【秋のフルーツ】シャインマスカットはいつからぶどうの王様になったのか
「今年の秋は1種類しかぶどうを食べちゃダメ」と言われたら
みなさんはどの品種を選びますか?
シャインマスカット、瀬戸ジャイアンツ、ピッテロビアンコ、巨峰、ピオーネ、ナガノパープル、藤稔(ふじみのり)、シャインマスカット、翠峰(すいほう)、ロザリオビアンコ、クイーンニーナ、甲斐路(かいじ)、赤嶺(せきれい)、サニードルチェ、デラウェア…
黄緑~赤紫~赤~黒系のさまざまなぶどうは
どれも晩夏~秋の風物詩。
昔はぶどうといえば巨峰か甲斐路で、黄緑系はあまり食べた記憶がないのですが
最近スーパーや百貨店、スイーツショップなどで大人気なのはやはりシャインマスカットな気がしています。
いったいいつからぶどうの人気ランキングが入れ替わったのでしょうか…
むしろ若い世代の子たちにとっては「ぶどうと言えばシャインマスカット」なのでしょうか…(少なくとも息子にとってはぶどう=シャインマスカットになっています)。

いつからこんなに人気になった?
ここ十数年で「ぶどうの王様」といってもいいほど存在感を増したのが、シャインマスカット。
鮮やかな黄緑色
大粒で、種がなく、皮ごとパリッと食べられる
そして、口に入れた瞬間に広がる華やかなマスカットの香り…。
王者の品格を携えています。
今ではスーパーでも当たり前のように見かけますが、子どものころを思い返してみると……
こんなにシャインマスカット売ってなかったよね???
というか、食べた記憶ないよね???
マスカットを食べた記憶はあるけど、巨峰よりもすっぱくて、ちょっと青っぽくて
「マスカットやだ~巨峰が食べたい~」って言ってたよね???
気になって調べてみると、シャインマスカットが誕生するまでには
想像以上に長~い歴史がありました。

日本でおいしいぶどうを作るのは、難しかった
ぶどうには、大きく分けるとヨーロッパブドウとアメリカブドウがあります。
ヨーロッパブドウは、果肉がしっかりとしていて皮ごと食べやすく、マスカットのような華やかな香りをもつ品種があります。
ところが、日本は雨が多く、ヨーロッパブドウの栽培にはあまり向いていません。
一方、アメリカブドウは日本の気候でも比較的育てやすいものの、食感や香りはヨーロッパブドウとは異なります。
そこで研究者たちが目指したのが、
「ヨーロッパブドウのおいしさ」と
「日本でも栽培しやすい性質」
この両方をもったぶどうを作ること。
巨峰やピオーネも、こうしたヨーロッパブドウとアメリカブドウを交配して生まれた、日本生まれのぶどうです。
そして、その研究をさらに重ねて誕生したのがシャインマスカットでした。

シャインマスカットが生まれたのは1988年
シャインマスカットの直接の交配が行われたのは、1988年。
私が生まれる1年前ですね。
現在の農研機構の前身である果樹試験場安芸津支場で、
「ブドウ安芸津21号」×「白南(はくなん)」という組み合わせで交配されたそう。
ちなみに「安芸津21号」の親をさらにたどると、「スチューベン」と「マスカット・オブ・アレキサンドリア」。
(スチューベン…忘れていましたがありましたよね…!ちょっと小粒な紫系ぶどう!)
つまり、何世代にもわたる交配と選抜の積み重ねによって生まれたぶどうなんです。
1988年に交配したら、翌年には「シャインマスカット完成!」……とは、もちろんいきません。
育てて、実をつけさせて、味や香り、粒の大きさ、育てやすさなどを調べる。
さらに全国各地で試験栽培を行い、その土地でもきちんと育つのかを確認する。
こうした長い年月を経て完成したぶどうを、2003年に「シャインマスカット」と命名。
そして2006年、種苗法に基づいて正式に品種登録されたそう。
開発が始まったのは私が生まれる1年前だけど
品種登録されたのは私が17歳くらいのころ!!!
そりゃ、子どものころに食べた記憶がないわけです。

では、いつからこんなに人気になったの?
品種登録されたのは2006年ですが、登録された瞬間から今のようにスーパーにずらりと並んでいたわけではありません。
果樹は、苗木を植えて翌月からどんどん収穫できるものではありません。
生産者さんが新しい品種を導入し、樹を育て、安定して高品質な果実を出荷できるようになるまでには時間がかかります。
実際に農林水産省の統計を見ると、シャインマスカットの栽培面積が大きく増えていったのは2010年代。
2014年には全国で683haだった栽培面積が、
2015年には992ha、
2016年には1,196ha、
2018年には1,625ha、
2019年には1,840ha。
そして2022年には、2,673haまで拡大しています*。
*農林水産省「果樹をめぐる情勢」
「令和3、4年については調査対象が主産県のため、連続性はない」との記載があります。実際にはもっと増えているのでしょうか…?
2014年から2022年までの8年間で、およそ4倍!
すさまじい広まり方!!
私たちがスーパーや果物店で頻繁に見かけるようになった背景には、こうして2010年代後半から全国で栽培が急速に広がったことがあったんですね。
「気づいたら、シャインマスカットが登場し、かつものすごく増えていた」という私の感覚、あながち間違いではなかったようです。

なぜシャインマスカットはこんなに人気になった?
人気の理由は、私の推測にはなりますが、やっぱり食べてみるとよくわかります。
甘みが強く、酸味は少なめ。
マスカットらしい華やかな香りがあり、果肉はパリッと歯切れがよい。
果汁はしっかりあるけどぐずぐずしてなくて
アントシアニンが非常に少ないため服に落としても巨峰のような目立つ染みができない。
そして何より、
「皮ごと食べられる」
「種なし」という食べやすさ。
ぶどうっておいしいけれど、
皮をむく
種を出す
手がベタベタになる
服についた濃い色の汚れが落ちない
……というのが、ちょっと面倒なんですよね。
それがシャインマスカットなら、洗って一粒とって、パクッ。
これで終わり。
手軽さゆえに、どっしり腰を据えなくても
スナック感覚でおやつにも食べられます。
おいしさだけではなく、この圧倒的な「食べやすさ」も
人気を後押しした理由のひとつなのだと思います。
さらに、生産する側にとっても、裂果しにくい、成熟しても粒が房から落ちにくい、日持ちがよいなどの特徴があります。
カフェ目線だと、果肉がパリッと硬いのでカット断面を見せられる、カットしても果汁がこぼれない、日持ちがよいなどの特徴から
急速にパフェやケーキの秋の顔になっていったのでしょう。
食べる人にとってうれしい。
作る人、売る人にとってもうれしい。
これだけ全国に広がったのも納得です。
(もちろん、これだけで人気の理由をすべて説明できるわけではありません。生産・流通に詳しい方がいらっしゃったら、こんなに人気になった理由をぜひ教えてください。)
たった一粒のぶどうの向こう側
スーパーで当たり前のように手に取っているシャインマスカット。
でも、その歴史をたどってみると、
「もっとおいしいぶどうを作りたい」
「日本でも育てやすいぶどうを作りたい」
そんな研究者たちの試行錯誤が、何十年も積み重なっていました。
1988年に行われた交配から、2006年の品種登録まで18年。
さらに、そのぶどうを全国の生産者さんが育て、栽培面積が増え、私たちが気軽に買えるようになるまでにも長い時間がかかっています。
そう考えると、いつものシャインマスカット一粒が、ちょっと違って見えてきませんか?
「今年の秋は1種類しかぶどうを食べちゃダメ」と言われたら
みなさんはどの品種を選びますか?
あまりにも難しい質問で選べませんよね(ここまで書いてシャインマスカット選ばないんかい)。
シャインマスカット、瀬戸ジャイアンツ、ピッテロビアンコ、巨峰、ピオーネ、ナガノパープル、藤稔(ふじみのり)、シャインマスカット、翠峰(すいほう)、ロザリオビアンコ、クイーンニーナ、甲斐路(かいじ)、赤嶺(せきれい)、サニードルチェ、デラウェア…
いろいろなぶどうを食べ比べながら、それぞれの香りや甘み、酸味、食感の違いをたのしんでいきましょうね!!日本の秋ばんざ~い!!
参考文献
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