超高齢社会を迎え、「人生100年時代」といわれる現代。だからこそ、考えだしたら不安でたまらない、家族や自分の老後の生活。各分野のスペシャリストが、そんなあなたの不安にそっと寄り添います。 今回のお悩み/孤独 SNSで、同世代の人と自分の生活を比べて落ち込みます。 45歳主婦です。これまで子育てを中心に生活してきましたが、気づいたら40代も半ばに。今は子どもも手を離れ、パートに出ていますが、毎日家とパート先の往復で、出かけるときはたいてい夫か子どもといっしょ。インスタなどのSNSで、同じ40代の人たちが趣味や推し活を楽しんでいるのを見ると、うらやましくてたまらない気持ちに。すっかり老け込んでしまっている自分と比べて、「同じ40代なのに、なんでこんなにイキイキしているのだろう」と落ち込みます。(45歳・女性) 稲垣えみ子さんの回答 〈幸せのハードル〉は、低ければ低いほどいいそれが絶対的に幸せになれるコツです。 お悩み回答者 稲垣えみ子さん まず、このかたがうらやましく思っている人たちというのは、本当に「うらやましい生活」を送っているのでしょうか。SNSで、(実際どうかは知らないけれど)幸せそうに見える人と比べて、自分はどんどん幸せではなくなっていく。幸せの基準が、知りもしない他人になってしまっているわけです。それに、「人と比べる」というのは、きりがないんですよね。たとえこのかたが、今望んでいる状況を手に入れたとしても、上には上がいて、またすぐに別の「うらやましい」が出てきてしまう。だから、人と比べているうちは、いつまでたっても満足感を得ることができないんです。本当に満たされている人というのは、人から見たら何でもない、当たり前のことに〈幸せの種〉を見つけられる人だと思うんですよね。たとえば、「今朝も元気に起きられた」とか。そこに幸せを感じることができたら、その人はもう絶対的に幸せなんです。私もかつては、人と比べて「もっともっと」と上ばかり見ていました。でも、物や家電を持たない生活にシフトして、幸せのハードルを思いっきり下げたら、毎日がすごくハッピーになったんです。今の楽しみのひとつが、ぞうきんがけ。真っ黒になったぞうきんを見るたびに、充実感でいっぱいに。これほど、永久に続く幸せってないんじゃないかと(笑)。幸せのハードルは、低ければ低いほどいい。地面にめり込ませるぐらいに(笑)。それこそが、幸せになれる唯一のコツだと私は思います。 稲垣えみ子さん フリーランサー。1965 年生まれ。一橋大学卒業後、朝日新聞社に入社。論説委員、編 集委員などを務め、50 歳で退社。以後、夫なし・冷蔵庫なし・ガス契約なし・定職なしのフリーランス生活を送る。最新刊は『家事か地獄か最期まですっくと生き抜く唯一の選択』(マガジンハウス)。 虻川美穂子さんの回答を見る「老後の4K」のお悩みをすべて見る(『オレンジページ』2023年8月17日号より)