超高齢社会を迎え、「人生100年時代」といわれる現代。だからこそ、考えだしたら不安でたまらない、家族や自分の老後の生活。各分野のスペシャリストが、そんなあなたの不安にそっと寄り添います。 今回のお悩み/孤独 継ぐ人がいない今の住まい。自分たちで「家じまい」をしたい。 30代で購入した一軒家に夫婦二人で暮らしています。独立した一人息子は東京で就職しており、遠く離れたこの土地にはたぶん戻らないと思う、と言われました。今後、息子にできるだけ迷惑をかけたくないので、今の住居を自分たちの代で「家じまい」して、ゆくゆくは高齢者用の住居などに移り住みたいと思っています。でも、どのタイミングでどのように動けばいいのか、悩んでいます。家じまい以前に、数十年住んだわが家は、家具や荷物でいっぱい。片づけるのがおっくうで、何も手をつけぬまま今に至ります。(57歳・女性) 山田悠史さんの回答 病気やけがは、ある日突然やってきます。老後の住まいについても早めにリサーチしておきましょう。 お悩み回答者 山田悠史さん 一般的には、ご夫婦のどちらかが、日常生活において何らかのサポートが必要になったときが、高齢者用の住まいに移るなり、住環境をがらりと変えるべきタイミングだと思います。たとえ「要介護」の前段階だったとしても、足腰が弱ってきて、一人で買い物に行くのがつらくなってきたとか、ほかにも、認知症ではないけれど、物忘れが出てきて家計の管理がむずかしくなってきたとか、体と脳に衰えを感じはじめたときですね。ただ、医師として患者さんを診ていると、〈そのとき〉というのは、徐々に訪れるというよりも、ある日突然やってくることのほうが多いように感じます。たとえば、「脳梗塞」や「肺炎」など、何の前兆もなく起こる病気もありますし、道でつまずいて骨折をし、その一件を境に体の機能がどんどん衰えていく、というケースも。そうなったときにあわてないよう、今のうちから家じまい後の住まいについてリサーチしておくことをおすすめします。どんな施設があり、入居するにはどんな条件があるのか、早めに情報収集をし、現状を知っておくだけでも決して損にはなりません。そもそも介護保険が適用される施設と適用されない施設がありますし、認知症になった場合、受け入れ可能かどうかもそれぞれ違います。また、実際に介護が必要になったときに、お子さんがどこまでサポートできるかも施設選びの基準になりますので、息子さんとも充分、話し合っておくのがいいかなと思います。 山田悠史さん 米国老年医学・内科専門医。慶應義塾大学医学部卒。現在は、ニューヨークのマウントサイナイ医科大学老年医学科で高齢者診療に従事。著書に『最高の老後「死ぬまで元気」を実現する5つのM』(講談社)など。ポッドキャスト番組「医者のいらないラジオ」も配信中。 松本明子さんの回答を見る「老後の4K」のお悩みをすべて見る(『オレンジページ』2023年10月17日号より)