50代持ち家なし。老後の住まいは持ち家と賃貸どっちがいい?/ブルボンヌさんの回答
だからこそ、考えだしたら不安でたまらない、家族や自分の老後の生活。
各分野のスペシャリストが、そんなあなたの不安にそっと寄り添います。
今回のお悩み/お金
50代持ち家なし。〈ついのすみか〉をどうしようか悩んでいます。

共働きで子どもが2人います。夫の勤務地の問題もあり、これまで賃貸マンションに暮らしてきました。夫婦とも定年まで働くつもりでいますが、定年後も家賃を払いつづけられるのか不安です。高齢になるほど、賃貸住宅は借りづらくなると聞きますし……。思い切ってマンションを購入するか、このまま賃貸に住みつづけて、老後は高齢者向け住宅や施設に移り住むべきか、いろいろ悩んでいます。
(54歳・女性)
ブルボンヌさんの回答
「賃貸<持ち家」の発想は捨てて。まずはお金のシミュレーションから始めてみましょ。



ブルボンヌさん
私は53歳・女装で、猫が2匹いますが(笑)、同じことで悩んでいます。同居しているパートナーとは、34年間ずっと賃貸暮らし。しかもその同居人は近い将来、定年を迎えるんです。同じ悩みを抱えている同世代は意外と多いわよ。
それでいろいろ調べてみたんですけど、総務省のデータによると、高齢単身世帯の32.2%が賃貸住まい※1なんですって。もしかしたら都市部はもう少し割合が高いかもしれないわよね。3割以上いるってことは、マーケット的にも時代的にも高齢者を受け入れてくれる賃貸住宅やシステム※2がちゃんと存在しているってこと。だから、「持ち家じゃないと、老後路頭に迷う」的な発想は、ちょっと置いておいてもいいかなと思います。
そのうえで、「買うか・借りるか」、この2パターンにしぼって、今後30年間にかかる住居費を試算してみてはどうかしら? お金のシミュレーションをしてみるだけでも、見えてくる景色はずいぶん違ってくるはず。その試算をもとに、お二人で「どこでどう暮らしていきたいか」を話し合ってみると、「じゃあ、うちらはこっちかな?」的な、なんとなくの方向性が決まってくる気がします。
なんて、偉そうに言う私も、じつは何にもしてないの! だから今回は、自戒の意味をこめて回答させていただきました。お互い〈不安の先取り〉をしたり、やみくもにあせったりしないで、心を落ち着けて考えていきましょうね。
※1 高齢者の賃貸物件利用率
総務省の「住宅・土地統計調査」(令和5年)によると、高齢単身世帯における借家の割合は32.2%。賃貸物件の利用率は15年以上ほぼ横ばいであるものの、高齢単身世帯の数が大幅に増加しているため、利用者自体は増えている。
※2高齢者向け賃貸住宅の種類と制度
バリアフリー対応の「高齢者向け賃貸住宅」、介護サービスがついた「サービス付き高齢者向け住宅」、都市再生機構(UR)が提供している高齢者向け優良賃貸住宅などがある。また連帯保証人の代わりとなる「家賃債務保証制度」や、高齢者世帯への家賃助成を行っている自治体もある。
女装パフォーマー
ジェンダーや福祉問題を扱う「ハートネットTV」(NHK Eテレ)への出演やラジオパーソナリティ、LGBTQや男女共同参画に関する講演活動など多方面で活躍。新宿2丁目と渋谷パルコのミックスバー「Campy!bar」をプロデュース。Podcast番組「ジョソラジ」を配信中。
取材・文/太田順子 イラスト/松元まり子