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どうする?どうなる?老後の4K

76歳の父。「認知症ではないから病院には行かない」とけんかになります。【麻生要一郎さんが回答/老後の4K】

2024.03.03

超高齢社会を迎え、「人生100年時代」といわれる現代。
だからこそ、考えだしたら不安でたまらない、家族や自分の老後の生活。
各分野のスペシャリストが、そんなあなたの不安にそっと寄り添います。

今回のお悩み/介護

父が認知症の疑いがあるのに、病院に行ってくれません。

76歳の父は、近ごろ物忘れがひどく、最近のことをすぐに忘れて、何度も同じことをきいてくるようになりました。ほかにも、物を置いた場所を忘れて、ずっと探しものをしていたり、前より怒りっぽくなったり。認知症の初期ではないかと思い、病院に行こうと言いましたが、「認知症ではないから絶対に行かない」と、本人はまったく自覚がない様子。いくら説得しても、最後には怒りだしてしまい、親子げんかに。とはいえ、うそをついたりして無理やり連れていくのもどうなんだろう……と悩んでいます。
(49歳・女性)

麻生要一郎さんの回答

今はまだ介護の「入り口」。関係を悪化させないよう、軽やかに乗り越えて。

ふきだし
お悩み回答者

麻生要一郎さん

僕も、養母とその妹の介護を経験していますが、高齢の姉妹も、このかたのお父さんと同じような反応でした。まわりから「病院で診てもらったほうがいいんじゃないの?」と言われるほど、余計に意固地になってしまうという……。しかも、病院に連れていっても、なぜか先生の前ではシャキッとして、しっかりと受け答えしてしまうんですよ(苦笑)。それでは正しい診断ができないわけで。

僕はそういうとき、かかりつけ医の先生に手紙を書いて渡していました。診察では見えにくい、生活面の気がかりな点をいくつか書き出して、受付や看護師さんに託しておくのです。「診察ではきちんと受け答えしていましたが、家ではこんな症状が出ていて、とても気になっています」と。そうすると、先生はちゃんと読んでくださって、適切な対応をしてくださるんですよね。こちらから言わずとも、先生のほうから「次回はこの検査をしましょうか」と自然に導いてくれます。医師の言うことであれば、わりと素直に耳を傾けてくれますし。

あと僕が言えるのは、今はまだ介護の「入り口」だということ。じつはここからが長いのです。最初からもめて、関係が悪化してしまうと、実際に介護が始まってからコミュニケーションがとりにくくなったり、被害妄想の対象になってしまったりします。むやみにお父さんの感情を刺激せず、介護の入り口は、できるだけ軽やかに乗り越えましょう。そのほうがお互いのためになる気がします。

麻生要一郎さん
料理家・文筆家。料理家として活躍しながら、食や暮らしについてのエッセイを雑誌やウェブサイトで執筆。日々の食事を記録したInstagramでも多くのフォロワーを獲得している。著書に『僕の献立 本日もお疲れ様でした』『僕のいたわり飯』(光文社)がある。

取材・文/太田順子 イラスト/松元まり子

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