誰にだってある、人には見せない〈ナイショごはん〉。映えも流行りも、お行儀だって気にしない、そんな名もなきごはんにこそ、作り手の人となりがにじむもの。料理家や著名人など、気になるあの人の〈秘密のごはん〉をこっそり聞いちゃいます。 サルボ恭子さんの〈のりまみれバターごはん〉 「じつは、ご飯派なんです!」 洗練されていながら、家庭料理らしいぬくもりのあるレシピが人気のサルボ恭子さん。老舗旅館に生まれ、パリ有数のホテルの厨房で働いていた経験もあるサルボさんのキッチンは、美しく整えられていて心地よい空気が流れています。 そんなサルボさんがプライベートで食べるごはんは、きっとおしゃれなものにちがいない!と、お気に入りの味をたずねてみたところ、なんとも意外な答えが返ってきました。 メガネうっちゃり。つかの間のほっとするひととき 料理上手な祖母からもらった「おいしい記憶」 「とにかくのりが大好き! あの香りと食感がたまらないですね。実家の食卓には、食べやすく切ったのりが入っている保存容器がいつも置いてありました。そのころまだ日本ではあまり知られていなかった韓国のりを祖母が気に入って、日本の焼きのりで同じような味を作ってくれていたんです。ちょうどいいかげんにあぶって、ごま油を塗って、ほんのり塩をきかせて。初めて食べたときは、なんておいしいんだろう! と感激しました」料理上手な祖母の影響を強く受けたというサルボさん。たくさんおいしいものを教わってきたなかでも、のりの記憶は特別です。 缶には、いつもさまざまなのりがぎっしり! 「おいしいのりだったら何でもよくて、メーカーにもこだわりはありません。青さもいいですよね。ご飯に巻いて食べるのはめんどうだから、ただ、ちぎってのせるんです。バターをご飯にのせて、のりには、おしょうゆをちょっとかけて食べます。もし韓国のりだったら、そのままご飯にのせたり、しらすを合わせたり。煎茶や番茶をかけて、お茶漬けにしてもおいしいんですよ」 「バターはうるおい担当です(笑)」 塩分調整がしやすいように、食塩不使用のバターを使うのがサルボさん流。「冷凍ご飯をレンチンして、茶碗に盛るとのりがあふれちゃうので(笑)、浅鉢に」そして、いよいよのりの出番! 思いのままに、のりをガサッと。 袋から束でのりを出し、そのなかから何枚か選ぶのかと思ったら……。 のりを豪快にちぎって、ご飯にどっさりオン! 「もはやのりまみれ。」 先生〜! もはや、ご飯が見えません!「ほぼのり(笑)。これでも、撮影用に少しご飯が見えるようにしたんですけどね。本当はご飯が隠れるくらい、たっぷりと。これくらいの小さなぜいたくならいいかなって」 「のり&バターと、しょうゆの相性は言わずもがな」 「ビンテージの和の浅鉢に盛るのが定番」 サルボ恭子さんの『のりまみれバターご飯』のレシピ 材料(1人分) 焼きのり……好きなだけ!バター(あれば食塩不使用)……5〜10g温かいご飯……体調に合わせた適量しょうゆ……好みで少々作り方(1)ご飯を器に盛る。ふだんのご飯茶碗より、口径が大きめの浅鉢などがおすすめ。(2)ご飯にバターをのせ、ご飯が見えなくなるくらいまでのりをちぎりながらのせる。(3)しょうゆをたら〜りかけて、好みの加減に全体を混ぜながら、ゆったりとした気持ちで食べる。「でも、テーブルにゆっくり座る時間もなくて、仕事の合間にササッと、キッチンの調理台で食べちゃうこともあります」小腹がすいてしまった深夜や、料理教室のあとで何か食べたいけれど、自分で作った料理には、もうおなかいっぱいのとき。サルボさんの気持ちとおなかをやさしく満たしてくれるのは、のりをたっぷりのせた白いご飯と、おいしいものを教えてくれた祖母との幸せな記憶なのでした。 サルボ恭子料理家。フランス語教室を主宰する夫とシェアをするアトリエで料理教室やイベントを開催するほか、雑誌や書籍、テレビなどで幅広く活躍中。『ストウブでフランス家庭料理の極上煮込み』(Gakken)など著書多数。この春、オンラインとリアルを融合させた待望のサロン「 LES TROiS (レトォア)」をスタート予定。サルボさんのInstagramを要チェック!Instagram:@kyokosalbot