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飛田和緒さんの「月に1度のさもない昼ごはん」

【飛田和緒さんのベトナム旅】生春巻きの皮で包む⁉『バインセオ風卵焼き』現地の食べ方

飛田和緒さんの「月に1度のさもない昼ごはん」

人気料理家・飛田和緒さん。この連載は飛田さんの飾らないお昼ごはんをのぞき見させてもらいます。使うのは20年近く住む神奈川県・三浦半島の旬の食材! さて今日はどんな「さもない」お昼が見られるのでしょうか……?

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チャオ!
今月はベトナムからお届けします。
昨年の今ごろもドイツから市場の様子などお伝えしましたが、今回はベトナム・ハノイ滞在中に作った昼ごはんを記します。

ベトナムの旅は今回が初めて。何度も行くチャンスがあったのに、なぜか直前になって行き先変更になったり、いっしょに行く友人が具合が悪くなったりと、機会を逃すことがあったものだから、もうベトナムとは縁がないと思っていたくらい。それが今回数日だけですが、滞在することができて、ずっともやもやとしていたわだかまりのようなものがすっと消えて、いい旅となりました。

雨期真っただ中のベトナム・ハノイで、さもない昼ごはん

ただですね、ベトナムは雨期真っただ中、日本同様暑さも湿度も高くて、出歩くには厳しい状況。ホテル選びをハノイをよく知るかたにお願いしたら、キッチンつき、プールつきのところを予約してくれたので、なんで??? リゾートではないのに、プールはいらないなーなんて思っていたところ、これが大正解。

暑くなる前に市場などのある街を歩き、一度ホテルへ戻ってシャワー、洗濯機に汗だくになった服を放り込む。ホテル近くで昼ごはんを食べたり、甘いものを食べ、日が少し落ち着いた夕方近くにまた出かけ、また汗だくで帰りプールへ飛び込む。これであつあつになった体をクールダウン。

そんな数日を過ごしていました。雨は一日じゅう降っていることはなく、ときどき雷とともにザーッとスコール。激しく降りますが、2、3時間で上がることを繰り返してましたので、雨のときにはホテルか、スーパーめぐりで過ごしていました。

はやとうり、空心菜、パクチー、ライム……新鮮な野菜や果物に大興奮

お目当ての市場は雨期だからかかなりにおいがきつくて、加えてエアコンのききぐあいが微妙で人がたくさん集まる市場はもうサウナのよう。

外の露天市場は雨があるとサーッと片づけてしまうので、なかなか買い物できず、写真を撮ったりもままならずでしたが、野菜はうり科のきゅうりやはやとうり、名前の調べがつきませんでしたが、うりらしきものが何種類もありました。葉野菜は空芯菜やレタス類、パクチーやミント類、どくだみ、しそなどの香草はどこの市場にも山のように積まれていましたね。

そしてどの野菜もつややかで、葉ものはピンと葉先が立っていました。ライムやシークワーサーみたいなかんきつ、そしてライチー、竜眼、ランブータンなどのフルーツは日本ではまぁまぁよいお値段のものがこちらでは100円あればたっぷり買える。お値段だけではないけれど、新鮮な野菜やフルーツの数々に興奮しっぱなし。やみくもに買いたい気持ちを抑えるのがきつかった。

カードが使えないところも多く、最初から最後までベトナム通貨のドンに慣れなかったなー。今のレートでいうと、日本円の100円が20000ドンくらい。ゼロが多くなると慌ててしまい、お支払いに時間がかかりましたねー。露天で果物や野菜を売るお母さんたちにはメモに書いてもらったりしてお世話になりました。長い滞在だったなら、もっと買い物が楽しめたなーと次なるベトナム旅に期待をしています。

外食で気に入ったのは、米と豆腐

米は長粒種インディカ米、粘りがなく、米の粒がパラパラとほぐれます。雑穀米などもあって、バリエーション豊か。主食が米だけあって、米を売っている市場のスペースも広かったし、スーパーでも何種類もの米が売られていました

こちらはスーパーに並んでいた米粉の麺、フォー。

翻訳機でうまく訳せなかったけど、日本と同じように種類や産地が違うものが並んでいたのだと思います。そのインディカ米で作る炒めご飯が絶品でした。油をまとうと一粒一粒がキラキラとコーティングされて味がしっかりとなじんでいました。それからもち米もとてもおいしかった。おこわ専門店で、とうもろこし入りのおこわと、緑豆ペーストがのったターメリック入りの黄色いおこわにそれぞれミックスディッシュ(蒸し鶏や煮豚や揚げたゆで卵など)をのせてもらって食べました。

どのおかずとも相性がよくて、きゅうりのようなズッキーニのような緑の野菜の甘酢漬けを箸休め?にしながらいっきに食べてしまったほど、柔らかくて、しっとりしていて、でも粒感のあるもち米が印象に強く残っています。

それから豆腐。市場にもスーパーにも、露天の野菜を売っているところにも必ず豆腐と豆乳がありました。レストランではその豆腐がこんがりと揚げ焼きされて出てきました。スイートチリソースのような甘辛いたれにつけたり、揚げたてにねぎとしょうがのソースがたっぷりとかけてあったり、おかずの盛り合わせにも必ず揚げ豆腐がついてきましたね。売られていた豆腐は木綿豆腐をさらに水きりしたような形と食感。豆らしさが残っていて、味わいがありました。

お昼はホテルのキッチンで「バインセオ風卵焼き」

外食で刺激を受けて最終日は雨も降っていたこともあって、お出かけせずに、スーパーで調達した野菜で簡単なおかずを作って昼飲み。まずはバインセオ風卵焼き。バインセオは粉にターメリックを混ぜて水で溶いたものをクレープのように薄焼きにして、野菜や肉をはさんで食べるものですが、あまりに卵の入ったかごがかわいくて買ってしまったものですから、卵を薄く焼いてバインセオ風にしてみました。


粗びきの豚ひき肉に塩とニョクマム(ベトナム魚醤)で下味をつけて油で炒めていったん取り出し、卵液をいっきに流し込んでフライパンいっぱいに広がるようにくるくると回します。端がフライパンからはがれてくるほど焼けてきたら、真ん中に炒めた肉を戻し、小口切りのねぎを合わせてパタリと半分に折り返して皿に盛りつけました。


つけ合わせはベトナムのしそ。本当はもっと香草を合わせたかったのですが、夫が苦手なのでしそでがまん。たれはニョクマム、砂糖(コーヒーシュガー)、水、唐辛子、シークワーサーのようなかんきつをたっぷりと絞りました。レストランで隣のテーブルのかたが頼んでいたバインセオは、お客さまの目の前ではさみでカットされて、もどしていない薄-い生春巻きの皮にのせ、レタスとパクチーをたっぷりと合わせ、たれをつけながらめしあがっていましたので、わが夫婦もそれにならって、薄皮にのせ、しそをのせ、たれをつけながら食べました。

最初は皮が乾燥していますが、すぐに野菜の水分や卵の熱でしっとりしてきます。包むと食べやすいし、野菜をたっぷり食べられますね。皮はかなり薄く、薄紙のよう、もどさずとも柔軟でしたので、包むにはもってこい。きっと日本で手に入るのでしょうが、この皮は買って帰りました。

豆腐は揚げ焼きに

豆腐は水きりせずに、ペーパーで拭くだけにし、片栗粉をつけて揚げ焼きに。その際レモングラスをいっしょに揚げたら、風味がつくかしらと思いトライしてみましたが、こんがりしすぎてレモングラスの風味ではなく、香ばしさだけとなりました。片栗粉はベトナムの前に滞在していたドイツで自炊生活だったもので、その残りを使用。パラリと塩をふって、あつあつをほおばりました。白ワインがすすむすすむ。

はやとうりは薄切りにして塩をしてしばらくおいてしっとりしたら水けをきり、ライムをたっぷり絞って唐辛子と黒こしょうをふって浅漬けに。パリパリ食べると、ほのかにライムの香りがはじけてこれもまた心地よいおつまみになりました。

ベトナム最後の夜は、涼しいホテルの部屋で自炊

昼飲みしすぎて外食に行くのがめんどうとなって、夜も残り食材で自炊。もやしとはやとうりのニョクマム炒め、豆腐と卵とねぎの炒めものを作って、ベトナム最後の夜は涼しいホテルの部屋でのんびりと過ごしました。

下調べもせずに出かけてしまったものですから、ファーストベトナムはとにかくガイドブックとにらめっこ。これもまたよし。もっと遠い国と思っていたベトナムがとても近く感じました。また出かけたい。今度は雨期をはずしてね。

最後にお知らせ。
2年間続けさせていただきましたこの連載。次回で最後となります。
締めくくりは何を食べましょう。わたしも楽しみにしています。

7月 海辺の家より飛田和緒


飛田和緒(ひだかずを)

料理家。神奈川県・三浦半島に夫・娘と住みはじめてから18年になる。海辺暮らしならではの魚料理や、地元の食材を使ったシンプルな野菜レシピが人気。繰り返し作りたくなる常備菜は、幅広い層から支持されている。お弁当や朝ごはんの記録をつづったインスタグラム(@hida_kazuo)も話題。著書に『いちばんおいしい野菜の食べ方』(小社)など。

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文・写真/飛田和緒 撮影/大森忠明(バナー、プロフィール画像)