慣れない場所だし、言葉もわからないし。いっぱいいっぱいになって、スーパーで泣きました(笑)
――苦手な料理で、なおかつそれをスペインでやらなければいけないというのは、大変だったと思うんです。最初のころ、苦労したのは言葉でした。スーパーに行くとスペイン語表記しかなくて、まったくわからない状態だったんです。
話そうと思っても、英語じゃなくてスペイン語だけ。スペイン語って巻き舌が多いし、早口だから聞き取りもできなくて。たとえば、お肉を買うにも、どの部位にするか、どうやって切ってもらうか、全部スペイン語でのやりとりになるんです。
ただでさえ、料理ができないのに、難易度が高すぎて、何を作ったらいいのかわからなくなっちゃいました。英語でなんとかなるかもと思ってた自分が悪いんですけど。
――うわー、それは大変ですね。日本のように切られた肉がパックに入っていて選べればいいですけど……。そうなんです。それで、ちょっとでも作るもののヒントにしたいと思って、夫に「何食べたい?」ってきいたら「なんでもいいよ」って。料理ができない私への配慮だったと思うんです。何を作れるかもわからないだろうし。でも、当時の私は、試されている気がしてしまって。
何をどう買ったらいいかもわからない、何を作ったらいいかも思いつかない。慣れない場所だし、言葉もわからないし、いっぱいいっぱいになってしまって。スーパーで泣きました(笑)。
――不安なことが重なってしまったんですね。選手の食事というプレッシャーも感じていたかもしれないですし。恥ずかしいことなんですけどね。でも、そこで感情を出せたことがよかったんだなと思っていて。気が楽になったんです。家族なんだから、恥ずかしいことやダメな部分を見せてもいいんだ、と。
それ以来「こんなもの作ってみようか?」「こんな料理はどう?」と相談しながらできるようになったので、ダメな自分を早くに解放できてよかったなと思っています。
――味方がいてくれるというのは大きいと思いますし、そもそも真野さん自身が、とても努力家なんだろうなと感じます。なんだかんだ、困難を楽しめるタイプなのかもしれません。試されているなと感じると、がんばろうと思える。隣にもっと努力している人がいるからできるんだと思います。
それに、極端な話ですが、日本と違うといっても、人が住んでいて生活しているんだから、私にだってできるはずだと思って。私だって、ここの食材を買って、和食を作ってやるぞ! って。
今では、巻き舌でガンガン話しかけられても「ちょっと待って」って言えるようになりましたし、我を通せるようになりました。
薄切り肉が欲しいときに「これくらい?」ってきかれても「もっと薄く!」って粘っています(笑)。よく行くスーパーでは、もう慣れていて「薄切りでしょ?」っておじさんに言われるくらい認知されるようになりました。お魚も、頭はいるか、皮は取るかときいてくれるからありがたいんですよね。
お肉もお魚も新鮮で、この子が元気そうだなって自分の目で見て選んで、やりとりして買えるのでいいなぁと思っています。
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真野恵里菜(まの・えりな)
1991年4月11日生まれ、神奈川県出身。B型。2006年、ハロー!プロジェクトのメンバーに加入し、アイドル、歌手、俳優として活動。13年のハロー!プロジェクト卒業後は、主に俳優として活躍。18年プロサッカー選手・柴崎岳との結婚を発表し、同年、スペインに拠点を移す。