超高齢社会を迎え、「人生100年時代」といわれる現代。だからこそ、考えだしたら不安でたまらない、家族や自分の老後の生活。各分野のスペシャリストが、そんなあなたの不安にそっと寄り添います。 今回のお悩み/健康 年をとるのが怖くてしかたありません!ずっとこの喪失感の中で生きていかなければいけないの? 50歳を過ぎてから、明らかに肌が衰えてきたのを実感。肌だけでなく、体力も気力もすべてが格段に落ちてきました。気持ちは若いつもりでも、ふと客観的に自分を見ると悲しくなります。この「若さをどんどん失っていく喪失感」をこれからずっと感じていかなければいけないのでしょうか。60代、70代のかたはどうやってこの喪失感を乗り越えているのでしょうか? 年齢を重ねるにつれ、徐々に受け入れていくものなのでしょうか?(52歳・女性) 笠井信輔さんの回答 「衰え」というマイナスをプラスに変えていく、発想の転換が必要です。 お悩み回答者 笠井信輔さん まず私が少しだけ引っかかったのが、「喪失感」という言葉。喪失感というのは、人との離別や死別、家や仕事といった、自分にとって大事なものを失ったときに感じるものであって、衰えや老化のように、だれにでも徐々に訪れるものは、「喪失感」とはいわないんじゃないかなと。もちろん「若さ」を失ったの は確かですが、本当の喪失感というのは、もっとつらく、きついものだと思うんですよね。もしあなたが容姿の衰えや老化によって、何かを失ったり、去っていく人がいたとしたら、それはしかたのないことです。「老い」は、だれにも避けられません。でもそれは、マイナスのことばかりなのでしょうか。私もがんになって、仕事もできない、体も自由に動かないとなったとき、人生をマイナス=〈引き算〉で考えていました。でも一方で、がんになったからこそ結べた縁がたくさんあった。たくさんのかたに応援していただいたり、家族との絆が深まったり、数えきれないほどのプラス=〈足し算〉があったんです。本にも書いたのですが、これが私がつねづね口にしている「引き算の縁と足し算の縁」。年をとるということは、なにかしらのマイナス=引き算とつきあっていくということ。でもその一方で、年齢を重ねたからこそ出会える人、出来事のなかに、〈足し算の縁〉が必ずあるはずです。これからは人生のスイッチをプラスに切り替えて、〈足し算〉を探しながら行動してみてください! 笠井信輔さん フリーアナウンサー。1963年、東京都生まれ。フジテレビのアナウンサーとして「とくダネ!」などの情報番組を担当。2019年、フリーアナウンサーに転身直後に「悪性リンパ腫」が判明。現在は治療を終え、仕事に復帰している。近著は『生きる力 引き算の縁と足し算の縁』(KADOKAWA)。 「老後の4K」のお悩みをすべて見る(『オレンジページ』2023年7月18日増刊号より)