超高齢社会を迎え、「人生100年時代」といわれる現代。だからこそ、考えだしたら不安でたまらない、家族や自分の老後の生活。各分野のスペシャリストが、そんなあなたの不安にそっと寄り添います。 今回のお悩み/健康 年をとるのが怖くてしかたありません!ずっとこの喪失感の中で生きていかなければいけないの? 50歳を過ぎてから、明らかに肌が衰えてきたのを実感。肌だけでなく、体力も気力もすべてが格段に落ちてきました。気持ちは若いつもりでも、ふと客観的に自分を見ると悲しくなります。この「若さをどんどん失っていく喪失感」をこれからずっと感じていかなければいけないのでしょうか。60代、70代のかたはどうやってこの喪失感を乗り越えているのでしょうか? 年齢を重ねるにつれ、徐々に受け入れていくものなのでしょうか?(52歳・女性) ブルボンヌさんの回答 私もあなたも、「若さと美貌を争う競技」からは潔く引退しましょ。 お悩み回答者 ブルボンヌさん このかたと私、52歳という年齢も、感じていることも、完全にシンクロしております。40代までは「まだまだいけるかも〜」なんて思っていても、50歳を過ぎてからの衰えは、だれにも止められない(笑)。もうね、細胞レベルの問題なのよ。スーパーの野菜や鮮魚を見たって、それは一目瞭然。生命体である以上、細胞の老化からは逃れられないの。だから私も含めて、若い人と同じ土俵で戦おうとすること自体が無理だって話。自分のランキングがどんどん下がっていくような競技にチャレンジしつづけても、自尊心がそこなわれるだけよ。昭和の大横綱・千代の富士だって、「体力の限界!」って言って土俵を去ったの。「若さと美貌を争う競技」からは、スパッと引退して、別の競技に目を向けましょうよ。たとえば、俳優のキャメロン・ディアス※1はこう言ってる。「私は年齢を重ねた自分を愛するわ。経験のない若いときよりも、今のほうがずっと価値がある人間になったと思えるから」。そう、今の私たちにあるのは、経験値や人脈、これまで積み重ねてきたセンス。長く生きたからこそ有利な競技に乗り換えればいいのよ!しかも今の50代は、ジェンダーバイアス※2によって、「女性は若くてきれいなほうがいい」っていう価値観を、知らず知らずのうちに刷り込まれてきた世代。別の競技に乗り換えると同時に、この呪いからも、みずからを解き放ってあげましょうね。 ※1 キャメロン・ディアス 1972年、アメリカ・サンディエゴ生まれ。映画「マスク」「メリーに首ったけ」「チャーリーズ・エンジェル」シリーズなどのヒット作に次々と出演。ハリウッドを代表する人気俳優に。2018年に俳優業の引退を表明したが、22年に再び活動を再開。 ※2 キーワード:ジェンダーバイアス 「男らしさ」「女らしさ」といった性別から連想されるような固定的な価値観や、それに基づいた偏見や差別のことをさす。性別によって役割や行動を期待されたり、容姿を評価されたりと、社会のいたるところにジェンダーバイアスは存在している。 ブルボンヌさん 女装パフォーマー。ジェンダーや社会問題を扱う番組への出演やラジオパーソナリティ、LGBTQや男女共同参画に関する講演活動など多方面で活躍。新宿2丁目と渋谷パルコのミックスバー「Campy! bar」をプロデュース。Podcast番組「ジョソラジ」を配信中。 笠井信輔さんの回答を見る「老後の4K」のお悩みをすべて見る(『オレンジページ』2023年7月18日増刊号より)