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井上咲楽のすこやか発酵ごはん

陶器の街・益子町生まれ。幼いころから料理に親しみ、実家の台所や食卓にはつねに「発酵食品」があった……。そんな井上咲楽が、自家製の調味料や、お気に入りの発酵食品などを紹介していく「発酵ごはん」連載です! はつらつとした彼女のすこやかさの秘訣がここにアリ!?

美味しくなくなるから、ケンカは禁止。井上咲楽の実家で10年以上続くみそづくり

みそ作り

井上家の恒例行事・みそ作り

冬になるとみそを家族でつくるのが井上家の恒例行事となったのは私が中学生のころからだろうか。

ある年、母が10年前につくったみそを発見し、恐る恐るふたを開けると表面にカビがポツポツ……あ〜さすがにダメだったか。と家族みんなが諦めたそのとき! 母が「ちょっと待って!」とキッチンから大きめのスプーンとボールを持ってきて、表面のカビをすくいはじめたのだ。掬いはじめた? はたまた救いはじめた? とにかく、カビを取り去ると、ふかふかできれいな焦げ茶色のみそが出てきたのだ!! 恐る恐る食べてみると……塩味は濃いめだけど、10年間ねかせた香りのふくよかさと甘みが口に広がって、とってもおいしかった。

母は10年前のみそを救った。

そのみそがとにかくおいしくて、手づくりのみそってこんなにいいのか! と食卓が盛り上がり、井上家のみそづくりは始まった。強力な納豆菌が混入して風味を損なうことを防ぐためにみそを作る前日の納豆は禁止、そしてみそがおいしくなくなっちゃうから、ケンカも禁止。

こんなルールを設けて、家族6人でつくることになった。母が煮てくれた大豆を母お手製のさらし袋に入れて、ゴム性のハンマーや、鍋の底や、丈夫そうなキッチン道具でたたいて豆をつぶしていく。そのときにつまみ食いするほくほくの大豆は甘くてとてもおいしい。たかが大豆、されど大豆! だからといってその日から大豆に大ハマり! ってことはないんだけど。みそづくりの楽しみのひとつだ。

塩と麹をひたすら混ぜて。

大豆がつぶれたら、塩と麹を混ぜ、ゆで汁を入れながらこねていく。この作業を終えると、麹の効果か? 手がスベスベになってしっとりするのでうれしい。「ねぇ! さわって! 手がスベスベだよ〜!」と混ぜた人はテンションが上がりだし、スベスベになるなら私が混ぜればよかった……みたいな顔をした人が現れてちょっと楽しい。

そしてお次は、混ぜたものを野球ボールくらいに丸めて、かめにぶつけるように投げ入れる。これもストレス解消になるスッキリ感があって大好きな工程だ。

たまーにかめからはずして、ゴメンナサイ! ってこともあるのでヒートアップに注意。

ここからかめに入れる作業!

表面をならして縁に塩をふり、空気が入らないように落としラップをして、塩を重し代わりにのせ、新聞紙でふたをしたら仕込みは終了! 表面に日づけと、「おいしくなーれ」を書いて、半年以上ねかせて完成するのを待つ。

毎年続いたみそ作り、実家を出た妹もいて、今年はみそづくりの参加率が低め。「今年はやらなくてもいいかなあ。」という母を説得して、2025年の味噌はちょっと遅いが4月の半ばに父、母、私の3人で仕込んだ。肉離れを起こして松葉杖をついている父と、母と、いつもよりちょっとおだやかに仕込んだ。

母はきっと家族全員でやりたかったのだろう。寂しかったから、今年はいい、なんて言ったのだろうか。4姉妹も少しずつ成長して、実家にいる家族も減り、今までどおりに家族行事に行くことも、少なくなっていくだろう。 もちろんみんなで仕込むのもいいけど、3人で仕込むのもそれはそれで楽しかった。そう母に思ってもらえたらきっと井上家のみそづくりはまだまだ続く気がする。

この夏は参院選がアツかった!山本期日前さんと選挙イベントを行いました。

お仕事で大阪万博へ。風がつよ~い!

 

PROFILE

井上咲楽(いのうえ・さくら)
1999年、栃木県生まれ。2015年「第40回ホリプロタレントスカウトキャラバン」を経て芸能界入り。「おはスタ」「新婚さんいらっしゃい!」など、バラエティ番組で見せる明るいキャラクターで人気を博す。NHK大河ドラマ「光る君へ」に出演。2024年5月に『井上咲楽のおまもりごはん』、11月に『じんせい手帖』を出版。「発酵食品ソムリエ」資格、「食品衛生責任者」の資格も持つ。

文・写真/井上咲楽 バナー・プロフィール画像/大森忠明