お客さんの悩みや気持ちに寄り添う本を、ちょっと世話焼きな書店員たちが心をこめて選書いたします。どうか素敵な本との出会いがありますように。
無気力・モチベーション低下に『やる気が出る本』ベスト6/書店員おすすめ!

今月のお客様のご依頼は……
何をするにも無気力ぎみですが、新しい一年は変わりたい。
「私もがんばろう! 」と猛烈にやる気がわく本を教えてください。
今回の選書担当

書店員芸人 カモシダせぶんさん
芸人活動と並行し、2つの書店に勤める現役書店員。9 月19日には初小説『探偵はパシられる』(PHP研究所)発売予定。
公式X:@kamo_books

「いか文庫」店主 粕川ゆきさん
書店勤務のかたわら、店舗も商品もない「エア本屋」・いか文庫を発足。リアル書店での選書やイベントを通じ、本との出会いを提供している。
紹介する本 一覧
書店員芸人 カモシダせぶんさん
「いか文庫」店主 粕川ゆきさん
書店員芸人 カモシダせぶんさん
おすすめ3選
ネガティブな気持ちも原動力に変える!

天才はあきらめた/
著:山里亮太 朝日文庫 682円
あなたのやる気が出ないのは「だれかのせい」だったりしますか? やる気を出してもどうせだれかに何か言われる、ほかの人のほうが評価される……そんな気持ちになっているなら、ぜひこのエッセイを読んでほしいです。冒頭にはいきなり「自分を『頑張れなくさせるもの』を振り切って、全力で走れ!」という言葉が出てきます。若手時代の山里さんは、ものすごく理不尽な言葉を周囲から何度も浴びせられたそう。普通なら傷つき動けなくなるところを、絶対に復讐してやる! というエネルギーに変えて、今の輝かしいポジションにたどり着いたんです。ポジティブな感情だけでなくネガティブな感情
も、やる気を引き出してくれるんだと必ず思える一冊。まわりを見返しましょう。
お笑いコンビ南海キャンディーズ・山里亮太のエッセイ。ねたみ、そねみ、恨み、負の感情をもガソリンにして突き進んできた、地獄のような努力の日々をつづる。
眠ったままのやる気に「ンダァァァーッ」!

武士道シックスティーン/
著:誉田哲也 文春文庫 836円
やる気を出すのは年々おっくうになるものだなぁと、近ごろ思います。あなたのやる気も心のたんすの奥深くにしまわれているのではないでしょうか。「学生時代は今よりずっと早くやる気が出せてたわ」……そんな心の言い訳に気づいてしまったら、この小説を読んでみてください。主人公は2 人の女子高生。剣道に青春をささげる2人は試合や交流を通じて成長していきます。剣道には格式高いイメージがあり、物語の世界に入りにくいかも……というかたにも読みやすい話ですし、何より熱い気持ちになれます。試合の描写も「胴!」とかじゃないです。「ンダァァァーッ」ですから。迫力が半端ない。読み終わったら心が若返り、2人の剣のひと振りぐらい、すぐにやる気が出てきますよ。
中学で剣道を始め、勝敗より楽しさを求める西荻早苗。3 歳から練習を積む剣道エリートで、勝敗がすべての磯山香織。価値観の違う2 人が剣道でつながっていく。
成功してもしなくても。まず、やってみよう!

ゼロからトースターを作ってみた結果/
著:トーマス・トウェイツ 訳:村井理子 新潮文庫 990円
この本はノンフィクション。英国の大学院生トウェイツ君が「一人でゼロからトースターを作ろう」と一念発起します。ゼロからというのは、ホームセンターで発熱体やプラスチックケースを買って組み立てる……とかではありません。その発熱体を作るために、ニッケルの採掘を試みる。プラスチックを作るために石油を手に入れようとする。マジで「ゼロ」から作り出す壮大な計画なんです。もちろん一人では限界があり、何度も大きな壁にぶつかっては発想を変えたり妥協したりして乗り越えていくのですが、それでもこのプロジェクト、成功するのか最後までわかりません。読み終わると「自分も大きな目標を立てて、まずやってみよう」と思える素敵な一冊です。
トースターをゼロから、つまり原材料を入手するところから作るのは可能なのか。著者は思い立ち、完成めざして七転八倒。消費社会をゆるく考察するドキュメンタリー。
「いか文庫」店主 粕川ゆきさん
おすすめ3選
未来を生きる主人公の熱い思いにふれる

プラネテス 全1~4巻/
著:幸村 誠 講談社 各990円
宇宙という広大な空間に浮かぶ、人間が作り出した衛星やロケットの破片や残骸=スペースデブリ(宇宙ゴミ)。それらを回収する仕事に就く主人公・ハチマキと仲間たちの物語です。未来の話でありSFでもあるのにそう感じさせないのは、精いっぱい生き、苦しんだり悩んだりしながら困難に立ち向かう姿が、現代を生きる私たちと同じだと強く共感できるから。登場人物を深く掘り下げるエピソードや、自分にまっすぐ向き合う哲学的なシーンが盛り込まれているのも本作の魅力の一つです。とくに1 巻の最後、ハチマキが電流を浴びるようなシーンには、自分もビリビリ! と刺激を与えられて生まれ変わったような気持ちに。腹の底からわき上がる情熱を感じてみて!
舞台は2070 年代。大きな夢を持ちながらも、しがない宇宙ゴミ回収の仕事に就く「ハチマキ」こと星野八郎太の成長を軸に、未来を生きる人々の強さと弱さを描く。
「脳」のしくみを知って先延ばし癖を解決!

すぐやる脳/
著:菅原道仁 サンマーク出版 1540円
がんばりたい、でもどうしても先延ばしにしてしまう。それは意志の弱さではなく脳のせい! 脳神経外科医の著者はそう言います。脳は燃費が悪く、省エネのために怠けるのが本当の姿なのだそう。じゃあもうダメじゃん……とあきらめないで。どうやったらその脳とうまくつきあえるのか、本書が具体的に説明してくれます。まずはなにかしら「体を動かす」。そして「今日やること」など目標を小さくして、達成できたら喜ぶ。すると「ドーパミン」=やる気分子が分泌されて、やる気が発動しやすくなるとか。それくらいならできそうって思えませんか? 怠け者の脳と仲よくなることで、やる気に満ちた自分になれる。今すぐやらない手はありません。まずは散歩に出かけましょ!
考えすぎて始められない、何をやっても続かない、やってみたいことはあるのに――。そんな「先延ばし」の癖を、脳神経外科医の著者が脳のしくみをもとに解決。
レジェンドの情熱が心に火をつける

調理場という戦場「 コート・ドール」斉須政雄の仕事論/
著:斉須政雄 幻冬舎文庫 660円
料理人・斉須政雄さんの仕事論……いや「情熱論」といえるかも。23 歳で単身渡仏し修業を重ね、名店「コート・ドール」のシェフになるまでに斉須さんが会得した物事たちは、料理人だけでなく多くの職業人たちの心に火をともしつづけています。というのも斉須さん、とにかく止まることがない。別の職業についての本を読んで、「こんなこともやっていいんだ? 料理でも試してみよう!」とチャレンジしてみるとか、手も気持ちも止めずに進みつづけるんです。効率が重視される現代、こういった地道なやり方は古いのかもしれません。でもこの本が、コツコツと積み上げた経験に勝る力はない! と気持ちを奮い立たせてくれる。いつも胸に抱いておきたい一冊です。
日本を代表するフランス料理界の巨匠・斉須政雄の仕事論。激流のような日々を自身の足でくぐり抜け、体当たりで夢をつかんだからこその熱き言葉がつづられる。
⃝商品の価格は、特に記載のない限り消費税込みの価格です。改定される場合もありますので、ご了承ください。
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イラスト/河原奈苗