
霜ふり肉に泣かされた!テレビ東京「晩酌の流儀」ドラマの伝説のダッシュとは

一日の終わりのお酒をいかにおいしく飲めるか。
最高の晩酌のために行動する美幸の日常を描く「晩酌の流儀」。
昨年シーズン1が放送され、話題を呼んだドラマが今夏待望のシーズン2に突入!
登場するレシピをまねしてSNSに投稿する視聴者が続出し、料理好きの間でも話題沸騰に。
オレンジページも作品の世界観と美幸が作るおつまみに大注目!
ドラマの生みの親の松本拓さん(企画・監督・プロデューサー)と、食のシーンを支える藤代太一さん(フードコーディネーター)にメイキングのお話をうかがってきました。
気になるドラマの舞台裏、前後編でたっぷりとお届けします。
この一杯がたまらない! なんとも幸せそうな美幸の飲みっぷりも話題に。
晩酌のためのグラスを冷蔵庫に入れることから始まる、主人公・伊澤美幸の毎日。
一日のがんばりのすべては、おいしい晩酌のため……。
ちょっぴり過剰にお酒を愛し、最高の晩酌をひたすら追求していく一人の女性の物語です。
美幸役は栗山千明さん。
現在、「晩酌の流儀2」は毎週金曜深夜24時52分~テレビ東京系で放送中です。
「ネットもテレ東」・TVerで見逃し配信、U-NEXT、Amazon Prime Videoにて各話放送後から順次見放題配信もしています。
徹底して追求した、フードシーンのライブ感
美幸の晩酌タイムの手始めは、キッチンでの調理から。
切る、混ぜる、加熱する、盛る……。
手際よく美しいフードシーンは、食材が主役の〈ショウタイム〉のよう!
私たちの食欲を刺激してやまないフードシーンはどうやって生まれるのか。
シリーズ通してのこだわりをうかがった前編に続き、後編ではさらに詳しく料理のお話やフード撮影現場のエピソードを語っていただきました!
撮影現場でのハプニングを笑顔で語ってくださったお二人。
メニューを考えるとき、最初の発想はどこから生まれるんですか?
松本:どの料理も「あれ、おいしかったよな」とか、僕の記憶にインプットされているものの中から考えています。大人になってお酒を楽しむようになって、そこからの蓄積ですよね。「晩酌の流儀2」第1話の「海鮮ばくだん」なんかは、築地のすしざんまいで初めて食べたときの「うまっ!」っていう驚きから美幸の晩酌にも入れたいな、と。
「晩酌の流儀2」第1話に登場の「海鮮ばくだん」。最後にのりを添え、絵的な仕上げも完璧に。
藤代:僕は松本さんのアイディアに「ひとひねり、ふたひねりしたものを作って」という要望を受けて、最初に何種類か試作品を作ります。その後、松本さんに決めてもらったり、みんなの意見で「これがいいよね」ってなったり。
松本:試作のスタートは、撮影のひと月前くらいから。そこからフードスタッフたちと知恵をしぼって一品一品決めていく。試作で「これはちょっとむずかしいな」って部分が見つかることもあるし。
藤代:味はいいけど、最後の見た目で「ここトッピングに何か欲しいよね」「のりじゃない?」ってその場で買い出しに走ったり。試作を出して、ブラッシュアップしての繰り返しで、本番の撮影日が近づいてくるんです。
フードの撮影で大変なことはありますか?
藤代:美幸の定番は金麦ですが、シーズン2で登場するレモンサワーやハイボールが大変だった~! さらっとやっていても、グラスの中に氷をカラカラカラッて入れるところから、すごくむずかしいんです。まず、氷をきれいにグラスに入れることに成功して、お酒を注いで、炭酸水をゆっくり入れて、混ぜる。一つ一つの難易度が高いうえに、これを一連で美しく撮るのって、究極に大変で。フードチーム一丸となって成し遂げましたね。
松本:20テイクくらいやったよね。
藤代:フードスタッフは氷がなくなるたび、コンビニに氷ダッシュ。氷ダッシュしてくれた担当は「どこのコンビニの氷がいいのかわかるようになりました」って言ってました。
松本:撮れたときは、みんなで拍手だった! おかげで最高においしそうなレモンサワーとハイボールになったよね。
レモンサワー完成までのシーンは、フードチームの努力の結晶。必見です!
藤代:ドリンクだけじゃなく、料理も調理工程の一連を見せるところがこのドラマの醍醐味だから、とにかく完璧になるまでのテイクの数が多い。カットを分けて撮れば簡単なんだけど、フライパンの中で調理する、でき上がる、盛りつける、の流れを繰り返しやって。
松本:美幸が自分で台所に立ってつまみを作るところから、晩酌に本気な姿を届けたいんだよね。動きがあったほうがお酒も料理もおいしく見えるし、ライブ感も出る。場面場面で切り抜く表現も可能だし、そうすれば撮影がはるかにラクなんだけど、おいしさを皿の上だけじゃなくて、動きで見せたい。そこがこのドラマのアイデンティティだから。
藤代:その松本さんのこだわりをわかっているから、フードチームもがんばるんです。ここまでやるの、松本さんだけですよ(笑)。
松本:このシリーズの料理撮影は特殊だよね。まぁ、僕自身がプライベートでも食にこだわるタイプだからかな(笑)。
–{肉の霜降り加減でフード予算が3倍に⁉}–
フード撮影日で、特に印象的だった回を教えてください。
藤代さん「肉って切るまで霜ふりぐあいまでわからない。これってトラップですよね(笑)」
藤代:なんといっても第10話「焼きしゃぶ」の回! 霜ふりトラップに泣かされました(笑)。
松本:追加で買った分の肉の霜ふりのぐあいが違ったという……。
藤代:メイン撮影の翌日にフード中心の撮影があったんですが、同じお店で同じ肉を買ったはずなのに、肉の霜ふりぐあいが違ったんですよね。赤身がちょうどいい部分が半分くらいで、もう半分は霜ふりぐあいがぜいたくすぎて。撮影中に「たりない!」って。
松本:で、伝説の霜ふりダッシュ(笑)。
藤代:結局、シーズン1でもお世話になった勝どきの肉屋さんまで、スタッフにダッシュしてもらいました。
松本:往復で40分ね。この回は肉の予算が想定の3倍になっちゃった(笑)。撮影中ダッシュは、ほかにもあったよね。
藤代:紅しょうがダッシュですね。いざ袋から出して食材の上にのせてカメラを通して見たら「色が薄い! これじゃダメだ」って。ほかにもねぎダッシュとか、小麦粉ダッシュとか、フードチームはけっこうダッシュしてる(笑)。
松本:野菜の大きさでも苦労してなかった?
藤代:ありました。メイン撮影のときとフード撮影のときで、売ってるゴーヤーの大きさが違って。「どうしましょう?」って買い出し担当が半泣きで売り場から電話してきて。「なるべく近いのにして」って。
松本:季節の野菜は、出荷日が違うとけっこうサイズが変わったりするんだよね。撮影現場ってしっかり準備してるわりにハプニングが多くて、おもしろいよね。
松本さん「登場する料理にはどれも思い入れがあります」
私たちに「おいしそう!」というトキメキを届けてくれる「晩酌の流儀」。最後に読者にメッセージをお願いします。
松本:お酒とか食べ物とか、何かひとつでもこだわると毎日が楽しくなりますよね? 美幸の晩酌でのこだわりの一つは、缶の数だけグラスを冷やすこと。これは自分でも何年も前からやってたことで、あとは僕も美幸同様金麦が好きなんですけど、自分の推しの商品とか、お酒の種類ごとにグラスがあったりするのも楽しい。〈自分ルール=流儀〉の楽しさをおもしろがって見てもらえたらうれしいです。
藤代:「おいしい」って、料理と同じでセオリーはあるけど正解はないんですよね。自分の流儀で晩酌を楽しめば、より明日への活力につながる気がします。今作ではおいしそうに見えることはもちろん、レシピが伝わるように工夫しながらシーン撮りをしているので、ぜひ、まねして作ってみてください。ドラマの一品で晩酌していただけたら、料理人としての冥利に尽きます!
朝、金麦とグラスを冷やすのが美幸の流儀。グラスを冷やすだけでおいしさがアップ!
「晩酌の流儀」の屋台骨ともいえる料理についてうかがった前後編、いかがでしたか?
制作のエピソードを知ると、いっそうフードシーンに注目したくなりますね!
今日は貴重なお話、ありがとうございました。
〈PROFILE〉
松本 拓(まつもと・たく)テレビ東京プロデューサー。「警視庁ゼロ係」シリーズ、「銀と金」「ゲキカラドウ」「ただ離婚してないだけ」など、話題作を手がける。今7月期は「週末旅の極意」も放送。
藤代太一(ふじしろ・たいち)俳優・フードコーディネーター。ドラマ「ミリオンジョー」「雪女と蟹を食う」、映画「喝 風太郎‼」などに出演。調理師免許を持ち、フードコーディネーターとして「ゲキカラドウ」「晩酌の流儀」シリーズに参加。
>>前編「話題沸騰ドラマ「晩酌の流儀」の裏側がすごい!こだわり〈フード〉ができるまで」はこちら
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撮影/鈴木康史 取材・文/待本里菜 ©︎「晩酌の流儀2」製作委員会