超高齢社会を迎え、「人生100年時代」といわれる現代。だからこそ、考えだしたら不安でたまらない、家族や自分の老後の生活。各分野のスペシャリストが、そんなあなたの不安にそっと寄り添います。 今回のお悩み/介護 親を介護施設に入れたことに、罪悪感を持ちつづけています。 認知症の母を自宅介護していましたが、母の症状が進むにつれ、私の負担も大きくなり、心身ともに限界に。ケアマネジャーや主治医から施設への入所をすすめられたこともあり、1年前、母を施設に入れました。自宅で介護していたときよりも負担はぐんと減りましたし、プロにまかせている安心感はあります。でも一方で、「これでよかったのか」とずっと罪悪感を抱きつづけています。施設に会いに行っても、一人でボーッとしている母を見ると、胸が締めつけられます。(56歳・女性) Tomyさんの回答 介護も「医療」と考えるべき。プロにまかせるのは、正しい判断です。 お悩み回答者 Tomyさん 今の状況を考えると、施設に入所して専門家にまかせるというのが、いちばん合理的かつ正しい判断だと思います。「合理的」というと冷たく感じるかもしれませんが、介護においてはすごく大事なことです。もちろんお気持ちはよくわかりますが、プロではないあなたが限界まで頑張って介護をしても、お母さまにとっていい環境がつくれるとはかぎりません。むしろ逆のリスクもある。自宅で転倒・骨折してしまったり、食事中の誤嚥による肺炎※を引き起こしてしまうケースも珍しくないからです。本来、介護というのは家族の仕事ではなく、プロの仕事だと思うんです。みなさん介護となると、「できるだけ家で世話をしたい」と考える人が多いのですが、たとえば家族がけがをしたり、病気になったら、自宅で診ようと思いますか? すぐに病院に行って専門家に診てもらいますよね。お母さまも認知症という病を患っている。介護も「医療」と考えたほうがいいんです。「医学的に正しい方法」というものが蓄積されている領域ですから、プロにまかせるべきなんです。そこは感情論ではなく、理性的に考えるようにしましょう。今後は、できるかぎり施設に顔を出したり、いっしょに外出したり、それだけで充分だと思います。一人でボーッとしているのは、さみしいからではなく、おそらく認知症の症状でしょう。あなたの判断は間違っていませんし、罪悪感を抱く必要はまったくありません。 ※ 誤嚥性肺炎 おもに食べ物や唾液が気道に入ること(誤嚥)がきっかけで、細菌が肺に入り込んで起こる肺炎。老化や脳血管障害の後遺症などによって、のみ込む機能が弱まると、口腔内の細菌、食べかす、逆流した胃液などが誤って気管に入りやすくなる。 Tomyさん 精神科医。1978 年生まれ。精神保健指定医、日本精神神経学会専門医。38.6 万フォロワー突破のX(Twitter)が人気で、各メディアで活躍中。最新刊『精神科医Tomyの 人に振り回されない魔法の言葉』(エムディエヌコーポレーション)をはじめ著書多数。 近藤サトさんの回答を見る「老後の4K」のお悩みをすべて見る(『オレンジページ』2023年11月17日号より)