陶器の街・益子町生まれ。幼いころから料理に親しみ、実家の台所や食卓にはつねに「発酵食品」があった……。そんな井上咲楽が、自家製の調味料や、お気に入りの発酵食品などを紹介していく「発酵ごはん」連載です! はつらつとした彼女のすこやかさの秘訣がここにアリ!?
井上咲楽、栃木の小学校給食の定番「しもつかれ」と酒かすの生意気な思い出を語る。

栃木の給食でお馴染み「しもつかれ」
酒かすを使った料理を食べられるようになったのはいつからだろう。栃木には「しもつかれ」と呼ばれる正月の鮭の頭や節分の豆、大根、にんじんなどを酒かすで煮込んだ郷土料理があって、本当に小さいころは酒かすのぷーんとした風味がちょっぴり苦手だった。小学校に上がって、給食でしもつかれが出るようになって、酒かすの香りが今度は逆に大人になれるような気がして、残さず食べているうちにすっかりくせになっていった。
それから、麹からつくられた甘酒しか飲めなかったのに、いつの間にか酒かすを使った甘酒も飲めるようになり、酒かすの香りが苦手だった妹を前に「ねーねは大人だから飲める〜!」とけんかもふっかけたり、酒かすには生意気な思い出が詰まっている。
酒かすをおいしく食べる方法その1
今25歳になってお酒もたしなむようになり、酒かすを使った料理は大好物になった。酒かすを使った料理というと、かす汁、かす漬け、甘酒などが代表的だが、酒かすはじつは単体でもおいしい。
酒かすをめん棒でかるくのばし、包丁でパソコンのエンターキーくらいの大きさにカットし、オーブントースターやグリルでこんがりするまで焼くだけで、芳醇な香りのチーズクッキーのようなちょっとしたおやつができる。そのままでも、しょうゆをたらしても、シナモンをふってメープルシロップやはちみつをかけても(焼いてもアルコールは残っている可能性があるので注意! 大人のおやつです)! サクッと完成するのでぜひ作ってみてほしい。
酒かすをおいしく食べる方法その2
ちょっと酒かすの独特の酒感が苦手な人には、チーズと合わせることをおすすめする。私はグラタンを作るときにチーズと酒かすを合わせて焼き、大人のグラタンを作ったりする。くどくないけどなぜかあとを引く、酒かすグラタン。グラタンのチーズが少し重くなってきて後半がキツくなってくるなあ……という人にもおすすめ。
そんなに使えるかしら! と思ったそこのあなた! 余った分は冷凍できるので、そんなに敬遠せずに、次においしそうな酒かすを見つけたらぜひ手に入れてみてほしい。
そんなわけで、私は酒かすが好き。最初に子どものころの思い出として語ってみたが、大人になった今でも酒かすが苦手な妹に「酒かすちょっかい」を出してしまう癖は、やめられないことをここで反省したい。
妹よ、ゴメン! ねーねは酒かすが好き! 大人だから!



PROFILE
井上咲楽(いのうえ・さくら)
1999年、栃木県生まれ。2015年「第40回ホリプロタレントスカウトキャラバン」を経て芸能界入り。「おはスタ」「新婚さんいらっしゃい!」など、バラエティ番組で見せる明るいキャラクターで人気を博す。NHK大河ドラマ「光る君へ」に出演。2024年5月に『井上咲楽のおまもりごはん』、11月に『じんせい手帖』を出版。「発酵食品ソムリエ」資格、「食品衛生責任者」の資格も持つ。

文・写真/井上咲楽 バナー・プロフィール画像/大森忠明