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飛田和緒さんの「月に1度のさもない昼ごはん」

焼くとトロトロ。新顔野菜のイタリアなす「カプリス」って知ってる?【飛田和緒さん連載】

2024.10.16

人気料理家・飛田和緒さん。この連載は飛田さんの飾らないお昼ごはんをのぞき見させてもらいます。使うのは20年近く住む神奈川県・三浦半島の旬の食材! さて今日はどんな「さもない」お昼が見られるのでしょうか……?

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やっと朝晩は秋らしい日が増えてきましたね。それでも日中は夏日なんてこともあって汗ばむ時間はまだまだ続きそう。今日もエアコンのお世話になっているわが家です。

先日都内のごはん屋さんに出かけた際に伺ったこと。旬の野菜やきのこ、果物、乾物を使ったお料理の店主のぼやき。「端境期ではありますが、本当に野菜が困ったことになっておりまして、葉ものがまったくいいものがなく、今日はきのこと果物たっぷり使いました」とのこと。

プロも苦しいほど野菜の不出来に振り回されている日々。それでもあけびの春巻きなんて珍しい味を食べさせてもらい、大満足。いちじくとマスカット、柿の白あえもおいしかったな。そんな都内の飲食店でも、よい食材の入荷待ちと聞いて、今月の地元の野菜はどうかといいますと……。

暑さに強い⁉ 空心菜と秋なすを使ってお昼ごはん

葉ものは空心菜だらけ。どこの直売所に出かけても空心菜だけは山積み。暑さに強いのでしょうか。秋なすも健在。夏の初めは苦戦していたなすでしたが、水なすや丸なすもまだまだ収穫できているようです。

最近のお気に入り「カプリス」。イタリア生まれのなすです。

そして今日手に入れたのは、最近のお気に入り、カプリスという名のなす。紫色のまだら模様で、米なすに近い大きさでふっくらずんぐりした形。イタリア生まれの品種だそうです。

加熱するととろんと柔らかく、皮も見た目よりも薄くて食べやすい。口に入れたら皮が気になるかなと想像したけど、せっかくの皮の色みなのでむかずに調理してみたら、皮が口に残ることなくペロリと食べてしまいました。今日はこのカプリスのバターしょうゆ焼きがメインディッシュ。肉も魚もないけれど、充分すぎるほどの食べごたえです。

まずカプリスは、ひらひらのがくは取って頭の部分のへたを残して縦半分に切る。そして、ひとつは皮目に、もうひとつは果肉のほうに格子状に包丁で切り目を入れる。どちらがいいのだろうかと思って皮と身にそれぞれ切り目入れてみましたが、結果はどちらでもよかったみたい。大きさのわりにすぐに火が通ったので、切り目は必要なかったかな。

米油でこんがりと両面を焼き、一瞬ふたをして蒸し焼きにしましたが、これも不要だったかも。というくらい、あっという間にとろりと柔らかくなっていました。焼き上がりにバター小さじ2くらいを加えてしょうゆをひと回し。よーくからめてでき上がり。

盛りつけてから、フライパンに残ったバターソースをゴムべらで一滴残らずすくい取ってなすにたらす。この作業が大事。せっかく加えた調味料ですから、フライパンや鍋に残さずに食します。もしソースが多めとなって塩けが強くなる場合は、無理にかけずにガラスボールに取り置いて次の料理に回す。

わが家ではチャーハンや焼きそばの味つけに使うことが多いです。そのソースには具材を焼いたり、炒めたりしておいしいうまみが入っているから捨てられません。じつは今日のバターしょうゆ、一滴残らず皿にたらしましたが、少々多かった……。フライパンに戻し、ご飯少々を入れて炒めて食べたらおいしかった。写真は完全に撮り忘れ。食べ急いだためごめんなさい。お伝えだけしておきます。

初掘りの里いもはにんにくのソテーに

朝、買い物に行ったときには、里いもはチップスの気分だったのに、だんだん気温が上がってきたので揚げものは断念。皮をむいてレンチンして串がすっと通るまで加熱してからにんにくオイルでこんがり焼きました。にんにくといっしょに食べるといっそう香ばしさと相まって、ねっとり感をより強く味わえます。

夜ごはんは里いものチヂミに

里いも正味250gを幅5mmに切り、卵1個、片栗粉大さじ2、塩ひとつまみをボールに合わせてよく混ぜ、ごま油でこんがりと焼きました。初トライでしたが、まぁまぁの出来。夫はキムチといっしょに食べたかったと言い、食べている途中にザーサイとしょうがのせん切りに黒酢とほんの少しのしょうゆ、すりごまを入れたたれを作って合わせてみましたら、これがヒット。たれのほうが夫好みだったようで、別の料理にもザーサイだれをからめていました。今度はキムチがあるときにも、里いもチヂミ作ってみます。

新米に空心菜のおひたしと豆を添えて

空心菜のおひたしは外食で覚えた味。塩ゆでして氷水にとって色止めして、食べやすく切ってからだししょうゆに漬けました。空心菜は茎の部分が空洞になっているので、その中にたまった水分をしっかりときらないとおひたしの味が薄まるなと感じました。茎はシャキシャキ、葉は切り口からやや粘りが出ておいしい。炒めものにすることが多かった空心菜ですが、これからはおひたしが続きそうです。

ご飯は新米の炊きたてを。少し多めに炊いて、せっせと冷凍ご飯用に詰めて、残りをプレートに盛りつけ、最近気に入っているしょうゆ豆を添えて。夏に長野の実家に帰省した際に、母がもぎたてきゅうりに添えて出してくれたのがしょうゆ豆とマヨネーズ、みそ、梅肉を合わせたディップ。

豆がゴロゴロと入っていておいしくって、しょうゆ豆を作ろうか、市販でおいしいのがあったらいいのになともやもやっとしていたときにお土産にいただいたのが豆のしょうゆ麹漬け。麹入りだったので、みそも梅肉も入れずにマヨネーズと合わせてゆで豚にのせて食べたら、これが家族に大好評。それからは豆のしょうゆ麹漬けはわが家の常備菜となりました。黒豆をゆでていつか手作りしてみたい。今は秋の保存食作りに忙しいから、一段落して冬になったら作ってみます。おいしくできたらまたお知らせしますね。

この時期の保存食も少しご紹介

保存食は栗の渋皮煮、新しょうがの甘酢漬け、これからイクラのしょうゆ漬けも。

新しょうがは地元産を初めて購入。ゴロゴロッとかたまりで漬けてみました。皮は少々ゴワッと厚めだったので、むいてさっと熱湯にくぐらせてから、甘酢とともにびん詰に。
むいた皮がもったいないので、残り少なくなったはちみつのびんに入れてみましたよ。堅かったはちみつがだんだんとしょうがの水分でゆるんできました。寒くなってきたら、はちみつしょうがをお湯割りにして飲みたいと思います。

今月も野菜が少なく、どんな昼ごはんになるか手探りでしたが、おいしくできて、さらに新たなレシピ誕生になるかともいう予感を感じる挑戦もできました。

青菜が早く育ってくれることを願って。そして今年こそここで地元産の秋の枝豆をご紹介したかったのに、タイミング合わず……。いつかみなさんにご紹介できますように。

飛田和緒


飛田和緒(ひだかずを)

料理家。神奈川県・三浦半島に夫・娘と住みはじめてから18年になる。海辺暮らしならではの魚料理や、地元の食材を使ったシンプルな野菜レシピが人気。繰り返し作りたくなる常備菜は、幅広い層から支持されている。お弁当や朝ごはんの記録をつづったインスタグラム(@hida_kazuo)も話題。著書に『いちばんおいしい野菜の食べ方』(小社)など。

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文・写真/飛田和緒 撮影/大森忠明(バナー、プロフィール画像)

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