人気料理家・飛田和緒さん。この連載は飛田さんの飾らないお昼ごはんをのぞき見させてもらいます。使うのは20年近く住む神奈川県・三浦半島の旬の食材! さて今日はどんな「さもない」お昼が見られるのでしょうか……?
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年明け、1回目の連載、今年もどうぞよろしくお願いします。
みなさん年末年始いかがお過ごしでしたか。わが家のある海辺は、とても暖かい日が続きました。
ぽかぽか陽気のおかげで、お昼寝が気持ちよかったな。春先に咲く水仙も次々と花を咲かせて、お出かけするときにはコートにするか、ダウンにするか迷うほどでしたが、実家の長野は寒かった。塀にはつらら、池は分厚い氷におおわれていました。こたつから出られなかったし、娘は寒すぎて床暖房の上におふとんを敷いて、プラス寝袋というスタイルで寝ておりましたよ。
年明けの三浦半島はいちごブーム

そんな年末年始を過ごしていましたが、気持ちあらため、今月から地元の食材でごはん作りをスタートします。
年明けはまずいちご。近年、三浦はいちごブーム。いちご農家さんが増え、いちご狩りができるビニールハウスが次々と建てられています。年末くらいから地元のいちごが気になっておりましたので、完熟いちごを求めて、三浦のいちご農園までドライブ。しっかり熟している実をパック詰めしてくれるから、車の中が甘い香りで満たされました。味は甘いだけでなく、酸味もあって、柔らかくておいしい。というわけで、すぐに食べないと日もちしません……。うちでは大きさがそろってなくてもいいので、B品を。こんな風に食べられるのも、地元ならではですよね。
いちごサンドははさみたてが好き
まずはそのままパクパクほお張り、生クリームと合わせた
いちごサンドも作りました。いちごサンドははさみたてのパンも柔らかく、クリームもふんわりとやさしい口当たりが好きなのですが、どうしてもクリームがたれて、切り口の見た目が悪い。

以前、撮影時にはさみたてを器にのせて出しましたら、カメラマンさん困ったのでしょうね。試行錯誤して撮ってくださいました。その後、
切り口を美しくするには、ラップで包んで冷蔵庫でしっかり冷やし、クリーム落ち着かせて切る。こうすると、切り口がきれいになることを覚えましたけれど、うちで食べるなら、今でも見た目よりもはさみたてが好き。
いちごサンドと一緒にサンドイッチも作りました
そして、
いちごサンドにはバナナを入れるといっそういちごの味が引き立つような気がするのは、わたしだけかな。写真のいちごサンドにもバナナが入っているんです。切り口には出てこないように並べてかくし味的な感じで、バナナおすすめです。
断面にきれいにいちごが出るように
切り方のポイントは、切り口にいちごが出ること。切る方向を間違えないようにラップで包んだら、ペンで切る方向を書いておきます。三角に切る、四角に切る、いちごの切り口がきれいに出るようにいちごの並べ方を考えながら作ります。
ほかにも大根やはやとうりを使って料理

野菜は年末から引き続き、立派な大根がずらり。大好物のはやとうりもありました。大根は青首大根と、三浦大根の2種。青首は万能というか、どんな調理も受け入れてくれますが、三浦は水分がとても多いので、なますやふろふき大根、おでん、ぶり大根に最適です。
切ると断面から水が滴るくらい水けがあるんですよ。生のままだと辛みがあるので、甘酢に漬けたり、火を通して食べます。身の中央部分が太くなっている、形が特徴的な冬大根。最近はこのどっしりと太い三浦大根一本が使いきれないというので、小ぶりなものもあるんですが、わたし的には本来の姿のほうがみずみずしく感じます。身が緻密でしっとりと柔らかい。
今回はこの三浦大根を一本まるごと細切りにして、にんじんも合わせて、まず塩をまぶします。大きなボールたっぷりだった大根が、水けが出たら半量くらいまでシュンと少なくなりましたよ。余分な水けをかるく絞って砂糖と酢を合わせてなますに。
なますはベトナムサンドイッチ『バインミー』に
お正月には干し柿を合わせておせちとしてお重に詰めたり、手巻きずしの際につまの代わりにお刺し身とご飯と合わせてのりで巻いて食べたり。最後は
薄切りにしたきんかんと合わせて、甘辛く炒めた牛肉とパクチーといっしょにフランスパンにはさんでバインミーを作りました。
ベトナムのサンドイッチでなますをはさむのが味のポイント。肉は豚肉でも鶏肉でもいい。甘辛く味つけしてなますでさっぱりとさせるか、塩、こしょうで焼いたり、蒸した肉で、ナンプラーのたれや甘めのチリソースを組み合わせてもおいしい。フランスパンに肉やなますの味がしみてしっとりした仕上がりに。なますがあると必ず作りたくなる一品です。

薄緑の果物のようなはやとうりは千成瓜ともいわれるくらい、実をつけはじめると千ほども成る瓜なのだそうです。くせのない味で、切り口はなんとなくねっとりしているのですが、パリッとした歯ごたえがあります。
生のまま漬けものやサラダに、炒めたり、スープの具にしたりします。ネット検索すると塩をして水洗いしてアクを抜くとするレシピが多いのですが、
農家のお母さんからは皮もむかずに切って塩するだけでおいしいよと聞いていたので、これまでアクを抜くことはしてませんでした。ここではアク抜きなしのやり方で記します。
まず、皮ごとよく洗って縦半分に切って、中の種はスプーンなどでくりぬいて取り除き、食べやすい大きさの薄切りにします。塩をまぶしてかるく混ぜて10分ほどおいてしっとりしたら、黒こしょうとオリーブオイルをかけて食べました。ドレッシングであえたり、梅肉とあえたり……。
初めてはやとうりを買ったときには農家のお母さんのおはこレシピ「柿とはやとうりのサラダ」を作りました。ぬか漬けも合うんですよねー。肉や卵と炒めたり、卵とじにしたり。おみそ汁や豚汁の具にも。くせがないから扱いやすい野菜なんです。と、ここまで書いてハッとしたのは、はやとうりは千成りといいながら、最近なかなか出会えなかったのも事実。今回買えたのはとても久しぶりのことです。
都内を離れて20年、越してきたときには、秋から冬にかけてはやとうりを毎日のように食べていた記憶がありますが、そういえばここのところ直売所で見かけることが少なくなっていたような。代わりにグリーンパパイアが出回っています。農家さんも育てやすい野菜だったり、人気の野菜を積極的に作っているのでしょう。そんな変化を見逃さないよう、2025年も地元食材を探求していきたいと思います。
飛田和緒
飛田和緒(ひだかずを)
料理家。神奈川県・三浦半島に夫・娘と住みはじめてから18年になる。海辺暮らしならではの魚料理や、地元の食材を使ったシンプルな野菜レシピが人気。繰り返し作りたくなる常備菜は、幅広い層から支持されている。お弁当や朝ごはんの記録をつづったインスタグラム(@hida_kazuo)も話題。著書に『いちばんおいしい野菜の食べ方』(小社)など。
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