超高齢社会を迎え、「人生100年時代」といわれる現代。だからこそ、考えだしたら不安でたまらない、家族や自分の老後の生活。各分野のスペシャリストが、そんなあなたの不安にそっと寄り添います。 今回のお悩み/介護 「老老介護」で暮らす両親は、いつもけんかばかり。どうサポートすればいい? 78歳になる認知症の父の介護をしているのが、68歳の母親。いわゆる「老老介護」の状態なのですが、両親の仲がよくなく、いつもけんかばかりしています。認知機能が衰えた父とは言い争いが絶えず、このままでは母の精神状態が心配です。父親は要介護1で、体はいたって元気。施設への入居はまだ考えていません。デイサービスには週に1 ~2回通っています。私は平日はフルタイムで仕事をしているため、週末に顔を出す程度なのですが、これからどのようなサポートをしていけばいいのでしょうか。(45歳・女性) 村井理子さんの回答 プロの手を借りるなどして、介護をしているお母さんをいたわってあげてください。 お悩み回答者 村井理子さん うちも義父と認知症の義母が二人で暮らしていますが、それはもうけんかばかりしていますよ。あるときは、義母がテレビのリモコンで義父を殴ったことも(苦笑)。義母には、認知症による妄想※の症状があるのですが、義父はそれを単なる意地悪やわがままととらえている節があって。近しい関係であればあるほど、愛憎入り混じるというか、変化した姿を受け入れがたいのでしょうね。それでも義父は、「お母さんより先に死ねない」と言って、散歩したり、筋トレしてたりするんです。90歳ですよ。自分も脳梗塞の後遺症で体がうまく動かないというのに。そんな義父を見ていると、いくらけんかはしていても、義母のことを愛しているのだなと……。もしお母さんのストレスや疲労がたまっているようなら、デイサービスの日を増やしたり、新たにヘルパーさんをお願いしたり、お父さんと接触する時間をなるべく減らすのがいいと思います。プロの手を借りることは本当に大事。うちの義父母も、介護保険サービスをフル活用しています。あと、これは私の経験談なのですが、たまに義父にお小遣いをあげると、すごく喜んでくれるんですね。もちろん、お金に困っているわけではないのですが、そういう心づかいがうれしいみたいで。少し現実的ではありますが、介護を頑張っているお母さんに「これで好きなもの買ってね」とお小遣いを渡したり、プレゼントをあげたりするのもいいかなと思います。 ※妄想 認知症患者の症状のひとつ。物を盗とられたと主張する「物盗られ妄想」や、悪口を言われたり、配偶者が浮気をしたりと、現実にないことを訴える「被害妄想」などが代表的。ほかにも、自宅にいても帰りたいと訴える「帰宅妄想」、家族に見捨てられたと思う「見捨てられ妄想」などがある。 村井理子さん 翻訳家・エッセイスト。滋賀県・琵琶湖畔で、夫、双子の息子、愛犬と暮らしながら、雑誌、ウェブ、新聞などに寄稿。最新刊『実母と義母』(集英社)は、がんで亡くなった実母と、認知症で要介護となった義母の〈ふたりの母〉への思いをつづった家族エッセイ。 麻生要一郎さんの回答を見る「老後の4K」のお悩みをすべて見る(『オレンジページ』2024年1月17日号より)