで火にかけます。組み合わせに約束事はないので、あるものでさっとできるのがいい。煮立たせながら食べれば体がよく温まります。
以前、鍋焼きうどんを作りたくって小ぶりの土鍋を買いましたので、それからはひとり鍋をよく作っています。鍋ものにすると洗いものも少なく、さっと作って食べられるので、ひとりごはんのときにはとても気がラクでよいのです。流行りの韓国風鍋なら、浅めの小さなアルミ鍋とか、打ち出しの小ぶりの鍋などで作るのもいいですね。ひとりごはんのときだって、見た目も大事。目から入ってくるおいしさってあると思うので、簡単なぶん、鍋や器はおいしさが増すものを用意したいものです。
そして
ひとり鍋を用意しながら、今夜の夫の「蒸しつまみ」も同時進行で作りました。というのも、今夜はお出かけ予定がありまして、留守番の夫のためにせいろに具材をセットしておき、あとは鍋でお湯を沸かして蒸し板をのせてせいろを置いて、15分タイマーをかけてもらえば完成というもの。
せいろで夜の「蒸しつまみ」も同時調理

まず大根を長めの細切りにし豚肉を巻きつける、長さ5cmに切った小松菜も豚の薄切り肉で巻きました。ミニ白菜は葉を一枚一枚はがし、それぞれを鍋とせいろに入れ、せいろは白菜と大根を底に敷きつめるようにして、上に肉巻きと甘塩だらをのせ、半割りにした菊いもをのせました。
鍋のほうはさっと煮えるよう、菊いもは薄い輪切りに。そして火にかけている最中にミニトマトを冷蔵庫内で発見し追加する。そしてご飯を合わせようと思っていたのに、今日に限って冷凍ご飯がなく、急遽、餅を投入しました。夫のせいろにも餅をしのばせて。
蒸し餅って、とってもおいしいのです。わたしも知らずにいたところ、餅好きなカメラマンのかたに「つきたてみたいになる」と聞いてやってみたら、まぁおいしい。柔らかすぎない柔らかさ……どう表現したらいいのかしら。とろけるような感じではなく、のびがいい。蒸し餅、機会があったら試してみてください。ビヨーンとのびる餅が食べたいときに、ぜひ。
たれは何種類か用意して

たれはパクチーとねぎ、しょうゆ、魚醤、砂糖、酢を合わせたものと、白ごま、万能ねぎ、しょうが、しょうゆを合わせたもの、赤唐辛子と塩、ゆずの皮、甘酒の組み合わせて作ったゆずこしょうを用意。たれは1回分ではなく、多めに用意してびん詰にします。そんなびんがあれば、次回の鍋もののときに便利だから。鍋がシンプルなだけに、たれを何種か用意しておくと飽きません。

鍋は台所のガスコンロで温めながら、椅子を台所に移動して、調理台をテーブルにしてぐつぐつ煮えているところを取り出して、器に入れてたれかけて食べる。「ふーふー、ハフハフ」言いながら食べ進めると、あっとう間に中身がなくなって、もう一個餅を追加して食べました。残り少なくなっていた汁もすべて飲み干し、ごちそうさま。
翌日、夫にせいろの感想をきくと、お餅だけではおなかに足りずに豆腐を蒸して食べたそう。豆腐は蒸すと、とろんと口当たりがなめらかになります。しめにもってこい。いい選択しましたね。
菊いもは薄切りにしてレンチン。チップス感覚で

それからわたしが用意した菊いもが堅くて食べられなかったとのこと。薄切りにしたほうがよかったみたい。食べられなかった菊いもは、翌日薄切りにしてオーブン用シートに重ならないよう並べてレンチン。そうすると水けがとんでカリッと仕上がりました。かるく塩をふってカリカリさくさくした食感を楽しみました。
今回はせいろ蒸しを夜ごはん用にしましたが、逆パターンもありですよね。
冷凍うどんを鍋底にしのばせて、野菜や肉、練りものなどをのせた鍋を冷蔵庫に入れてスタンバイし、食べる際にはだしを注ぎ入れて、弱火からスタート。冷蔵庫で冷えているので、いきなり強火にかけるとひびの原因にもなりますから、そのあたりさえ気をつけていれば鍋の準備を事前にしておくことも可能だなと思った次第。ひとり鍋、ひとりせいろがこの冬続きそうです。
ゆずは「ゆずしょうゆに」

写真にある黄色いゆずは農家のおかあさんからのおすそわけ。しっかり完熟しているものをくださったので、すぐに切って果汁を絞ってびんに詰めて冷凍しました。種は別のびんに入れて、しょうゆを注ぎ入れて「ゆずしょうゆ」に。種からもしっかりゆずの香りや味が出るので、種は捨てません。種から出るペクチンで、しょうゆがゼリー状になりました。
おしょうゆを追加してのばしたら、いい濃度。皮は調理せず、お茶用パックに入れてお風呂に浮かべてゆず湯にします。夜が待ちどおしい。後日ゆずしょうゆを焼いたお豆腐にタラリとかけて食べましたら、これが絶品。香りがフレッシュなこともあって、たいへんなごちそうになりました。かんきつが添えられていると、ごちそう感が高まります。レモンやすだちでもそう。一滴たらすだけで、ふわっと香りが立って味変できる。冬の間はかんきつを常備したいですね。
ひとり鍋、満喫。干した大根がまたおいしい漬けものに仕上がりますように。さあ年末まであともう少し、みなさん体調に気をつけながらよい年末年始お迎えください。野菜がなかなかのお高い値段で売られている時期、無駄なく、おいしく食べましょう。また来月元気に会いましょう。
飛田和緒
飛田和緒(ひだかずを)
料理家。神奈川県・三浦半島に夫・娘と住みはじめてから18年になる。海辺暮らしならではの魚料理や、地元の食材を使ったシンプルな野菜レシピが人気。繰り返し作りたくなる常備菜は、幅広い層から支持されている。お弁当や朝ごはんの記録をつづったインスタグラム(@hida_kazuo)も話題。著書に『いちばんおいしい野菜の食べ方』(小社)など。
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