さまざまなジャンルで活躍している「あの人」にフィーチャー。今、向き合っていることや日々の暮らしなどについて語っていただきます。 インタビューの記事はこちらもチェック
妻夫木聡さん「役作りの根幹は自分の体で感じること」映画・宝島撮りおろしインタビュー

俳優 妻夫木 聡さん
つまぶき さとし/ 1980年、福岡県生まれ。2001年「ウォーターボーイズ」で映画初主演。「ジョゼと虎と魚たち」や「涙そうそう」など多数の話題作に出演。09年NHK大河ドラマ「天地人」で主演。10年「悪人」で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞、16年「怒り」で日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞。22年映画「ある男」への出演など、活躍の幅を広げつづけている。
ホリプロオフィシャルサイト Instagram
役作りの根幹は、
自分の体で「感じる」こと
ときに同性カップルを演じる俳優と同居生活をし、ときに元恋人役と二人きりで料理をして食べる。妻夫木聡さんは、演じる人物の環境に身を置いて生活することで、役にアプローチしてきました。今作「宝島」では、どうだったのでしょうか? 演じるグスクは、アメリカ統治下の沖縄で米軍基地から物資を奪い、住民に分け与えた「戦果アギヤー」の一人。やがて刑事になってからも、消息を絶ったアギヤーのリーダー、オンを捜しつづけるという人物です。
「クランクインする前には、沖縄の資料館に行き、コザ暴動時の刑事さんや新聞記者のかたに取材させてもらいました。なかでも特に自分にとって大きかったのは、沖縄にいる親友の案内で行った2つのガマと、佐喜眞美術館で見た『沖縄戦の図』です」。ガマとは自然洞窟のことで、沖縄戦時下では避難壕として使われ、多くのかたが亡くなった場所でもあります。
「実際にその場に立つと、自分の中にドバーッと流れてくる感情があって。それは怒りや悲しみだけではない、複雑なもので、しばらく動けなかった。調べたり話を聞いたりすることも本当に大切ですが、ガマと美術館では体で『感じる』ことができたせいか、涙が止まらなくなりました」

以前出演した映画「涙そうそう」をきっかけに、沖縄のコザへ通いつづけている妻夫木さんにとって、今作は運命だと思える作品だそう。
「再びコザが舞台ということで、運命を感じつつも覚悟を持って演じないといけないと感じました。沖縄の話だけれど、日本の話であり、僕たちみんなの話。それを自分の芝居で体現することが大切だと思っています。映画を見たかたがたに『私の話なんだ』と思ってもらいたい。それがこの映画を作ったことの救いになるし、僕にはその責任があると感じています」

作品はもちろん、沖縄という場所に、そこで暮らしている人々に、真摯に向き合ってきたことが伝わってきます。戦時下、戦後の沖縄が今もなお抱える問題に目を向け、考えつづけているからこそ。
「今作を通じて、あらためて考えていきたいですし、亡くなった人の思いを僕たちが引き継ぎ、命のバトンを大事につないでいきたいと感じています」
妻夫木 聡さんイチオシ!
資格取得の勉強
大人の学びって楽しいものです!
役作りや撮影で忙しい日々のなかでも、ちょっとしたすきま時間にふと何かやりたいと思ったと話します。「あれ、意外と余裕あるなというときに、この時間で学べることはないかなと思ったんです。40歳を過ぎてから英語を勉強してるんですが、学ぶって楽しいことだとあらためて思っていたので」。そこで通信教育に目をつけ、さまざまな教材を取り寄せて、あれこれ学んでいるのだそう。「資格をたくさんとって肩書がどんどん増えたらおもしろくないですか。マインドフルネスとか勉強したら精神力を高められていいのかなと思って。でも、また忙しくなってきてしまって100のうちの3くらいしか進んでいません(笑)が、大人になってからの学びってやっぱり楽しいです」。
これに注目!
「宝島」

9月19日(金)より公開
出演/妻夫木 聡、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太ほか
監督/大友啓史
原作/真藤順丈『宝島』(講談社文庫)
配給/東映 ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
妻夫木 聡さんからの直筆メッセージ

●2025年7月現在の情報です。
あわせて読みたい
撮影/吉澤健太 取材・文/晴山香織 ヘア&メイク/大上あづさ スタイリング/武久泰洋