『オレンジページ』でおなじみの料理家さんにご登場いただき、これまでに発表したなかでも「われながらこれは傑作!」「これはプライベートでもよく作る」というご自慢のレシピについて語っていただくこの企画。堤 人美さんにご登場いただく第2回は、いつもとはちょっと違う肉豆腐のエピソードをうかがいます。
前回のお話:【堤 人美さん】アシスタント時代から作りつづける大好きな『白いんげん豆と豚肉の洋風煮』のレシピ
今回の傑作レシピ
『青じそたっぷり塩肉豆腐』
青じそをたっぷり入れて軽やかに
肉豆腐といえば、しっかり甘辛なしょうゆ味が定番ですが、今回ご紹介するのはそんなイメージを覆す一品。さっぱりとした塩味の肉豆腐です。
「『オレンジページ』で豆腐の特集が組まれたときに、
“甘くない肉豆腐”というリクエストをいただきました。で、試作を始めたら、わりとスムーズにレシピができ上がって。さっと煮るだけで味が決まるんですよ。ポイントは、名前のとおりたっぷり入れた
青じそ。香味野菜を普通の野菜のように使うことで、すっきりと雑味のない味に仕上がります」
定番の甘辛味よりぐんと軽やかで、肉豆腐の新しい魅力を発見できる味わい。お酒にもよく合います。
「うちでは以前から作っていた料理でしたが、何かもう少したりないなと思っていて。お仕事をきっかけにレシピが仕上がった感じでした。他社で編集をしている友人からも
『あのレシピ、最高だった』って連絡をもらったんですよ」
アレンジのアイディアもいろいろ
もう少しおかずっぽくしたいなら、こんな食べ方も。
「ご飯といっしょにもりもり食べたいなというときは、きのこを入れるといいですよ。焼きつけたきのこに、しょうゆを少しだけ加えて。ほかにも、レシピでは牛肉ですが(この料理、牛がよく合うんです!)、豚が好きなら豚肉に替えてもいいし、青じそだとすっきりしすぎると思ったら小松菜に替えても大丈夫。梅をたたいてちょっとだけのせるとか、しょうがのせん切りをたっぷり加えてもおいしいと思います。飽きてきたら入れる材料を少し変えてみて、で、またレシピどおりに戻ってみたり。家庭料理ってそういうものだし、自由に楽しんでほしいですね」
塩+レンチンで食べる豆腐のおいしさ
豆腐を食べる頻度はふだんから高め、という堤さん。
「子どものころから本当によく食べていて、実家には
豆腐切り用の道具もあるほど。湯豆腐も冷やっこも好きですね。しょうゆで食べる人が多いですが、塩もおいしいですよ。塩をぱらりとふってお酒も少しだけかけて、ラップをしてレンジ加熱するとか。ただそれだけのことなのに、水分が出て豆腐の味がぐっと上がる。ちょっと驚くほどおいしくなるんです」
ちなみに、塩肉豆腐が掲載された特集のテーマは
〈あっさり豆腐、ピリ辛豆腐〉。
ハンバーグに酸辣湯(サンラータン)、サラダなどなど、豆腐でこんなにいろいろ! というバリエーション豊かなメニューが人気を集めました。
「〈あっさり豆腐〉のカテゴリーでは、ほかに、
豆腐ハンバーグもお気に入りでした。豆腐と鶏ひき肉のたねにひじきを入れて、ポン酢のたれをかけて。あらためて見直すと、われながらすごい健康的ですね(笑)」
味があって、味がない。だからこそ万能
和風以外の料理にも(意外なほど)使えて、季節を問わずに楽しめる豆腐。なんとも懐の深い食材です。
「そう、
味があるのに、でも味がないというか。
だからこそ万能なんですよね」
白くてつるんとした、美しいビジュアルもそそります。
「料理の話ではないんですけど……。撮影のとき、豆腐をいくつも並べてイメージカットを撮るのが大変でした(笑)。お店にたくさん注文しておいて、パッケージから出すときも、角がくずれないように、きれいな形がキープできるように、とすごく気をつかったんですよ」
愛してやまない豆腐談議、まだまだ尽きそうにありません。
堤 人美さん
出版社勤務、料理研究家のアシスタントを経て独立。素材の持ち味を生かした、作りやすくておいしく、おしゃれなレシピにファンが多い。書籍、雑誌、広告などで幅広く活躍中。『気軽にできて、とびきりおいしい! グラタン・ドリア』(Gakken)など著書多数。