お客さんの悩みや気持ちに寄り添う本を、ちょっと世話焼きな書店員たちが心をこめて選書いたします。どうか素敵な本との出会いがありますように。
子供を読書好きにしたい!プロが薦める『子供が飽きずに楽しめる本』6選をご紹介

今月のお客様のご依頼は……
読書習慣がないわが子。本に親しむきっかけをつくりたいのですが、飽きずに読める工夫のある本はありませんか?
今回の選書担当

俳優・エッセイスト 美村里江さん
俳優としてドラマ、映画、舞台等で幅広く活躍。無類の読書家でもあり、新聞や雑誌でのエッセイ・書評の寄稿や連載も多数。

ブックディレクター・good and son代表 山口博之さん
旅の本屋「BOOK246」、選書集団「BACH」を経て独立。オフィスや病院等、書店にとどまらないさまざまな場所のブックディレクションを手がける。
紹介する本 一覧
俳優・エッセイスト 美村里江さん
ブックディレクター・good and son代表 山口博之さん
俳優・エッセイスト 美村里江さん
おすすめ3選
図鑑片手に「色」を探しに行こう

365 日にっぽんのいろ図鑑/
著:暦生活 監修:高月美樹 玄光社 2530円
一度本を好きになると〈一生の大親友〉になりますから、お子さんにはぜひ本に親しんでいただきたいですね。ただ、親から「この子と友達になりなよ」と言われても、なかなかむずかしいもの。やっぱり友達は自分で見つけるのがいちばん! 子どもといっしょに大型書店や図書館に行って、自分で好きな本を選んでもらうのがおすすめです(予算を伝えると、値段の数字を自分で見比べ、そこから興味を持ったりもします)。私がそうして初めて自分で選んだ本は「図鑑」でした。本書は暦に沿い、美しい写真とともに奥ゆかしい伝統色の名や、その由来を知ることができます。今日はこの色と同じ色を探そう! など、お子さんといっしょに楽しんでみてください。
1 日1 色、1 年分365 色の日本の伝統色を紹介する「色」の図鑑。食材や草花、海や空など色を表す写真とともに、その名の由来や色にまつわる物語を収録。
動物たちの視点で世界を見てみた

仕掛絵本図鑑 動物の見ている世界/
著:ギヨーム・デュプラ 訳:渡辺滋人 創元社 2970円
本を読み、「自分が見ている世界がすべてではない」と知ることで、視界は大きく開けます。他者へ思いやりを持てますし、未知への好奇心がわいて、もっといろんな世界を知りたくなるかも。そんな本の持つパワーを「視覚」という切り口から実感できるこちらの本。動物たちから見えている世界は、こんなにも違う! 特に犬や猫など、ペットとして身近な動物の視点を知ったときの驚きは大きいかもしれません。説明文も科学的な視点で書かれているので、眺めるだけでなく知識も楽しく学べます。また、仕かけ絵本が素晴らしいのは、仕様をまねして自分でも本を手作りできることですね。この本のまねをして、家族やペットの顔を描いてみるのはいかがでしょう?
「猫はひどい近眼」など、生き物ごとの視覚の違いが学べる仕かけ絵本。生き物の「目」の部分をめくると、それぞれが見ている世界が広がります。
大人も夢中に!?「謎解き」を極める書

SCRAP presents 謎図鑑 /
編:SCRAP SCRAP出版 2420円
子どものころは足の速い子や絵の上手な子と並び、「なぞなぞが得意な子」も人気者でしたよね。意外な子が意外な視点で答えを発見するので、「おお!」と尊敬の的に。では、プロはどのようにして「謎」を作っているのか? それはそのまま解き方に通じます。本書は「謎の解き方」の解説と、その方法で解ける例題をセットで掲載した、シンプルな構成。図鑑と銘打っているだけあり、出題数が豊富で眺めるだけでも楽しいです。まず「謎解きの基本」でざっと形式をさらったら、「言葉遊び」「図形/イラスト」など、謎解きの各ジャンルへ。身近な大人が夢中になっていると、子どもはやりたがるもの。まずはあなたが夢中になれる本を探すのも、近道かもしれませんよ。
大人気の「リアル脱出ゲーム」など、謎解きを通じた数々のエンタメを仕かけるSCRAPによる謎解きの解説書。謎解きのジャンルごとに解き方のコツを伝授。
ブックディレクター・good and son代表
山口博之さん
おすすめ3選
本にどんどん〈らくがき〉しちゃおう!

ぬったりかいたりらくがきBOOK/
作:五味太郎 チャイルド本社 1650円
読書になじみがないなら、〈読まずに遊べる本〉を贈るのはいかがでしょうか。絵本作家の五味太郎さんによる本書はタイトルのとおり、本なのにどんどん描いたり、塗ったりしてもいい本です。たとえば顔のパーツだけが描かれていない「かおをかきましょう」や、服の部分が空白な「すてきなふくをきせましょう」、お皿だけが描かれた「ごちそうをかきましょう」など、五味さんはすべてを描かず、子どもたちが想像力を働かせる余白を残してくれています。「そらのようすをかきましょう」ではちょっとしたお話も書かれており、自分だけのストーリーを作っても楽しそう。描いているときはもちろん、いつか大人になって見返したときに大切な一冊になっているはずです。
ページに描かれているのは、モノクロの線画。そこに表情を描き込んだり空の色を塗ったり、12のテーマに沿って思いのままに〈らくがき〉を楽しむ絵本。
国民的コミックを読書のきっかけに

絵本まんが はじめてのドラえもん/
著:藤子・F・不二雄 小学館 1430円
今は本を読まなくても、あせらずタイミングを待ち、そのときが来たら子どもの興味に従ってそっと本を差し出してあげてください。……そうお伝えしたいところですが、それでは元も子もないので、まずはマンガでどうでしょうか。「ドラえもん」は『小学一年生』などの学年別学習雑誌と、『よいこ』などの幼児誌、合計6 誌で同時に連載がスタートしたのですが、藤子・F・不二雄は読者の年齢などに合わせてそれぞれ内容を描き分けていたそう。本書は幼児誌掲載の中から9 話を選定。日々の生活や友達のことなど身近なテーマを扱っているので、飽きずに読めるはずです。マンガだって読書のひとつ。むしろマンガでしか表現できないこともたくさんありますよ。
字の読めない幼児でも感覚的に楽しめる、「ドラえもん」の絵本まんが。読み聞かせ絵本として親子で読んでも、自分で読む〈はじめてのマンガ〉としても◎。
静かに読まなくていい!声に出して楽しむ本

ことばあそびうた/
詩:谷川俊太郎 絵:瀬川康男 福音館書店 1100円
本が苦手な人は、長い物語や細かい字にどうしても気が引けてしまうもの。そんな人には、もはや〈定番中の定番〉ともいえるこの名著はいかがでしょうか。大人であれば、かつて教科書で読んだことがあるかもしれない「かっぱかっぱらった かっぱらっぱかっぱらった」でおなじみの「かっぱ」。「いるかいるか いないかいるか」と今でもすぐに口ずさめる人もいそうな「いるか」など、早口言葉のようなことば遊びの楽しさと、日本語のリズムの心地よさで、思わず何度も口にしてしまいます。大人と子どもでいっしょに読んで、どちらが早く上手に言えるかを競っても楽しく、いつの間にか〈日本語が持つおもしろさ〉に気づくきっかけにもなります。
詩人・谷川俊太郎による、声に出して楽しい〈ことば遊びの詩〉15 編を収録。瀬川康男が描くユーモラスな絵が、ことば遊びのおもしろさを引き立てます。
⃝商品の価格は、特に記載のない限り消費税込みの価格です。改定される場合もありますので、ご了承ください。
あわせて読みたい
イラスト/河原奈苗