『オレンジページ』でおなじみの料理家さんにご登場いただき、これまでに発表した中でも「我ながらこれは傑作!」、「これはプライベートでもよく作る」というご自慢のレシピについて語っていただくこの企画。
ワタナベマキさんの3回目は、『ツァンイントゥ麺』。麺好き、台湾好きなマキさんならではの、ユニークな一品です。さらに、話は他のあえ麺のことにも広がっていきました。
前回のお話:なすは揚げてこそ!ワタナベマキさんちの常備菜『揚げなすのじゃこがらめ』のレシピ
今回の傑作レシピ
『ツァンイントゥ麺』
台湾で覚えた料理をアレンジ
麺と具材を手早くあえればでき上がり! ボリューム感があって手軽、そしてなんといってもおいしいあえ麺は、暑い時期のランチに大活躍するメニューです。
そんなあえ麺のレシピを、マキさんにたっぷりとご紹介いただいたのは、2022年6月発売『オレンジページCooking』でのこと。今も編集部で人気がある『ツァンイントゥ麺』は、当時よく訪れていたという台湾の料理がもとになっています。
「
ツァンイントゥは台湾の定番おかずで、
ひき肉の豆豉炒めのこと。
ひき肉+豆豉がベースで、だいたい
なにかしらの青い野菜が入っています。このときはさやいんげんを入れていますが、ししとうやピーマンでもおいしいですよ」
とマキさん。台湾ではご飯といっしょに食べられることが多いですが、あるとき、麺にのせてみたらこれがぴったりだったそう。
「麺は
稲庭うどんや
半田そうめんなど、ちょっと太めのものがおすすめ。
ひき肉がからみやすくてよく合うんです」
2013年ごろからコロナ禍の前まで、毎年のように台湾に足を運んでいたというマキさん。
「50回以上も台湾に行ったことがある友達がいて、彼女といっしょに行くようになったのがハマったきっかけ。そうして覚えた台湾料理は家でササッと作りやすいものが多くて、今でもツァンイントゥをはじめ、干し大根の卵焼き、サンラータン、白うりのスープ(台湾ってスープがおいしい!)など、よく作っています」
いつものおかずをあえ麺に
「いつも食べているおかずを麺にのせてみたらおいしかった!」というひらめきから生まれたあえ麺は、ほかにも。『いかと青ねぎの黒酢あえ麺』もそのひとつです。
「いかがおいしい時期になるとよく作るおかずを、冷やむぎに合わせてみました。あつあつの黒酢だれをジャッとかけて、よーく混ぜて。粗びき粉唐辛子をふりかけて食べると、暑い日でも箸がすすみます」
『いかと青ねぎの黒酢あえ麺』
肉のおかずをのせるあえ麺は、問答無用で気分が上がる一品。
「たとえば豚しゃぶとか、家族はやっぱり好きですね。この特集の『カリカリピーナッツだれの山椒そば』では、たれに粗く刻んだピーナッツを加えて、カリカリッとした食感をアクセントにしました。よく混ぜて口に入れると、パクチーや山椒、黒酢がふわーっと香ります」
『カリカリピーナッツだれの山椒そば』
マキさん流、あえ麺のお楽しみ
麺と具をあえたら、そのまま食べるだけでおいしいのはもちろんですが、途中で味変をするのも「マキさん流」のお楽しみ。たとえばツァンイントゥ麺では、上にのせた目玉焼きを割って麺にからめたり、わきに添えた豆板醤を混ぜて辛みをプラスしたり。
「味変の方法は、メニューによっていろいろ。かんきつを絞ったり、お酢をかけることもよくあります。
特に黒酢は大好きなので、うっかりするとつい登場回数が多めに(笑)。いずれにしても、食べ進めながら味を変えられるのは、あえ麺ならではのおいしさですね」
そうめん、冷やむぎ、中華麺、そば、うどん……。いろいろな麺で作れる懐の広さも、あえ麺の大きな魅力です。
「どのあえ麺にも共通ですが、おいしく仕上げるための重要ポイントは、麺の水けや具の汁けをよくきること。このひと手間で、味がぼやけるのを防ぐことができますよ」
おいしくて手間いらずで、味変も楽しいあえ麺。この夏、ぜひ試してみて!
ワタナベ マキさん
グラフィックデザイナーを経て料理家に。旬の素材を大切にした季節感のある料理や、アイディアあふれる保存食が人気。高校3年生の息子の母でもある。著書に『日本の一年、節目の一皿:二十四節気七十二候+行事いろいろ-食で季節を愛でる-』(小学館)ほか。