『オレンジページ』でおなじみの料理家さんにご登場いただき、これまでに発表したなかでも「われながらこれは傑作!」「これはプライベートでもよく作る」というご自慢のレシピについて語っていただくこの企画。
前回のお話:作って欲しい! 藤井恵さんの傑作レシピランキングベスト3【オレぺ社員が激推し】? 『すき焼ききつねコロッケ』
今回からは
市瀬悦子さんにお話をうかがいます。第1回のテーマは、鶏のから揚げ。自他ともに認める大の揚げもの好き! という市瀬さんならではの、から揚げ愛あふれるお話です。
今回の傑作レシピ
『鶏のから揚げ』
生粋の揚げもの好きが作りつづけるレシピ
揚げもの好きとして名高い市瀬さん、から揚げは長年このレシピで作りつづけているそう。まずは「鶏肉に味をしっかりなじませることが大切!」と話します。
「味をなじませるためには、下味をつけてから少し時間をおきますが、現時点では『たれを20回もみ込んで、20分おく』方法が私的にはベスト。もみ込むとぐっと味が入るようになるし、漬ける時間は最短20分でおいしく作れることが分かりました! 10分では短すぎるけど、20分と30分はそんなに差がなかったんです。いろいろ試した結果、ここに落ち着きました」
ころもの粉を2種類混ぜる「ダブル使い」もお気に入りです。
「小麦粉が鶏肉の水分を吸ううえ、いい感じにコーティングしてくれて、さらに片栗粉がカリッと仕上げてくれます。粉の割合はこのレシピでは小麦粉:片栗粉=1:1でしたが、今は片栗粉を少し多めにしてカリッと感強めに揚げるのが気分かな」
いざ油に入れるときには、皮をしっかりのばします。これは意外な盲点!
「皮がくしゃくしゃになったままだと、重なった部分がカリッと揚がらず、ぷにゅっとした食感になってしまいます。せっかくのから揚げが台なしになってしまうので、忘れずにのばしましょう」
そして、カリッと揚げる秘訣は「二度揚げ」……かと思いきや、もっと簡単なひと工夫が。
「最後に強火にしたところで、肉を油から少し持ち上げるようにして空気に触れさせ、水分をとばしています。こうすれば、わざわざ二度揚げをしなくても、簡単に同じ効果が得られるんですよ」
塩をすこーしだけ、がおいしさの秘密
今回のレシピは、以前『オレンジページ』で連載されていた人気企画で、後に書籍化もされた「味つけ黄金比率」シリーズからピックアップしたもの。定番料理をいつも同じ味に作れないという読者の悩みにこたえて、覚えやすい味つけの「黄金比率」を提案する企画だけあって、このから揚げも「下味はしょうゆ1:酒1:塩ひとつまみ:にんにく1/2かけ」というわかりやすさが光ります。
「下味用のたれに、塩をすこーしだけ入れるんです。ごくごく少ない量なので、材料をできるだけシンプルにしたいと考えた担当さんから『この塩ひとつまみって本当にいりますか? ナシじゃダメですか?』と聞き直されて(笑)。でも、試しに作ってお出ししたら『わあ、やっぱり全然違うんですね!』と納得してもらえました。味がグッとしまるんですよ」
おいしい味つけの比率をシンプルに伝えることがテーマの連載でしたが、回が進むにつれて苦労したことも。
「わかりやすさを重視するあまり『(大さじ、または小さじ)1/2のようにきりの悪い数字はできるだけやめよう』というルールができたりして、少しずつ自分たちの首を絞めていったという……(笑)。おかげでレシピを考えるのが大変なときもありましたが、一冊の本にまとまって、長く愛されつづけているのはうれしいですね」
同じたれで、さばの竜田揚げも楽しめる
いくら揚げもの好きとはいえ、欲望のままに食べられる機会はそう多くはないという市瀬さん。
「仕事のための試作をしなくてはならない日も多く、なかなか、今日揚げたい! よし揚げちゃおう! とはいきません(笑)。でも、だからこそから揚げは、何の縛りもなく夕食のメニューを決められる日のお楽しみ。そういう日には“揚げ欲”がむくむくわいてきて、から揚げ作るぞー! となるんです。肉の部位は圧倒的にもも派。ちなみに、ご紹介したから揚げと同じたれを使って、さばの竜田揚げもおいしく作れますよ」
肉にしても魚にしても、揚げたてのあつあつを楽しめるのは「家揚げ」ならではの幸せ。ここで紹介したコツさえ押さえれば、カリッと揚げたてのおいしさを堪能できます。さあ、今夜は家でから揚げ、作ってみませんか?
市瀬悦子さん
大学卒業後、食品メーカーの営業職を経て料理の世界へ。料理研究家のアシスタントを務めたのち独立し、「おいしくて、作りやすい家庭料理」をテーマに、雑誌や書籍のほか、企業へのレシピ提供、テレビ出演など多方面で活躍中。