お客さんの悩みや気持ちに寄り添う本を、ちょっと世話焼きな書店員たちが心をこめて選書いたします。どうか素敵な本との出会いがありますように。
部屋に本を飾りたい!プロ書店員が推す『飾りたくなる本6選』装丁の美しさや可愛い挿画

今月のお客様のご依頼は……
部屋に本を飾りたいです。装丁が素敵なものや、印象的なシーンが描かれた作品、ありませんか?
今回の選書担当

書店員芸人 カモシダせぶんさん
芸人活動と並行し、2つの書店に勤める現役書店員。9 月19日には初小説『探偵はパシられる』(PHP研究所)発売予定。
公式X:@kamo_books

「いか文庫」店主 粕川ゆきさん
書店勤務のかたわら、店舗も商品もない「エア本屋」・いか文庫を発足。リアル書店での選書やイベントを通じ、本との出会いを提供している。
紹介する本 一覧
書店員芸人 カモシダせぶんさん
「いか文庫」店主 粕川ゆきさん
書店員芸人 カモシダせぶんさん
おすすめ3選
ふふっと笑えるミニチュアの世界

おすしが ふくを かいにきた/
作:田中達也 白泉社 1430円
作者の田中達也さんはミニチュア写真家。小説家· 青山美智子さんや森見登美彦さんの作品の表紙、NHK 朝ドラ「ひよっこ」のオープニング映像などで、その楽しい奇想を発揮しています。本書は児童書ですが、大人が読んでも癒やされます。たとえばおすしが洋服店に行くと、たねのまぐろや卵がハンガーにかかっていたり。鉛筆が理髪店で頭をカットされていたり。毎ページ、思わずふふっとなります。びっくりするのが後半の展開。いちごがベッドを買いに行くシーンがあるのですが、このベッド、何でできていると思いますか? 正解を見ると思わずなるほど……と感心しますよ。ミニチュア写真と擬人化、独創性と遊び心が楽しめる、童心に返って読める一冊です。
建物のように見えるのは、重ねた回転ずしの皿!? 身近なものを本物そっくりの何かに見立て、ユーモアあふれる世界を作る田中達也による写真絵本。
超・現代的な訳とイラストで古典を堪能

いとエモし。 超訳 日本の美しい文学/
著:k o t o サンクチュアリ出版 1628円
日本の古典文学を〈超訳〉した一冊。現代の若者にも、大昔の書き手のメッセージが伝わる良書です。『新古今和歌集』『百人一首』などに収録された和歌や『枕草子』などが、かなり現代的に訳されています。特徴的なのが、差し込まれた美麗なイラスト。文章と合わせることでさらに理解度が深まります。透明感のあるイラストが多いので心が清らかに。僕がとくに気に入ったのは、恵慶というお坊さんが人から借りた歌集を返すときに歌った歌。「一巻きに ちぢの 黄金を こめたれば 人こそなけれ 声は残れり」――いい作品は作った人がいなくなっても残っていく。このお坊さんの感想もまた、いい和歌だからこそ残っています。あなたも本書でいい古典に出会ってください。
『枕草子』の一節にふと心をつかまれ、「エモさ」を感じた著者。数々の古典文学を、現代を生きる人々の感覚や言葉に合わせて〈超訳〉した「エモパワー」あふれる一冊。
まるで宝石!うっとりする元素図鑑

世界で一番美しい元素図鑑/
著:セオドア·グレイ 写真:ニック·マン 監修:若林文高 訳:武井摩利 創元社 4180円
普通の生き物なら命を落としてしまう環境でもなぜか生きていられる〈極限生物〉について書かれた本です。ひと昔前に有名になったのはクマムシ。「樽」という状態になると、どんな高温や低温でも、なんなら空気がなくても大丈夫という無敵生物。強すぎ。このクマムシに並ぶトンデモ生物がたくさん出てきます。油の中でも生きられるセキユバエの幼虫。2億5000万年前の岩塩の中から見つかったハロバチルスなど。生命の神秘を感じずにはいられないと同時に、環境に適応したり住むところを変えたりして生きつづけることの大切さも学べます。ベタなとこだとキリンやペンギンの話もあったり。これを読めばどんなことがあってもひとまずは生きぬくぞと思えるのでぜひ。
美しい写真と、科学的な知見に基づくユーモラスな解説で根源118の元素を紹介する、オールカラー図鑑。写真集として、科学エッセイとして、眺めて、読んで楽しめる。
「いか文庫」店主 粕川ゆきさん
おすすめ3選
女性たちの生きる姿を花々に重ねて

芝木好子小説集 新しい日々/
著:芝木好子 書肆汽水域 2200円
著者の芝木好子さんは戦後文学を代表する作家の一人で、数々の文学賞を受賞していますが、著作は絶版などのためしばらく本屋に並んでいませんでした。没後30 年に出版されたこの短編集は、収録作すべてに「花」が登場し、20~80 代の女性の生きる姿、味わってきた喜びや憂いなどがていねいに描かれています。そんな花と女性が重なって見えるように作られたのが、この装丁。なんと4種類あります。初々しい桜、若さあふれる青葉、枯れかけた姿といった移ろいのある花の写真を、人生の移ろいと照らし合わせて使ったそう。物語だけでなく、読後に得られる自分自身の感情も、本そのもののたたずまいもすべてがいとおしくなる、紙の本である意味を強く感じる一冊。
梅、ぼたん、白百合など、作家・芝木好子作品のなかで「花」が印象的に描かれた8 編を収録した、短編小説集。造本家・新島龍彦による本のたたずまいにも注目。
廃墟だけれど美しい不思議な都会の姿

東京幻想作品集/
著:東京幻想 芸術新聞社 2970円
だれもが知る、新宿や渋谷、池袋に上野などの街が廃墟になったら? という妄想が描かれた作品集です。イラストレーターで、ゲームの背景画の仕事も手がける著者が描いているのですが、その発想力と妄想力たるや。だれにもまねできない世界観が生み出されています。私のイチオシは、新宿駅南口の道路が抜け落ちて、下の線路とホームが見えている作品。廃墟ですが美しい水面や青々とした緑も描かれていて、はかなさの中に救いのようなものも見えるから。そしてそこから未来につながる物語を想像したくなる。だから何度も見返したくなるんです。最後にアドバイスを。どうか、すみずみまでじっくり見てみてください。気づくとうれしい何かが発見できるかも……。
ゲームやアニメ作品の背景作画も手がけるイラストレーター·東京幻想が描く、廃墟と化し、自然に埋もれた空想の東京の街を収めたイラスト集。
絵、文字、色づかいそのすべてに心が躍る

チューリップ畑をつまさきで/
作:山本容子 偕成社 1650円
淡いピンク色に、踊るチューリップ。一目ぼれでした。本の装丁や挿画を多く手がける銅版画家·山本容子さんが初めてストーリーも手がけたこの絵本。およそ100 年前のアメリカのポピュラーソングから発想を得たのだそうですが、球根の女の子が、〈キューコンチョー〉に乗って遠い南の島やトルコにまで旅する壮大な物語だなんて。ページの端から端まで目いっぱい描かれる、軽やかで柔らかな絵と、手書き文字による動きのある文章に、心だけでなく思わず体まで踊りだしたくなるほど。どのページも色合いが素晴らしくて、日替わりで飾っておきたいくらいなのですが、とくに物語の最後のページは何度見ても顔がほころび、にこやかな気分にさせてくれます。
春にきれいな花を咲かせる準備をしていた、チューリップの球根の女の子・カオリとバナナ。ある秋の夜、空から現れたキューコンチョーにさらわれてしまい――。
⃝商品の価格は、特に記載のない限り消費税込みの価格です。改定される場合もありますので、ご了承ください。
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イラスト/河原奈苗














