超高齢社会を迎え、「人生100年時代」といわれる現代。だからこそ、考えだしたら不安でたまらない、家族や自分の老後の生活。各分野のスペシャリストが、そんなあなたの不安にそっと寄り添います。 今回のお悩み/健康 更年期になって、性格が変わった?いつもイライラしていて、感情をコントロールできません。 50歳からホットフラッシュなどの症状があったため、婦人科で血液検査をしたら、「ホルモン数値が下がっているので更年期ですね」と言われました。今は漢方で治療中ですが、いちばん困っているのは、感情の起伏が激しくなったこと。以前は気にならなかったことやちょっとしたことにイライラ。とくに夫にはひどい当たりようで、ときには暴言を吐いてしまうことも。自分でも「こんなことを言ってはいけない」と頭ではわかっていながら、感情のコントロールがうまくできません。このままだと、夫との関係が悪化するだけでなく、子どもや職場の人にも迷惑をかけてしまうのではと心配です。(52歳・女性) 稲垣えみ子さんの回答 更年期は、上り坂から下り坂への一大転換期。〈下り坂仕様〉にシフトチェンジするチャンスととらえて。 お悩み回答者 稲垣えみ子さん 更年期というのは、体が教えてくれる人生の転換期だと思うんですね。山登りでいうと、上り坂から下り坂へ……。更年期は、まさに下り坂に入ったところの急カーブ。今までと同じスピードで進むと衝突してしまいますから、速度を落としてカーブを回らなければいけません。これは私の考えですが、更年期に入ってからの心身の不調は、「上り坂でのやり方、生き方のままではうまく下れませんよ」という体からのメッセージのような気がするのです。とはいえ、今の時代、52歳は若いですし、やりたいこと、やらなければいけないことがたくさんあって、必死に頑張られているのでしょう。それでも、やはり下り坂においては、荷物を減らしていったほうが、ゆるやかに下れると思うのです。婦人科での治療を続けていくと同時に、これまでの生活を見直して、少しずつ荷物を下ろす準備をされてはいかがでしょう? 下り坂仕様に生き方をシフトしていくと、心に余裕ができて、今のイライラも収まってくるかもしれません。私自身は、50 歳で会社を辞め、生活を小さくしていく方向に大転換しました。禅僧のような生活を送っているからか(笑)、不思議と更年期の不調を感じなかったんですよね。それどころか、新たな発見や楽しみを見いだすことができて、上り坂を懸命に駆け上がっていたときよりも、、幸福度が上がったくらい。今も人生後半の長い道を、明るく元気に下り続ける日々です。 稲垣えみ子さん フリーランサー。1965 年生まれ。一橋大学卒業後、朝日新聞社に入社。論説委員、編 集委員などを務め、50 歳で退社。以後、夫なし・冷蔵庫なし・ガス契約なし・定職なしのフリーランス生活を送る。最新刊は『家事か地獄か最期まですっくと生き抜く唯一の選択』(マガジンハウス)。 虻川美穂子さんの回答を見る「老後の4K」のお悩みをすべて見る(『オレンジページ』2023年8月2日号より)