『オレンジページ』でおなじみの料理家さんにご登場いただき、これまでに発表したなかでも「われながらこれは傑作!」「これはプライベートでもよく作る」というご自慢のレシピについて語っていただくこの企画。
前回のお話:揚げもの好き料理家がたどりついた黄金比率『鶏のから揚げ』のレシピ【市瀬悦子さん直伝】
市瀬悦子さんにお話をうかがう2回目です。今回のレシピは、フライド大根。揚げもの好きならではのひらめきで生まれた、大人気メニューにまつわるエピソードです。
今回の傑作レシピ
『フライド大根』
これは絶対いけるはず!
この時期、ぐんと甘みを増しておいしくなる大根。大根メニューの定番といえばやっぱり煮ものの印象が強いですが、今回ご紹介するのは「フライド大根」! カリッと香ばしいころもとジューシーな大根のコンビネーションが目からウロコのおいしさで、誌面でも大人気でした。
「冬の大根特集で、編集部から『大根を揚げられないでしょうか?』とご相談があって。どうかなあ……と思いつつ試作をスタートした覚えがあります。にんじんやごぼうを揚げるメニューはよくありますが、大根はなんといっても水分が多い。揚げもの好きとしてはぜひなんとかしたいなあ、とはいえどうしようかなあ、と考えて。でも、これは絶対いけるはずという勘のようなものがあったので、ころもをしーっかりつけてみることにしたんです」
すると、これが大成功。今までの大根メニューにはない新しいおいしさが生まれました。恐るべし、揚げもの好きの勘!
「下味の液体に小麦粉を投入、バッター液状にして大根にまとわせてから、さらに片栗粉をまぶしています。この、バッター液+さらに粉をはたくというところがポイント。水分を吸った粉がボコボコしてちょっと〈だま〉になるんですが、だからこそ、揚げるとカリカリになっておいしいんです。時間をおくとフニャッと柔らかくなってしまうので、ころもをつけたらすぐ揚げてくださいね」
たっぷりころもの中に、じゅわ~っと大根
フライドポテトのような棒状の形にも、いい意味で「大根らしくない」意外性とカジュアル感が漂います。
「輪切りとかだとカリッとした食感が出にくいかなと思って、細長く切りました。もう少し短くてもいいかもしれないけれど、いずれにしても形は棒状で。これだと、ころもと大根のバランスがいいんですよね」
こうして2015年に誌面に登場したフライド大根は、大ヒット。揚げたてをパクパク食べるスナック状の大根! という斬新なアイディアが、読者に広く受け入れられました。
「ある程度食べ進んだところで、味変するのもおすすめですよ。粉山椒とか、カレー粉とか、粉チーズとか。テーブルに出しておいて、家族それぞれで好きなものをかけてもいいし、自由に楽しんで」
少しずつブラッシュアップ
編集部からのオーダーがきっかけで誕生したフライド大根ですが、その後も、プライベートも含めて作りつづけてきたという市瀬さん。
「初めは下味はにんにくでしたが、やがてしょうがとか、しょうゆの量を減らして最後に塩をふったりとか、バリエーションが広がって。作り方も少しブラッシュアップしていて、最近は下味にはあまり漬け込まない代わりに、ころもに味をつけて作るようになりました」
そんなアレンジバージョンを誌面でご披露いただくこともしばしば。2020年には、大根一本使いきり特集で、ころもにカレー粉を混ぜ込んだ「カレーフライド大根」をご紹介いただきました。
『カレーフライド大根』 大根をまるごと一本買ったときも、そうでないときも、大根のポテンシャルは煮ものだけにあらず。おなじみメニューとはひと味違う大根のおいしさを、ぜひ味わってみてください。
市瀬悦子さん
大学卒業後、食品メーカーの営業職を経て料理の世界へ。料理研究家のアシスタントを務めたのち独立し、「おいしくて、作りやすい家庭料理」をテーマに、雑誌や書籍のほか、企業へのレシピ提供、テレビ出演など多方面で活躍中。