超高齢社会を迎え、「人生100年時代」といわれる現代。だからこそ、考えだしたら不安でたまらない、家族や自分の老後の生活。各分野のスペシャリストが、そんなあなたの不安にそっと寄り添います。 今回のお悩み/介護 親を介護施設に入れたことに、罪悪感を持ちつづけています。 認知症の母を自宅介護していましたが、母の症状が進むにつれ、私の負担も大きくなり、心身ともに限界に。ケアマネジャーや主治医から施設への入所をすすめられたこともあり、1年前、母を施設に入れました。自宅で介護していたときよりも負担はぐんと減りましたし、プロにまかせている安心感はあります。でも一方で、「これでよかったのか」とずっと罪悪感を抱きつづけています。施設に会いに行っても、一人でボーッとしている母を見ると、胸が締めつけられます。(56歳・女性) 近藤サトさんの回答 介護中心だった世界から視野をぐんと広げて見てみましょう。 お悩み回答者 近藤サトさん ひと昔前の日本は、子どもたちが協力して親の世話をするのが当たり前でしたが、少子化・核家族化が進んだ現代では、それはとてもむずかしいものになっています。介護保険制度※もありますし、社会全体で介護を担っていく時代です。親を施設に入所させることに罪悪感を持つ必要はありませんし、それどころか、主治医やケアマネジャーからすすめられるまで頑張ってこられたご自身をほめてあげてもいいくらいです。お母さまからしても、娘が限界を超えてまで自宅で介護されることを望んでいないと思いますよ。ただ、私も母を介護していて思うのですが、介護をしていると、その世界にどっぷりつかってしまうというか、視野がものすごく狭くなってしまうことがあるんですよね。そうなると、物事を客観的に見ることができなくなってしまう。お母さまがボーッとしているのは、ただ平穏に暮らしているだけかもしれないのに、「かわいそうなことをした」と自分を責めてしまうわけです。まずは、これまで介護にあてていた時間を自分のために使ってください。自宅中心だった世界をぐんと外に広げてみることで、いろいろなことが俯瞰できるようになると思います。そして、施設の人やケアマネジャー、友人に相談して、ほかの人の意見にも耳を傾けましょう。視野を広げれば広げるほど、ご自身の判断は間違っていなかったと自信が持てるようになるはずです。 ※ 介護保険制度 介護が必要になった高齢者を社会全体で支える制度。介護保険サービスで利用できる施設には、「特別養護老人ホーム」「介護老人保健施設」「介護医療院」「介護療養型医療施設」などがある。 近藤サトさん フリーアナウンサー・ナレーター。1968年、岐阜県生まれ。フジテレビアナウンサーを経て、フリーランスに。テレビ番組のコメンテーター、ナレーション、朗読など幅広く活躍。母校である日本大学芸術学部の特任教授も務める。YouTubeチャンネル「サト読ム。」では朗読やきものの魅力について配信。 Tomyさんの回答を見る「老後の4K」のお悩みをすべて見る(『オレンジページ』2023年11月17日号より)