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オレンジページ☆デイリー

2019.12.27

【編集マツコの 週末には、映画を。Vol.40】「冬時間のパリ」


こんにちは。ふだんは雑誌『オレンジページ』で料理ページを担当している編集マツコです。
皆様クリスマスは楽しく過ごされましたでしょうか。マツコはフランス映画を見ていました。きっと映画館がすいているだろうと毎年目論むのですが、けっこう人がいるんですよね。
ちなみに元旦も意外に混んでます、映画館。

見たフランス映画というのは『冬時間のパリ』。冬のパリっていいですよねー(冬に行ったことないけど)。
デジタル化の波を免れない出版業界と、停滞した関係に迷える2組の夫婦。社会と個人の転換期を、フランスらしいエスプリを交えて対比させた、大人の映画です。
原題は『DOUBLES VIES』(二重生活)ですが、日常的な風景の中でのわちゃわちゃとした人間模様とうまく合ったこの邦題、とってもいいなと思います。


「読者も本も減ったけど、気苦労は増えた」「書店も取次も印刷会社も消えて、残るは編集者と作家」「名文かどうかは手書きもデジタルも書き手次第」etc.
わ~~! 自分も映画の中に入り込んで議論に加わりたいくらい、「出版業界あるある」な話題がたくさん!
本が売れなくなったと言われて久しく(特に雑誌……涙)、かと言って電子書籍にすれば解決というわけでもないし、売れる本はやっぱり売れる。各出版社、正解がない中でもがいているのは世界共通なんですね。

アラン(ギョーム・カネ)は出版社に勤める敏腕編集者。手がけているのは主に小説のようで、押し寄せる電子化の波になんとか順応しようとしています。
彼が担当している作家の1人がレオナール(ヴァンサン・マケーニュ)。不倫をテーマにした新作の構想をアランに話すも、彼は気に入らず。
対して、女優として活躍するアランの妻のセレナ(ジュリエット・ビノシュ)はレオナールのアイディアに好意的で、2人の意見はかみ合いません。関係は良好とは言えず、アランは部下と不倫中。
この部下というのがデジタル推進部?みたいな部署の人で、アランと彼女の意見はかなり食い違っているんだけど、恋愛は別っていうのがいかにもフランス風?
セレナはセレナで、なんとレオナールとダブル不倫中。政治家秘書であるレオナールの妻ヴァレリー(ノラ・ハムザウィ)だけが、複雑な四角(五角?)関係の中でピュアな存在です。


この4人の配役がとにかく絶妙なんです。インテリでプライドが高く、自分にも厳しいアラン、社会的な成功を収めながらもどこか自分の生活に納得のいっていないセレナ。自分勝手でその自覚がなく、それでいて人を惹きつけるところのあるレオナール、優秀な秘書としての一面とは裏腹に、夫婦関係では夫に翻弄されるヴァレリー。
4人の中のそれぞれの人間関係も面白いし、この中の誰に一番共感できるかで見方も変わりそうです。
自分は誰だろう……と考えてみたところ、編集者のアランが一番近いかとも思ったけど、こういうちょっと俺様なタイプには共感できず。レオナールほど自由人ではないし、セレナは4人の中で一番掴みどころがなくて何を考えているのかよく分かりませんでした。
ハッ。一番共感できるのヴァレリーかも。真面目でどこか空回り感があるところや、正論で対抗してしまうところ、四角関係の中で1人だけ巻き込まれ事故なところetc.(笑)
ヴァレリー役のノラ・ハムザウィさん、少しコミカルな感じの顔立ちもいいんですよねー。


それにしてもよくしゃべりますねえ、フランス人。「フランス人は議論好き」、こういう「日本人は真面目」的な一般論はあまり好きじゃないですが、それでもこの映画を見ると確かに納得です。
本のデジタル化の話題でも、夫婦間の会話でも、お互いにぼんぼん言いたいことを言って「あらら、ケンカ?」とこっちが冷や冷やし出したところで「食べに行くか?」「吸いに行かない?」と、何事もなかったかのようにサラリ。
その中でもやっぱり性格の違いというのはあって、激しい人がいて、大人しい人がいて、だけどみんな自分の意見をそれぞれの流儀で表明するのが面白いですね。

2組の夫婦の関係が入り乱れる設定は、瑛太さんや尾野真千子さんが主演した数年前の人気ドラマ『最高の離婚』を思い出します。このドラマ大好きだったんですけど、やっぱり4人のキャラクターと役者さんのハマり具合がすごかったんですよね。
設定は違うけど、今回の映画の4人のキャラクターと通ずるところがある気がします。


パートナーとの関係に迷いを感じている男女4人。どう変わっていけばいいのか、それとも変わらない方がいいのか、それぞれが模索する姿が今の出版業界と重なる展開が秀逸なのです。この映画、同僚にも見せたい(笑)。アランの不倫相手でデジタル化担当のロール(クリスタ・テレ)も、実はクラシックな文学への敬意を持ち合わせていて、そういう二面性が面白い。

大きな事件はまったく起こらず、きれいな「起承転結」という感じでもありません。「転」が多かったり、「結」と思ったら実は「起」だったり、でもそれが日常なんだよね~としみじみ共感。どこまでも人間くさい4人の会話をずっと聞いていたい、そんな映画です。


「冬時間のパリ」  Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー
©CG CINEMA / ARTE FRANCE CINEMA / VORTEX SUTRA / PLAYTIME

【編集マツコの 週末には、映画を。】
年間150本以上を観賞する映画好きの料理編集者が、おすすめの映画を毎週1本紹介します。
文/編集部・小松正和

次回1/3(金)は「パラサイト 半地下の家族」です。お楽しみに!

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