超高齢社会を迎え、「人生100年時代」といわれる現代。だからこそ、考えだしたら不安でたまらない、家族や自分の老後の生活。各分野のスペシャリストが、そんなあなたの不安にそっと寄り添います。 今回のお悩み/介護 認知症の母親の「妄想話」に、どう対処すればいい? 同居する認知症の母の介護をしています。半年くらい前から、「冷蔵庫の中の料理を食べられた」「看護師が私の悪口を言っている」「庭に知らない男の人が立っている」など、妄想による作り話をよくするようになりました。「隣の〇〇さんが泥棒に入ろうとしている」など、具体的な名前を出してくることもあり、かなり困っています。そうした話が認知症によるものだとはわかっていますが、何度も繰り返すのでいいかげんうんざり……。否定も肯定もできず、困っています。(54歳・女性) 秀島史香さんの回答 経験豊富な専門家など、相談できる相手をできるだけ早く見つけましょう。 お悩み回答者 秀島史香さん 私はまだ介護の経験はないのですが、まわりでこういった話をよく聞くようになりましたね。つい先日も介護中の友人と話したのですが、プロの力を借りることは、本当に大事だと言っていました。すべて家族だけで対処しようとすると、立ち行かなくなってしまうと。このかたの場合も、かかりつけ医やケアマネジャーさんをはじめ、地域の相談機関※1など、専門家にアドバイスを求めてみてはいかがでしょうか。経験もノウハウも豊富に持つプロであれば、的確なアドバイスをもらうことができると思います。妄想話は認知症の症状だと頭では理解していても、イライラするのは当然のこと。それが何日も続くと、介護する側は精神的に参ってしまいますよね。そんなときは、「こんなことで」と思わず、できるだけ早くプロに相談してみてください。ご自身のためにも第三者に話を聞いてもらい、心の健康を守ることはとても大切です。あとは、介護経験者の体験談からもヒントがたくさんもらえる気がします。以前、ラジオ番組のゲストでシンガーソングライターの白井貴子さん※2に来ていただいたのですが、白井さんも約10年間お母さまの介護をされていたんですね。実際にお話を伺って、私自身とても勉強になりましたし、介護体験をつづった著書は、かなり反響があるそうです。同じ境遇の人の話を聞いたり、読んだりするだけでも、「私だけじゃないんだ」と、気持ちがやわらぐのではないでしょうか。 ※1 認知症に関する相談先 全国の「地域包括支援センター」や「高齢者総合相談センター」、認知症専門の医療機関に設置された「認知症疾患医療センター」など、認知症患者とその家族を支援するための相談機関は多数存在する。また、「認知症家族の会」では、無料の電話相談も行っている。 ※2 白井貴子さん 1981年にメジャーデビュー。女性ポップロックの先駆者的存在として知られる、シンガーソングライター。昨年出版された初の著書『ありがとうMama』(カラーフィールド出版)には、父と母、叔母の介護からみとり、そして自宅で執り行った葬儀まで、リアルな体験がつづられている。 秀島史香さん DJ・ナレーター。慶應義塾大学在学中にラジオDJデビュー。「SHONAN by the Sea」(Fm yokohama)をはじめとするラジオ番組のほか、テレビ、映画、CMなどのナレーション、通訳や字幕翻訳、執筆活動と幅広く活躍。最新刊は『なぜか聴きたくなる人の話し方』(朝日新聞出版)。 石塚元章さんの回答を見る「老後の4K」のお悩みをすべて見る(『オレンジページ』2024年2月17日号より)